8 聖女爆誕
チュンチュン……。
窓の外から鳥の鳴き声と、カーテンの隙間から差し込んでくる朝の日差しで、エリナは目が覚めた。
身体が重くて、頭がガンガン痛くて割れそう…。
何だか胃も重くて気持ちも悪い……。ダルい…。
爽やかな目覚めとは真逆だわ。最初は風邪でも引いたのかと思ったけど…。
そうだ!!私!!飲み会で倒れたんだ!!
それも推しの目の前で!!
ギャァァァァーーーーーーー!!!!
もう顔を合わせられない!!
絶対に変な女だと思われたっ!!
両手で顔を覆い、ベッドへと、また沈んだ…。
段々と少し冷静さを取り戻してくると、あたりを見回すと、どうやら医務室で一夜を過ごしたみたいだ。
ベッドの周辺を取り囲むカーテンをそっと開けると…。
窓際にある椅子に、長い足を組んでウトウトしている人がいる。
――えっ?推しぃぃいい!!!!!
ちょっ!!な、な、なんでぇっ!????
アレン様が、ど、どうしてっここに??!
ってか、睫毛ながっ!!
「ん?起きたのか?」
もぞもぞと動いたかと思ったら、ゆっくりと睫毛があがり、漆黒の瞳が私を捕らえた。
「は、はい!!」
「気分はどうだ?」
「…だ、大丈夫です!!アレン様こそ…どうして、ここに?」
「あぁ、それは俺が君を昨夜ここに運んだんだが、フーカ嬢に朝も様子を見て欲しいと言われて。皆は酔い潰れて使い物にならないからな。動物達の世話で俺が1番早起きだし、そのついでにと。世話の後に寄ったものの、どうやら俺もうたた寝してしまったみたいだ」
めっちゃ、しゃべってる!!!
推しが……目の前で!!
しゃべって、いらっしゃるのですよっ!!
えっ!?アレン様が運んだっ!?って言った?
ど、どうやって?お、お、お姫様抱っことか?
ふぉぉおぉおおおおおっ!!?
ま、まって、まって!マジですかっ!!?
意識ない間に大イベント発生してたっ?
ぐおおおおお!!!き、記憶がないっだと!!?
固まって、何も反応しない私に、アレン様が私の顔の前で手をフリフリと振る。
「……おい!大丈夫か?まだ具合が?」
「はっ!…、だ、大丈夫です!」
怪訝そうに私の顔を覗き込むアレン様。眉間に皺がよる姿も素敵です。
「顔が赤いな。まだ休んでたほうが良さそうだ」
それは!貴方のせいですっ!……なんて言える訳もなく!私は大人しくベッドに促されて戻った。
「しっかり休むといい。………あぁ!そうだ!」
「な、何ですか?」
「後で、ウルガの縫いぐるみを買いたいんだが?……いいかな?……大の大人が縫いぐるみをと、変に思わないで貰えると嬉しいのだけど……」
そっと内緒話をするように耳打ちされた……。
近づくと分かる、アレン様から微かにムスクの匂いがする。
それに、言いながら気恥ずかし気に、はにかむ推しは
――尊い。尊すぎてっ!!
あまりの推しの過剰摂取で、い、意識が…段々と
あぁ……!このまま、永遠の眠りに………。
はっ!!ダメだ!!
好きすぎて、そのままベッドの昇天を迎えるとこだった……あ!危ない。
「も、勿論です!後でお持ちしますね!!」
「すまないな。お大事に。あまりのみすぎないようにな」
嬉しそうに微笑みながら、推しが手を振りながら医務室を出ていった。
…………神!!降臨!!
ここに!神がいたっ!!
あぁ……推しが私に、お大事にって……。
やっぱりアレン様は優しい。
布団に潜り込んでバタバタと足をバタ足させながら悶えていたのだが
―――はっ!!
こんの所で寝ている場合じゃないっ!
早く元気になって、やらなければいけない事をがある!
猛獣の相棒ウルガの推しヌイも、大人気で在庫がない。アレン様がご所望されているのであれば!急いで作らねば!!
推しからのお願い事――絶対に叶えないとっ!!
こんな所でダウンしてる場合じゃないっ!
ガバっと起きる!!
っが、頭がガンガン疼き、ボスっとベッドに逆戻りした。
あぁ…!こんな時に!魔法でチョチョイってして手軽に回復出来たらいいのになぁ〜。
そう言えば、産まれてこのかた魔法って使ったことなかったなぁ〜。
そもそも平民は魔法使えないから、田舎の村では誰も魔法を使っていない。
私も、もともとは日本人だったし、魔法がない生活に何にも疑問を持たずに生きてきた。
初めて魔法を観たのは、ここのサーカスだ!!
凄っ!!って感動したものよね〜。うんうん!
ん!?……平民は使えないはず?
まぁ!いっか!
そうそう!それよりも、私の魔法よ!!
使えたりしないのかなぁ〜!?
転生者チートってことで、試してみる?
試しに回復魔法は……えっと、日本人が知ってるやつでいいのかな?【ホ◯ミ】的なやつ?そして、異世界っていったらこれよね!!
【ヒール】
心の中で、呪文を唱えると、私の周りからキラキラとした光が溢れ出した。光は私の周りを一周するとスーっと消えていった。
身体が嘘のように軽くなる。
こ、こ、これって!?成功?!!
――聖魔法
この世界で聖魔法が使える人は、聖女と呼ばれるらしい。
聖女……わたし?え?
勇者ラルクの幼馴染が、聖女?
魔王……討伐とは……?
うん!!コレは深く考えちゃいけない気がする!!
私の使命は
【推しヌイで世界中に愛を届ける】
コレよ!!
こうしちゃいられないっ!!
アレン様のご要望に応えなくてはっ!
いそいそとベッドから抜け出し、作業部屋へと向かうエリナであった。
ここまでが短編と同じです。
次回から連載版スタートになります。




