5 団長と交渉
私は一度サーカス会場から出て、約束の1時間後にまた出直した。
そして私は団長さんに会う為に今、フーカさんに案内されて団長室までやってきたところだ。
コンコンコン。
フーカさんが扉をノックすると
「どうぞー」と中から声がかかる。
私は持ってきたトランクの持ち手をギュッと握り、ゴクリと唾を飲み込み具合をいれた。
フーカさんがウィンクしながらサムズアップして見送ってくれた。惚れちゃいそうな優しさ。
「失礼します」
ガチャリと開けると、ラバール団長は執務机に向い、書類整理をしている最中だったみたいだ。
私が入室すると書類から顔を上げた。
「やぁ、君がエリナちゃんか。フーカからよく君の話しを聞いてるよ。今日は僕に話があるとか?」
笑顔で出迎えて貰えてくれる。
「はじめましてっ!エリナと言います。フーカさんにはいつもお世話になってます。じつは今日は折りいってお願いがあります!」
「ん?…折りいってお願いって…何かな?」
私はガバリと頭を下げながら
「どうか!ここで働かせて下さい!!!」
と大きな声で懇願した。
「!!!!」
ラバール団長が、これでもかと目を見開いて硬直している。
しばらく沈黙が続いた。
団長の様子に居た堪れなくなるけど、ここは引けないところ。私は頭を下げ続けた。
「…、っいま何て?…働く?…、ん?ここで?……えっ?!!なに?なに?!!えっ!??」
やっと動き出したと思ったら、ラバール団長がパニックになっていた。
「エリナちゃんがってこと?!ここでって…サーカスでってこと??」
「はい!!」
私は元気よく返事をする。
ラバール団長は一瞬目を見開くも、険しい表情に変わっていく。
「……サーカスって……分かってる??」
何か残念な子を見るように、全身を上から下から見られた。
「知ってます。何度も通って、最高だと感銘を受けたんです!!」
はぁ…と、大きく団長が溜息をつく。
「エリナちゃん。それは嬉しいけど、………申し訳ないけど、君がサーカスで何かパフォーマンス出来るとは…到底思えないんだけど」
団長が苦虫を噛み締めるような顔になっている。美形なのに申し訳ない。
でも、私でも私自身がサーカスの舞台で何か出来るとは思っていない。
だからこそ!このトランクの中身なのだ!!
「これを見て下さい!!!」
ガチャリとトランクの金具を外し、中身を見えるようにトランクをドーンっと広げた。
!!ババ―――ン!!
「!!っこ、これはっ!!!」
団長が目をまん丸にして叫んだ。
そう!トランクの中には推しグッズの数々!!
各メンバーカラーのハンカチに雪兎を刺繍したものや、雪兎のマスコットに各推しカラーの衣装を着せたもの。
それに、各メンバーの推しカラーの缶バッチや胡桃ボタン(雪兎ロゴあり)も用意した。
そのなかでも1番の目玉商品は!!
ウルガの推しヌイ!!
私の渾身の力作!!思わずギュッと抱きしめたくなる肌触りにもこだわった。
なんたって推しのアレン様のグッズが欲しくても、この世界には推しグッズとかの概念がない。
―――それなら自分で作ればいいじゃんっ!!
ってことで、前世の推し活を思い出しながら、せっせと手作りした。
何せこの世界の私は、母の針子の手伝いを幼い頃からやって小遣い稼ぎをしていから、チクチク縫う作業は得意なのよね。
いつかはアクリルスタンドも作りたいけど…、今の世界ではアクリルっていう素材が手にはいらない。
もしかしたら王都とかの都会に行けばあるかもだけど。生まれ育ったしがない田舎町にはなかったのだ……残念。
ラバール団長は、恐る恐る手を伸ばして、グッズの雪兎のマスコットを1つ手に取った。
「……これは?」
「それは、サーカスのシンボルのスノードロップウサギと団長のコラボ作品のマスコットです。どうかグッズ担当として、雇って貰えませんか?」
「…グッズ……これ…エリナちゃんが作ったの?」
「はい。この商品はサーカスメンバーをモチーフとして作ってます。絶対に売れます!損はさせません!お願いです!!ここで働かせて下さい!!」
もう一度大きく腰を折り、団長に懇願した。
「どうか、お願いします!!」
シーーーンと、しばらく沈黙が支配する…。団長は手にしたマスコットをジッと見つめている。
「……エリナちゃん。サーカスって移動するんだけど、大丈夫なの?」
こ、これは……!!手応えあり……?
「はい。荷物もまとめて家を出てきたので。今日にでも何処までも着いて行けます」
「え?え?……もう家を出てきたの?」
はい!と元気な声で笑顔で応える私に対して、団長は初めはビックリした顔をしていたが、はぁ……っと大きめな溜息をついて、片手で顔を覆う。
「…エリナちゃん、君いくつになる?」
「来月19歳になります」
この世界の成人は18歳だ。なので、親の許可がなくても自分で色々と決めることが出来る。
私の家には跡取りの兄がいるから、ゆくゆくは結婚して家をいつか出ていかねばならない。
その為に針子見習いとして、成人してからは母と同じ所で働いていた。
女子も手に職を持ってないと!
「戻りたくても戻ってこれないかもしれないよ?」
「……はい。分かってます」
しばらくジッとお互いに見合って、動かなかったが、フッと団長が表紙を緩めた。
両手を挙げて降参の姿勢をしめした。
「はぁ……、わかったよ」
「やった!!ありがとうございます!!」
グッと!こっそりガッツポーズをする。
「ただし!!条件がある!!」
え?条件〜?!!……なんだろ。ゴクリと喉を鳴らす。喜んだ束の間、無理難題じゃなければいいんだけど。
「




