3 開始前の盗み見
「エリナちゃん。今日も来てくれたのね」
受付嬢のフーカさんが、私を見つけるや否や笑顔で、こっちこっち、と手招きをする。
――手招きをしてくれるってことは!!?
足繁く通ったお陰で、仲良しのフーカさんの案内で、従業員側の通路を通って、アレン様を一目盗み見てから席に案内してくれる。
しかし、毎回ってわけじゃない。
サーカスの混み具合だったり、フーカさんの手が空いてるタイミングじゃないと難しいのだ。
今日はアレン様が見れるらしい!
うふふ!ラッキー!!
幸先がいいわね。ムフフーっ。
「ここも来月までだから、エリナちゃんに会えなくなるのは残念だわ。折角知り合えたのに…」
従業員通路を先頭するように、フーカさんが前を歩いて移動する。フーカさんが少し眉を落として言った。
フーカさんは私より3つ歳上の22歳。
紫色の髪をゆるフワに編み込みにし、片側に垂らしていると、何とも言えない色気がある。
見た目の妖艶な雰囲気とは別で、性格は何でも話せる優しいお姉さんって感じ。
サーカスに入り浸ってたのがキッカケではあるが、すっかり仲良くさせてもらっている。
因みに旦那さんが、サーカスの団長さん。
「私も、フーカさんと知り合えて本当に良かったです。あと……お願いがあるんです。今日もし大丈夫なら、団長さんに会わせて貰えませんか?」
「えっ?うちの団長に??」
「はいっ!!突然のことでアポもなく、申し訳ないんですが、どうしても今日、会って話たいことがあるんです!」
それはそれは前のめりになりながら、フーカさんに詰め寄る。
私の勢いに、ちょっぴりビックリしながらも
「そ、そう……。講演終了して1時間後なら大丈夫だと思うわ。片付けが終わったら、挨拶回りに行っちゃうから、ほんの5分10分だと思うけど……、それで構わないかしら?」
「あ、ありがとうございます!!」
ガバっと勢いよく90度のお辞儀をし、フーカさんのの手を両手で握りしめ、ブンブンと振りながら感謝の言葉を何度も伝えた。
「も、もう!分かったから!まずは講演を楽しんでね」
少し頬を赤くしながら、可愛らしくウィンクするフーカさんが、あまりに可愛らしくって、惚れそうになった。
この大人可愛い姿が、きっと旦那さんを虜にしているのだろうと納得した。私も嫁に欲しいもん。
そして席に着く前に、そっと準備中のアレン様を覗く。
ファーーーー!!!!!!
今日も、推ししか勝たん!!!
本日の推しは、積み上げられた木箱の上に優雅に腰掛け、何やらカップを片手に持ち休憩している様子。あれは…ブラック珈琲と見せかけて、たっぷりミルクと砂糖が入ってるカフェオレなんだとか。
なんだ、その訳も分からないギャップ!!
どっから見てもクールなキャラなのに、甘党なんだって!(フーカさん情報)
チラっと通り過ぎる感じでしか見れないけど!私の鼓動はMAXまでアゲアゲだ!!
「エリアちゃん、席はここね」
……はっ!いつの間にか、客席まで着いていた。
ここは、団員さんの家族や知り合いの人が案内される、ちょっと奥まった席。
「フーカさん!有難うございます!!」
「いいのよ。私の友達でしょ?」
はにかみながら笑顔のフーカさんは、やっぱり可愛い!!歳上なのに、可愛い!!
「楽しんでね〜」
手を振りながら、去っていくフーカさんにお礼を再度言った。
あぁ…フーカ姉さん尊い!一生ついていきますー!!
よし!!団員さんともアポの約束も取れたし、あとはサーカスを楽しもう。




