18 トンカール領 開演初日④
初日とあって、サーカスを訪れる客は多く、グッズの売れ行きも上々で、開演前には今日の分は完売してしまった。うししっ!
グッズ部門として、売り上げの3割のマージンを貰う契約になっている。その中で、材料費や人件費をやりくりしなきゃだから、あんまり余裕はないけど、それでも嬉しいものだ。
「お疲れ様でした〜」
スタッフと労いながら、グッズ売り場を片付ける。
「エリナちゃん」
「あっ!フウカさん。そっちも終わりました?」
「ええ、受付も一段落よ。こっちは大丈夫そう?」
「はい。もう終わります」
「良かった。それじゃ、一緒に見に行かない?」
フウカさんがサーカスが行われているテントを指差した。もう開演開始しているが、今から行けば、まだアレン様とウルガの出番に間に合いそうだ。
「い、行きます!ちょっとダッシュで片付けますね」
急いで売り場の片付けを終え、フウカさんとそっと関係者席に座る。
以前はフウカさんの知り合いとして、ここに座っていたけど、今は堂々と関係者として此処にいる。
――感慨深いものがある〜。あのまま、故郷に残ってたら辿り着けなかった場所だわ。
サーカスの舞台には、ちょうどダンテ様が炎を使ったアクロバティックなダンスを繰り広げている。
前の世界でいうファイヤーダンスと同じ感じだ。
ダンテ様は、赤色の露出が多い民族衣装みたいな出で立ちから、逞しい筋肉が隆々と見えている。
少し浅黒い皮膚色で、顔も彫りが深く、短髪がよく似合ってる。逞しさと妖艶な漢の色気を出している。
炎がブワッと上がるたびに歓声があがる。
パフォーマンスのしているダンテ様の両脇にベリーダンスを踊っている女性達がいる。あの中に恋人のドリーナさんがいるんだよね…!
「フウカさん…ドリーナさんって…?」
小声で問いかけると、内緒話をするみたいにフウカさんが応えてくれた。
「ドリーナさんは、あの左から二人目にいる子よ。ダンテさんと同胞で、2人は幼馴染って言ってたわ」
ドリーナさんは、ダンテ様と同じように、彫りが深く浅黒い皮膚をしていた。ダンスが妖艶な雰囲気だからか、とても大人っぽく、出るところは出て、スタイルも抜群で、迫力ある美人な人だった。
タンテ様と凄くお似合いのカップルだわ。
「それじゃ〜、ドリーナさんとダンテ様は一緒にサーカスに入団?」
「そうみたい。駆け落ち同然で2人で故郷を出てきたって、前に聞いたことがあるわ。…早く籍を入れれちゃえばいいんだけど、バニラ嬢のこともあってね、領主からサーカスに寄付を受けてるから……なかなか難しいって話よ」
「そうなんですね……お似合いなのに…」
――午前中の部に来ていたバニラ嬢の事を思い出す。
ドリーナさんと比べちゃうと、まるでお子様だったわね……。人のこと言えないけど。私も自分の胸元を見下ろす。うん…。比べるのは良くないわね。
ダンテ様のパフォーマンスが終了するや否や、ダンテ様を呼び出し、令嬢らしからぬ距離感で、ダンテ様を侍らせていた。
「ダンテ様、喉が渇いてしまったわ」
「…こちらをどうぞ」
「うふふ、苦しゅうないわね」
ダンテ様のような大人で格好良い男性をかしずかせ、終始ご満悦のバニラ嬢の様子をみて
――まるでオママゴトみたい。
そんな不敬な言葉がピッタリだった。
領主の娘とあって、ダンテ様も、サーカス側も無碍にすることが出来ないのが、歯がゆいところだ。
基本的に午前に、数日おきにバニラ嬢はやってくるそうだ。
バニラ嬢が初めてサーカスをみた3年前から、ずっとダンテ様につきまとっているらしい…。
――どうしたものかしら?




