16 トンカール領 開演初日②
ガチャリと馬車があき、若い女性が降りてきた。
私と同じ年か、少し下くらいだわ。
「あれは……?」
「トンカール領主の娘のバニラ嬢よ」
隣にいた売り子の奥さんが、小声で耳打ちしてくれた。
あの子がバニラ嬢……先日の馬車の人。
――見事に縦巻きロールね……。やな予感しかしないわ〜。悪役令嬢的な雰囲気満載だわ。
金髪の縦巻きロール。目元はキキリリっとしていて気が強そうな感じ。そして、何より…扇にフッサフサの羽根がこれでもかととついている。その扇で口元を隠しているから、かなりの迫力がある。
従者をみると、…、いたっ!!この前の嫌な奴!
お嬢様にヘコヘコしている様子で、前回の威圧的な雰囲気は何処にもない。
それにしても…何だか印象が少し違う……あっ!髪型が前回違うんだわ!違和感がある……。
――アレは!……カツラ??
もしかして、私が神に罰が当たりますように〜って願ったからかしら……ほら!私って聖女だし…!
神様っ……!!グッジョブっ!!
天に向かって、私はサムズアップを送っておく。
それにしても、何でいかにも悪役令嬢がサーカスに?着飾ること以外に興味がなさそうなのに…!
隣の人に小声で聞いてみる。
「サーカスを観覧ですかね?それにしても、早くないですか?まだ受付開始前ですが……」
「それがね、バニラ嬢は大のダンテ様のファンで、毎回開演前に会いにくるのよ。ダンテ様は踊り子のドリーナと恋仲なのに……領主の娘だから、誰も何も言えないのよ……」
眉尻を下げて、教えてくれたんだけど……。
えっ!!ダンテ様って彼女がいたんだ…!!それにもビックリなんだけど!
バニラ嬢はダンテ様推しなのね。そして、身分を盾につきまとっていると……フムフム。
これは波乱万丈な予感!




