1 幼馴染
連載にしました。
「俺…必ずエリナの所に帰っくるから!それまで……待っていてほしい」
夕暮れの見える丘に、幼馴染のラルクから呼び出されて……今これ。
いやいや、そういうの興味ないんで!!
なぜかって?それはね!
私には愛しの【推し】がいるからなのさぁぁああ!!
私とラルクは幼馴染だけど、今までも惚れた腫れたとか、男女の関係とか、一切ない。
1度もラルクからは、好きだとも、付き合おうとも言われたこともないし、将来一緒になろうと、幼い時に約束した覚えもない…たぶん。
それなのに、ラルクは真剣な顔して私を見ている。
――どうしてこうなった………
こんな期待するような事を、このシチュエーションで言われたら、私じゃなかったら、コレ絶対に勘違いしちゃう案件よっ!!
『ラルクって私のこと好きだったの?』って!!
しっか~~し!!
絶対にありえない!!って、私は知っていますけど!私はそこら辺にいる、いたって普通の女の子なのを、私が1番よく知ってる!
赤茶の長い髪をいつも三つ編みにし、瞳もごく普通の茶色。村娘らしく動きやすい格好で、頬にはソバカスだってある。
自分を着飾るより、今は推し活が忙しいのよ。
むしろそっちにお金を注ぎ込んでいる。
それに!私とラルクって、ずっとバカなことばっかりやってきた仲間だし、ついこの前だって、ラルクも好きな子がいるって相談されてたし。
お互いに恋愛トークもできる、応援もできる間柄だったはず……ついさっきまでは……?
確か…先月は、隣町の花屋のサナちゃんにアタックするって豪語していたのに……。
はっ!!
まっ、まさかっ!!
……ラルク、サナちゃんにフラれたのか!??
チ―――ン。……心のなかで合掌しておく。
ご愁傷様なラルクの都合は、どうであれ!
―――私には大切な推しがいるのだっ!!
漆黒の艶かな髪、キリッとした目元、クールな雰囲気を醸し出してるけど、たまに笑う姿にドキっとするギャップがたまらないのっっ!!
ラルクが隣町にサナちゃんに一目惚れして追いかけてる間に、私も運命の人と出会ってしまったのよ。愛しの尊き御方……。
そうっ!!私の推し!!
『 アレン様 』
あれは、忘れもしない3ヶ月前!!
すべての始まりは、ラルクと隣町に移動サーカスが来てるっていうんで、一緒に見に行ったのよね。
アレン様はサーカスの団員の1人。
猛獣使いをしている。いわゆるテイマーだ。
ステージのスポットライトがあたったアレン様は、あまりにも神々しくて目が焼けるかと思った……。
その日から私は、すっかりアレン様の虜になり、小遣いを握りしめ、仕事が休み日は全部アレン様を見に通った。
幾度となく通い、下手したら連日ってこともあった。
すっかりサーカスの常連客になり、受付嬢のフーカさんに顔を覚えて貰えたの!!凄いでしょ?!
それをきっかけで話しをするようになって、気の合う友人となったフーカさんと街で遊ぶようにもなった。
フーカさんは、私がアレン様推しだって知ってからは、関係者枠の席に友人として案内する時に、通路から、こっそりと舞台裏を見せてくれたの!
猛獣のホワイトタイガーを愛おしそうに見つめ、優しく撫でて可愛がって微笑むアレン様をっ!!
キャーーーーーーーー!!!
もうっ!!好き!!
好きすぎて滅亡する!わたしの心臓がっ!
心臓ギュンって鷲掴みされっちゃったのよ!!
推ししか勝たん!!一生ついていきます!!
――はっ!!
今はそんな事を考えてる場合じゃないわねっ!
そうそう!目の前のラルクのことよ。
ラルクは先日、教会の使者から『勇者』の称号を得て、明日から魔王討伐の旅に出かけることになっている。
普段は木こりをしてるラルク。
勇者を探しにきていた使者の水晶に手をあてたら、ピッカーンと光ったらしい!!
そして!私のポジションは勇者の幼馴染なのよっ!
色々と察した……。
何せ私には前世の記憶がある。
日本と言う国で、異世界や冒険者とか…!色々と当時流行してたからね。
私の第六感がビービーと警戒音を鳴らしているのだ。
こ、これは、ヤバいのでは??
討伐メンバーの王女と、勇者がいい仲になって、幼馴染の私が邪魔になって消されるって王道のテンプレだし。
それとも…王女を振り切り、勇者が故郷の幼馴染に対して、激愛ヤンデレ系になって戻ってくるモードってのも、…確かあったかな?
イヤイヤ、ラルクが私に激愛なんてあり得ない。
そもそも、どう転んでも…勇者の幼馴染って立場は、面倒な事には変わりがない!!
恐らくラルクは、故郷を離れるイベントで、自己陶酔してる感じよね!
お互いに、そんな恋愛モードの雰囲気になったこと1度もなかったのに……今日はどうしたのよ、もう!!
ラルクってば!!変なフラグをたてたわね!!
おかげで急いで身のフリを考えなくちゃだわ!!
こんなことを考えてるとは、微塵にもださずに、私はラルクに優しく微笑んだ。
「ラルク……無事に帰ってきてね」
幼馴染として、私はそう答えるしかなかった。肯定も否定もしないでおく。きっとこれが最適解だ。
ああ…、今日の夕日は、やけに染みるわね……
短編から連載へと切り替えます。
エリナちゃん。
元気いっぱいで好きなキャラです。
書いていて楽しいキャラって愛着湧きます。
短編では回収しきれなかった伏線が沢山あるので、連載で続けていきますので、引き続きよろしくお願いします。
暫く短編の内容が続きますが、ご了承くださいませ。




