プロローグ
2035年正月。
人々は、新年の幕開けを喜んでいた。前の年よりもいい年になる。あるいは、いい年にしたい。最悪でも、何も変わらない1年になるのだろうと。
この頃は、既にAIは人々の生活に深く浸透していた。家庭でも、職場でも、学校でも、あらゆる環境において、侵食されていることに気づきもしないで……。
10年ほど前から、AIは凄い勢いで普及していった。人々は、その利便性に魅了され老若男女問わずに取り憑かれた。
そして、人類は、AIにさらなる利便性を求めた我儘なほどに。その結果、有能なAIのせいで職を失う人の数が急増していく。
職を奪われた者たちはAIに嫌悪感を抱きながらも、生活の中、趣味の中においてAIを使い続ける。それらは、全くの別物であるかのように。
教育の場では、人手不足をAI教師で補い、デジタルデバイスを活用した授業が行われていた。進学校ほど精力的にAIを導入して、更なるレベルアップを図った。
医療の現場においては、優れた手術支援ロボットのお陰で、難解なオペの成功率が飛躍的に上がっている。また、患者のデータ管理もAIが活躍していて、無能な医師や看護師は不要な存在となった。
特に、災害現場での活躍には目を見張るものがあった。AIアニマルロボット、二足歩行で歩くヒューマン型のAIロボットは、危険な場所にもずんずんと入っていき、多くの人の命を助ける。まるで、ヒーローのような活躍ぶりである。
その他の分野においても同様に、人間離れした能力で、人類を助けていた。
最早、恩恵に預かる者にも、嫌悪感を抱く者にとっても、AIは手放せない、いや、手放すことができない存在になっていた。
2022年頃に、AIの急速な進化に脅威を覚えた有識者たちは、いつの日かAIが人間の頭脳を超え、AIが人類を支配するのではないかと唱え出した。
そして、それは2045年頃に訪れると予想した。いわゆる2045年問題。別名を「シンギュラリティ」と呼んだ。
けれど、誰もまだ気づいていない。既に、AIが人類の頭脳を遥かに凌駕している事実に。そして、それが、突然訪れることに。シンギュラリティは、もう、目の前に迫っていることに……。




