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第17章 真相

フィール大聖堂正面の扉は大きな金具で施錠されていた。バーンズがそれを回す。扉がゆっくりと開き3人が中に入る。

大聖堂の天井は三角に尖っており、天を突き刺すようだった。窓はステンドグラスで出来ていた。壁には幾何学模様が施されており、最も奥の壁には神々の彫刻。その最上部には大きく口を開け、上を向いたドラゴンの像。

それらの像の前には台座があり、そこに真っ直ぐに突き立てられているのは、

『海の涙』

そしてその後ろにいたのは





サートゥス教皇





「よくぞここまで来たな。君達がここへ来たのは昨日の昼。そこから僅か1日でフィール大聖堂まで到達した。今までに来たパーティの中では最速だ」


褒め称えるが彼らは喜んでいない。


「実は私は少し魔法が使えてね」


3人にそう言うとサートゥスは海の涙を掴んだ。杖の水晶が光り、その手に覇気が宿る。その覇気があまりに強く風を起こし彼らの髪をなびかせる。そしてサートゥスは腕を思いっきり引く。

ガシャーンという大きな音と共に建物が少し揺れ、壁から埃が落ちた。だが剣はビクともしなかった。

3人は恐れを感じ始めた。


「ははは、どうやら私は清い心を持っていると思われていないようだ。君達も挑戦してみるか?まぁ今までこの剣を持てた者はいないがね」

「教皇聖下、少しよろしいでしょうか?」


アーサーが問いかける。


「こちらの書物に見覚えはありませんか?」


彼らが取り出したのは分厚い書物、それも何冊もある。

アーサーが言う。


「道中こちらの書物を見つけました。大量にあったので全ては読みきれませんでしたがそれでもわかった事が多くありました。

これにはあなたの計画が記されていました。

なんでも成人の儀でスキルを授けた際、あなたにも同じスキルが与えられるそうですね」


さっきまで朗らかだったサートゥスから笑顔が消えた。


「そしてスキルを授かるほどにあなたのスキルは増えていき、強くなる。そしてあなたはより強い力を求めてスキルを平民にも与えようと前国王に打診した。でも彼は国民の武装化を恐れてそれを断った」


バーンズが書物を見せ、続きを話す。


「あなたは自分なら最強のスキル保有者となれると確信し世界を支配したいという欲に駆られた。そして魔法等の存在しない世界へ転生しそこを支配しようと思い付いた」


ランも書物を開き、続ける。


「そこで転生魔法を使うも失敗。逆にその世界の人をこちらに転生させてしまった。

その人こそ、カイト国王。

あなたはカイト国王には別の魔法使いが転生させた、修道院が助けたと嘘をつき、

この国の民は抑圧されていると吹き込み、王と戦わせ政権を奪った。

そしてスキルの民主化を実行させ、あなたは世界最強のスキル保有者となった」


アーサーは更に語る。


「だがあなたはこの計画書の処分方法に困った。破ろうが燃やそうが誰かが魔法で復元するかもしれない。そこで大胆にも魔獣の胃の中に隠すことにした。魔獣はほとんど排泄をしない。そして暗黒都市の魔獣は討伐もされにくい。隠すには最適だと思ったのでしょう。

ですが、ただ書物を置いただけでは魔獣は食べてくれない。だから身元を引き受けた罪人に書物を持たせ、彼らごと魔獣に食わせた。違いますか?」


サートゥスはそれを静かに聞いていた。そしてアーサーに尋ねる。


「見事な推理だな、だがそれはでおかしい所がある。魔獣の胃に隠したというならなぜそれをお前達が持っている?」


アーサーは本を閉じて言った。


「何故ならあなたは1つミスを犯したからです。

それは僕の卒業論文を読まなかった事です。

魔獣の消化機能について、私は学生時代魔獣の臓器や食性についての論文を書きました。そこでわかったのはフェンリルなどのオオカミに類似する魔獣は餌を食べた後、それを未消化の状態で吐き出し仲間に分け与える習性がある事です。

あなたの書物を食べたフェンリルは巣に戻った後それを吐き出した。そしてその仲間は罪人のみを食べて書物だけが残されたのです」


それを聞いたサートゥスは苦い顔をしながらも何も言い返さなかった。


「これは重大な犯罪です。この事は国に報告させていただきます」


するとサートゥスは突然低く笑いだした。そして杖をかざすと大聖堂の扉に鍵がかかる。


「ハハハ、まさかこんな奴等に暴かれるとはな!その通りだ、私はあらゆるスキルを保有している。当然お前の最弱スキルもな」


サートゥスはスノードロップの花をアーサーの足元へ投げた。


「折角だ、良いことを教えてやろう。

スキルの強さが誰にも到達できない程の強い水準まで到達すれば、ある特別なスキルが解放される。

それは、《魔獣生成》

様々な種類の魔獣を無制限に生み出せる」


3人はサートゥスの言葉が信じられなかった。頭を整理する間もなく彼は続ける。


「そして《魔獣生成》のスキルを手に入れた時私はわかった。

魔獣とスキル保有者の数は常に同じだ。

私がスキルを与えれば新たな魔獣が生まれる。

仮に魔獣を討伐しても別の魔獣としてまた生まれ変わる。まぁ私の生成した魔獣は死んでも復活しないがな。

そして魔獣が本当に死ぬ時、それはスキル保有者が死んだ時だ。

また魔獣が人を喰らうのは生存のためではなく単に強くなるためだけだ」


3人は真実を知ってしまった。

アーサーが恐る恐る聞く。


「という事は近年魔獣が増加してるのは…」

「スキルの民主化によりスキル保有者が増えたため、そして私が生成しているためだ」

「つまりあなたが『魔王』という事ですか?」

「…世間ではそう呼ばれてるらしいな…」


3人は段々と恐ろしくなった。目の前にいる人物は数万人分のスキルを保有している。更に魔獣を生成でき世界を支配しようとしている。そして自分達は彼の秘密を知ってしまった…。


「全てを知ったお前達をこのまま帰す訳にはいかない」


3人は血の気が引いた。


「最後にこれだけ教えてやろう。私に『魔獣生成』のスキルが解放されたのはスキルの民主化の後だった。これで私は世界中に魔獣を出現させ全てを破壊し尽くす事ができる。そして生き残った僅かな者に対し私に神の如く崇拝させる…。

そんな世界を実現するため試験的に大量の魔獣を生成した。首都のディケットから遠く、人口は少なくない、平民が多く、駐屯しているパーティが少ない、そんな絶好の都市があった。

ウィーキーだ…」

「…!?それはつまり…あなたが南西部の悲劇を引き起こしたのですか…?」


アーサーはカイト国王の言葉を思い出した。本当に恐ろしいのは魔獣ではなく人…。


「あの日、僕は目の前で母が魔獣に食われるのを見ました。僕だけじゃない、ランもバーンズも、皆大切な人を失ってるんです…。襲撃が収まった後も、ボロボロの街で仕事もできず国からの僅かな補助金で何とか耐え忍んだんです…。それを…あなたが…」

「あぁそうだ、実験への協力に感謝するよ」


アーサーは言葉を失った。ランも涙目で聞いていた。


「丁度、そろそろ私の計画を本格的に実行してもよいだろうと思っていたんだ。魔獣生成のスキルを使いこなせるようになってきたからな。これより南西部の悲劇を全世界で実行する!」


サートゥスが杖を掲げると水晶が怪しげに光った。その瞬間大聖堂の周りから魔獣の声が響き渡る。そして杖に語りかける。


「全世界の者共よ、我は教皇サートゥスなり。これより全ての国に魔獣を解き放った。私に降伏し服従する者には命を助ける。だが私に歯向かう者は魔獣が地獄へと導く。どちからを選択せよ」


この演説は彼の魔法により全世界に響き渡った。

魔獣が解き放たれた。




未曾有の事態により宮殿は慌てふためいていた。

突然の魔獣の襲撃にサートゥスの演説。


「おいどうなってる!?なんで各都市に魔獣が大量発生した!?そしてこの声は何だ!?」


カイト国王は役人へ尋ねるも誰もその理由はわからない。


「陛下!こちらをご覧ください…!」


家臣が走りながらやってきた。

そして家臣の言われるがまま窓の外を見ると、宮殿近くにも魔獣が飛翔し遠くでは煙や火があがっているのが見えた。


「ここにまで…」


カイトは目の前の光景が信じられない。

家臣も思わず呟く。


「これはまるで…南西部の悲劇…!」


その時だった。彼らの部屋の奥に黒い影が現れた。それは徐々に形を形成する。そしてそれが黒く巨大なドラゴンとなった。

国王と家臣はその目で魔獣生成を見た。


「陛下、お下がりください。ここは私が」


家臣はそう言って剣を抜く。




バーンズは殺気立っていた。


「俺ちょっとコイツ許せねーわ」


そして剣の柄を掴む。


「バーンズ…」

「あぁ、わかってる…」


アーサーが声をかける。剣士として誤った道を行こうとしているのではという不安が募る。


「少しなら遊んでやってもいいぞ」


サートゥス教皇は余裕の笑みを浮かべる。

そしてアーサーは2人を集め小声で伝える。


「あの杖が剣の代わりで、かつ魔法が放たれるようになってる。あれさえ破壊すれば、弱体化する筈だ。そうなれば俺達は勝てる…!」


彼らは杖の破壊に賭けるしかなかった。

バーンズは呟く。


「先生、ごめん…。俺先生の教えを破る事になるよ…。

俺は人と剣を交える…!」


そしてバーンズの鞘から剣が引き抜かれた。

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