第11章 討伐
机の周りにパーティメンバー5人が囲っていた。その上に地図を広げてイヴが切り出す。
「今回がバーンズ、ラン、そしてアーサーにとっては初の魔獣討伐となる。緊張するだろうし怖いと思うかもしれないが安心しろ。私達がいる」
イヴが3人の緊張を解く。
「いいか、前にも説明したがこの村近辺で魔獣の目撃情報があった。襲撃も近いと予想される。そのため我々に討伐依頼が来た。目撃情報から予想される魔獣の発生場所は…」
淡々と魔獣の発生場所や時間、村民の避難経路、メンバー各々の役割を説明する。その知見の深さや立案の速さは並大抵の努力では得られない天性のものがあった。
「私とバーンズは陸上の魔獣を討伐する。ヤーハンとランは私達の援護と空の魔獣を仕留めてくれ。
そして、アーサー」
最後にイヴはアーサーに指示を出す。
「後ろで見張りだ」
「はい!」
事務員は戦闘前後に活躍するが戦闘中は見張りや避難誘導が多く魔獣と直接対峙する場面は少ない。
村長との協議の上村民を避難させる。最低限の荷物を持たせ馬車へ乗せる。
だが、近くの森の奥から魔獣の咆哮が聞こえた。予想よりも速く魔獣が接近しているようだ。村民たちは焦り慌てるもののアーサー達は落ち着いて馬車に乗せた。
合図を送り馬車を走らせる。アーサーは村に留まり、他4人は森の入り口へと向かう。
そしていよいよ魔獣との戦闘が始まる。
「ふー!いよいよですねイヴ先輩!」
「くれぐれも調子に乗って変なマネはすんなよ」
「大丈夫っすよ!」
「ちゃんと皆さん無事に討伐できるでしょうか…?私今になって物凄く不安になってきました…」
「今回は魔獣が多いから危機的状況だろうな…。私がいなければだが」
バーンズとイヴ、ランとヤーハンがそれぞれ話す。
「いいか皆!もう一度説明するが、今回は飛翔する魔獣はワイバーン2体だけだ。そしてこの襲撃ではコイツらがボス的存在だ。ヤツらを倒せば魔獣の群れは統率が効かなくなり一気に崩壊する。そのボスを全力で叩き潰すぞ!」
「はい!!!」
イヴの呼びかけにメンバーは応え森へと向かっていく。
一方アーサーは最後の馬車を見送った後森の方へ向かっていった。すると空からワイバーンが現れ建物の屋根に着地した。そして屋根に顔を突っ込み中に餌となる人がいないか物色し始めた。
突然の事だったがアーサーは冷静に近くの民家へ避難した。タンスの陰に身を潜めているとワイバーンはその民家の近くへ着地し壁や地面の臭いを嗅ぎ始めた。
この状況をどう切り抜けようか悩んでいると、ふと彼の前のクローゼットの扉が閉じた。不思議に思い恐る恐る扉に近づき開けてみると1人の少女が小さくなって震えていた。アーサーは小声で話しかける。
「君、逃げ遅れたんだね」
彼女は震えながら頷く。その時窓が割れる大きな音が聞こえた。ワイバーンは民家の中に人がいる事に気付いたようで次にどうやって侵入しようか探っている。
「いいかい?今から僕がその勝手口から外に出て大声を出す。そしてあの魔獣を引きつけて囮になる。その間に君は玄関からここを出て目の前の道を真っ直ぐ走って行くんだ。馬車はそう遠くない場所にあるからすぐに合流できるよ。やれそうかい?」
泣きそうな顔で首を横に振った彼女にアーサーはエーデルワイスを出してみせそれを渡した。
「これを君にあげる。これを持ってると勇気が湧いてくるよ」
彼女はそれを受け取ると震えが治まり落ち着きを取り戻した。
「じゃあ321でいくよ。3…2…」
その瞬間壁が破壊されワイバーンが侵入してきた。アーサーは咄嗟にナイフを抜きワイバーンの胸に突き刺した。
「速く逃げて!」
少女は悲鳴をあげながら玄関から走って逃げていった。それを目で追うワイバーン。
「おい!こっちだ!」
アーサーが頭を殴るとワイバーンは威嚇し、押し倒して足で彼を掴み大きく羽ばたいた。
森の中の小屋の屋根の上をイヴは走っていた。そしてそこから飛び降りながら剣を振り下ろし、小屋の入り口にいた魔獣を切り裂く。すぐ側にはバジリスクが2匹いたがイヴは交互に剣を振るいスパスパと切りつけていった。
そのバジリスクを踏み台にヤーハンが飛び上がり前から来るゴブリンを射貫いた。そのまま地面に着地し魔獣に次々と矢を発射する。
そんな彼に横から魔獣が飛びかかるが突如現れた正六角形の光の盾により防がれる。この盾はランが生成したもので、いくつも出現させあらゆる方向からの攻撃を防御している。
彼女は最前線まで走り出ると杖から閃光を放ち複数体の魔獣を貫いた。
すると彼女の後ろからバーンズが飛びかかりゴブリンの群れに突っ込んだ。そのまま剣でゴブリンを斬り倒し正面から来たゴーレムにも斬り掛かった。彼はゴーレムの攻撃をかわしながら斬りつけるが決定打とはならない。だがすかさず後ろから矢がゴーレムの腕に刺さりイヴが胸を斬りつけ討伐した。
「皆よくやった!後はアイツだ!」
彼らの前には巨大なワイバーンが飛翔し、咆哮をあげながら迫ってきていた。
「ランちゃんお願い!」
イヴが指示するとランは盾を何枚も生成し、イヴとバーンズの足元に階段状に組んだ。2人がそれを駆け上がり、同時に剣を振り下ろす。彼らの剣はワイバーンの両翼に食い込み、そのまま叩き落とされた。
仰向けで倒れ叫び声をあげるワイバーンの胸にヤーハンが着地する。顔を足で踏みつけ弓を構える。
「これでコイツは全員で討伐した事になりますね」
そう言うとワイバーンの目に至近距離で矢を放った。魔獣は息絶えた。
「皆ありがとう、最後にもう1体のワイバーンを討伐すれば完了だ」
イヴが言ったと同時に空から雄叫びが聞こえた。全員が振り返るとワイバーンが彼ら目掛けて急降下してきた。
皆が武器を構えるとワイバーンは突然動きを止めて墜落した。
その息絶えた巨体が彼らの足元まで滑りこんだ。見ると頭にはアーサーがおりワイバーンの額にナイフを突き刺していた。
「アーサーよくやったなー!」
突然のアーサーの登場に皆が沸く。
「あ、ありがとう、ございます…」
彼は魔獣を討伐した事に自分でも驚いていた。
その後も彼らは着実に討伐数を上げていった。
ある時はバーンズとイヴとで同時に魔獣を切り裂く。
またある時は飛翔する魔獣にランが杖から火の玉を放ちヤーハンがそれを射抜く。矢は炎を纏い魔獣を貫く。
珍しくヤーハンが笑みを見せる。ランはそれに驚きながらも笑顔を返す。
そしてアーサーは…
「ダメだ!あと少しの誤差がどうしても埋まらない…」
帳簿とにらめっこをしていた。
「でも確実にこのパーティは成長してる」
全ては帳簿に現れる。
アーサーはパーティの成長を一番近くで感じていた。




