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第9章 卒業式

サン・ディース学園では卒業試験で優秀な結果を残した学生に賞が贈られる。

それぞれの学科ごとに金賞と銀賞。そして全学科中最高成績を修めた学生には学長賞が贈られる。

そして迎えた卒業式の日。

壇上で学長の挨拶の後、賞の授与が行われる。

黄盾の銀賞から発表された。が、それはアーサーの知る人物ではなかった。

そして金賞の発表。

名前を呼ばれたのは、アーサーだった。

彼は驚きと達成感、緊張と解放感に満たされながら壇上へと上がる。そして学長より賞を受け取る。会場からは拍手が響き渡る。

最弱スキルを授かった者がこうして公に評価される。自身の苦労と努力を噛み締めながら拍手を聞いた。


次に赤盾の受賞者が発表された。

銀賞だったのはランだった。

彼女は目を丸くしたまま壇上へ向かい賞を貰う。完全に想定していなかったようだ。


そして青盾の受賞者が発表させる。

ここでもアーサーの知る名は呼ばれなかった。


最後に学長賞が発表される。

そこでバーンズの名が呼ばれた。

会場は一番大きな歓声が上がる。

彼は壇上へ上り賞を受け取る。そして会場へ向け賞を掲げた。割れんばかりの拍手が響き渡る。

最も優秀な成績を修めたのはバーンズだった。

式終了直後アーサーが会場を出るとアイザックとマチルダがいるのが見えた。彼は2人の元へ急いだ。


「アイザック先生!マチルダ先生!」


2人もアーサーに気付いた。


「今まで中々お時間が取れずにすみませんでした…。でもどうしてもお礼が言いたくて!アイザック先生!僕に事務員の道を示してくれてありがとうございました!」

「いいんだよ、君が事務員試験に合格できた時は私も飛び上がって喜んだのは良い思い出さ」

「先生のおかげです!そしてマチルダ先生!僕を心身共に鍛えてくれてありがとうございました!」

「私は自分の仕事をしたまでよ。アーサーもパーティの事務員としての職務を果たすんだよ」

「はい!」

「そう言えばマチルダ先生は昔パーティにいたんですよね?」


突然アイザックが尋ねた。


「ええ、そうです」


とマチルダ。

アーサーは初めてマチルダ先生の過去に触れた。彼は急に気になりだした。いくら格闘スキルがあるとは言え素手で魔獣とどう戦ったのだろう?


「パーティには2年しかいませんでしたけどね」

「でも武器も無しに魔獣に立ち向かって行ったんですよね?大丈夫だったんですか?」

「幸いにも大した怪我とかはなかったし、2年で87体の魔獣を討伐した」

「えっ…」


素手だけでそんなに討伐したのか、と驚くアーサー。


「私が回し蹴りをすれば、大抵の魔獣は下顎が吹き飛ぶ」


アーサーは開いた口が塞がらなかった。




夕方になりいよいよプロムが始まる。

アーサーはこの日ランに花を渡すと決めていた。何日も試行錯誤を繰り返し生成した、1本の真っ赤なバラ。

それとともに思いを伝えるつもりだ。


皆が踊って食べてはしゃぐ中突如バーンズが名前を呼ばれた。

彼が壇上へと駆け上がると歓声が上がった。皆が彼の演説を期待している。


「やぁ皆、今年学長賞を受賞したバーンズだ!」


黄色い声が響く。


「青盾が学長賞を受賞するのは6年振りだ!俺が青盾を復活させたんだ!」


学生達がより盛り上がる。


「そして今ここに、俺が最強の剣士であることを宣言する!」


更に歓声が揚がる。今までの成績により彼が最強であることを疑う者も嫉妬する者もいない。

すると彼は学生達の中にリサがいる事に気付いた。そしてリサを呼ぶ。戸惑いながらも壇上に上がるリサ。

周りの学生がざわめき出す。

バーンズはリサを抱き寄せ囁いた。彼女は驚きながらも彼をじっと見つめる。


「名誉ある賞も、最強の剣の腕前も、俺には必要ない。君さえいれば何もいらない」


そしてそのままキスをした。

学生達の歓声は最高潮に達した。


ランは目を大きくし口元を手で隠しながらそれを見た。幼少期からずっと一緒にいた幼馴染が遥か遠い先の世界へ行ってしまったような気がした。

そこで後ろから声がした。

振り返ると緊張した面持ちのアーサーがいた。


「やぁ、人が多くて中々見つけられなかったよ」

「アーサー!私も探してたの」


周りの声がうるさく声が聞き取りづらい。


「あのさ、この前は花を枯らしちゃってごめん。新しい花を作ったから貰ってほしいなと思って…」


アーサーはバラを渡した。


「…!…いいの…?」

「…嫌だったかな…?」

「ううん…泣きそうな位嬉しい…」

「あぁ良かった〜…」


アーサーの安堵した顔を見て思わず吹き出すラン。

そしてアーサーは意を決して口を開く。


「あのさラン、実は俺さ…」


「キャーーー!!!ランちゃーん!いたのねーーー!!!」


突然の声に2人が驚くと、リサが走ってきた。


「ランちゃん!こっちよ!先生が皆に最後のお話しだって!」

「あー!ちょっと待って!」

「バーンズ!愛してるよー!」


そう言ってリサはランの手を引き連れて行ってしまった。


「ラン!」


アーサーは追いかけようとするが目の前に突然巨大な男が立ち塞がった。

よく見ると彼はジャックだった。


「おぉ山脈ジャック、すまないがどいてもらってもいいか」

「イヤだ!山脈は、動かない!」

「…なんだよその名言みたいなやつは?」


アーサーが呆気にとられているとジャックは根暗な顔で語り始めた。


「…僕は君に感謝の気持ちを伝えたいんだ…」

「…は?俺なんか感謝されるような事したか?」

「してるんだよ。意外かもしれないけど、実は僕、友達がいないんだ…」

「いや、全然意外じゃねーよ」

「僕昔から人と話すのが苦手で…会話も禄に続かないし、何を話したらいいかわからないし…それで段々皆僕に話しかけなくなっていくんだ」

「まぁそんなやつも沢山いるよ」

「でも君は違った!毎日僕に花を投げつけながら授業で学んだ事や自分の本音を吐露してくれた…毎日僕に話してくれたんだ!君は!毎日!話してくれた…!」

「いいよ2回も言わなくて」

「最初に木の枝ジャックって言われた時は正直嫌だったけど、」

「嫌だったのかよ、それはごめんな」

「でもこれが僕につけられた初めてのあだ名だったんだ。今ではすごく気に入ってるよ」

「今じゃ山脈みたいな体になってるけどな」

「だから僕は今君の事を友達だなんて恐れ多いから、苦楽を共にした仲間だと思ってるんだけど…君はどうかな…?」


アーサーはしばらく黙ったままだった。ジャックの顔が不安に満ちてくる。


「恐れ多いってなんだよ、俺達はもう友達だろ?そんなシケた顔すんなって木の枝ジャック」


ジャックは目に涙を浮かべた。


「うぅぅぅ…アーサー!」


そしてアーサーを熱く抱擁した。


「あああぁぁぁ止めろー!く…苦しい…よく考えろ…今のお前の腕力は…誰よりも強いんだー!」




翌朝、ランはフラフラになりながら自室へ帰った。あの後赤盾の学生達で朝まで騒いでいた。その中で銀賞を受賞したランは先生からの労いや皆からの質問で抜け出す事ができなかった。

結局アーサーと再び会うことはできなかった。だが彼から貰ったバラは決して手放さなかった。それにしてもあれだけのもみくちゃにされたのに薔薇は全くヘタれていない。アーサーがこの1本を作るためのどれだけの時間と労力を費やしてくれたのだろうか。

朝になってもランにはアーサーがどういった意図で薔薇をプレゼントしてくれたのか分からないままだった。

単に前回すぐに枯らしてしまったのが悔しかったのか、それとも卒業おめでとうの意味だったのか。


あるいは自分と同じ気持ちだったのか…。


そう思うとランは幼少のあの時のような喜びが溢れてきた。

アーサーの真意はわからないけど今日だけは喜んでもいいよね。

ランはベッドに飛び込みキャーと叫びながらのたうち回った。

だがいつの間にかリサが部屋に入っていた。


「あなた何やってるの?」

「………………………………………へッ!?」


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