15|『前回までのあらすじ』
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始ノ章:キロシュタイン視点
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英雄歴3072年01月22日。
黄金街=アルナゼリゼで開催される年に一度の祭典、「アルナゼリゼ音楽祭」にキロシュタインとツキナは訪れていた。ヴァルテス城跡学園は冬休み期間に入り、本来は皆で旅行するはずだった。だが、ノアとラテルベルが風邪をひいてしまい、二人はブルクサンガに残ることになる。
そして、いよいよ開幕。――と、同時に、歌劇場に銃声が鳴り響く。「XCiX」の兵士たちは突如として観客を撃ち始めた。――それは、地獄の幕開けだった。
ツキナはお姫様抱っこでキロシュタインを抱え、魔法「射月」を使って歌劇場から脱出。二人は無事、危機を逃れることができた。キロシュタインはその知識で、兵士が使っていた魔法がオセ・ツァザルディオ率いる軍隊のものであると解き明かす。
この襲撃は、XCiX――魔導教エクシクス諸派の初代主席魔導師、オセ・ツァザルディオによる、王座を取り戻すためのクーデターだった。
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呪ノ章:アギルレギン視点
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魔導教エクシクス諸派の現主席魔導師、アギルレギン。奴隷上がりの彼の野望は、コミュニオンを統べる王となり、「理不尽な世界を自分の手で変えること」。
しかし、オセ・ツァザルディオの呪いによって、アギルレギンの恋人・シグリッドは、永遠の眠りに囚われてしまう。シグリッドが最後に残した「私を、忘れて。」という言葉――アギルレギンが選んだ選択は、その場から逃げ、恋人を救うことだった。
そこへ、竜人族の少女・ラルカが登場。
“神殺し”の異名で知られるラルカは、
圧倒的な力でオセを追い詰めていく――
だが、四大悪魔・サンタキエロが現れ、
オセはサンタキエロとともに白いドアの向こうへと姿を消してしまう。
かつて恋人と過ごした思い出の小屋へと逃げてきたアギルレギンは、封印魔法で、彼女の眠る氷の棺を小屋とともに封印し、「おやすみ」と優しく囁く。
脳内に響いたアニハの声――
「世界記憶天体・アカシアに、すべての答えがある。」
その言葉を胸に、
アギルレギンは旅立つ決意を固めた。
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輪ノ章:キロシュタイン視点
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キロシュタインとツキナは路地裏で、かつて太陽の衣をめぐって争ったハヴァロ盗賊団の団長「月喰いのハヴァロ」と再会する。彼は義賊として心を入れ替えていた。
そのとき、どこからか声が聞こえたキロシュタインは、導かれるように路地裏の十字路へ。そこに在ったのは、赤い電話ボックスだった。
受話器の向こうから聞こえるノアの声。
「……待ってて。必ず迎えに行くから――」
次の瞬間、
キロシュタインは背後に立つ黒い影に撃たれ、意識を失う。
そして――
キロシュタインが次に目を覚ましたのは、
黄昏に染まる世界「アガルタ」だった。
ラルカと出会ったキロシュタインは、
彼女が語った「世界の根源」から、隠された真の歴史を知る。
ユハの覚醒――大雪焉によって、終わりを迎える世界。しかし、キロシュタインの魂に、姉・シアナスと、ノア、ラテルベル、ツキナ――彼女の大切な人々の記憶や意志が、リンネホープとなって魂に残響し、キロシュタインは再び目を覚ました。
ガス灯の案内人・ウェクシルムの導きによって、
キロシュタインは、黒き太陽の上に立つ塔へと進む――。
そこで待っていたのは、あの日、
水没した地上世界で約束を交わした「未来のノア」だった。
運命の輪が、音を立てて回り始める。
新たな仲間・ラルカ、覚醒したキロシュタインの左目――
白い旅路の章が始まりを告げる。