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16.波打ち際
初めての文化祭
高校1年、初めての文化祭 の日。
当時 、吹奏楽部にいた私は
開催式の後に演奏することになっていて
バタバタしていた。
演奏が終わり、楽器を片付けて
もしかしたら 上川さんが来ているかもしれないと思い
あちこち探し回った。
ロビーのベンチに
一人ぽつんと座っていた
後ろ姿の男性を見つけた。
確信は持てないけど
思い切って声をかけた。
瞳 「あの・・・ 上川光一さん、ですよね?」
光一「あぁ、よかった
会えないかと思っていた。
来てみたけれど、どうしていいかわからなくて
ここにずっと座っていたんだ」
心細そうな不安な顔が
少しずつ 明るくなっていく。
会えて良かった。
高校に来る途中で
文化祭のポスターを見つけて
来てみたと話してくれた。
数十分くらい話をして
別れた。
「手紙、書きますね」
嬉しそうに微笑んでいた。
当日の予定がわからず
伝えられなかったので
すれ違いにならなくてよかった、と瞳。
当時はスマホや携帯電話すら
高校生が持てなかった時代でした。