11.交差波
ドキドキ バレンタインデー。
バレンタインデーの日。
赤浦夏生 の家に行ってみた。
学校では渡せなかった
バレンタインデーのチョコレート。
好き、というか
普段から親しくしているお礼も兼ねて
買ってきたものの
嫌でも盛り上がっているイベントの中
誰かに見られたら、なにか言われるのは必死だ。
それだけは避けたい、と思いつつ
クラスは違うし、なかなか渡せない。
そうこうしているうちに授業は終わり
学校から帰る時間になってしまった。
赤浦夏生の家は知っているから
帰りに寄ってみて
ポストに入れて 脱兎のごとく家に帰った。
多分、わかると思う。
大丈夫。
自分にそう言い聞かせた。
数日後(ホワイトデーには
卒業してしまうから)
赤浦夏生君は
堂々とクラスの廊下にやってきて
「チョコ、ありがとう」
そう言って
バレンタインデーの時に入れた袋を渡した。
周囲も私もびっくりしているまま
受け取って
「あ・・・、うん」
と返事をした。
赤浦夏生君は
すぐに踵を返して
自分のクラスへ帰っていった。
でも、このことで
何かがひっくり返るわけでもなく
付き合うわけでもなく。
受験の日々に追われる毎日が過ぎ
何事もなかったかのように
受験の日はやってきた。
ホワイトデーにはすでに卒業してしまうので
お返しは早めに が多かったようです。
なぜか、高齢の教師がモテモテで
お返しが大変だったとか。