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線香花火または打ち上げ花火、もしくは  作者: きなこともちお
7/18

山本との部屋に戻ると、まだ寝ているようだった。脱衣所でドライヤーもしたし、途中でお姉さんが買ってくれたビールを片手に戻ってきた身としては、やることは一つ。

声を潜めて、


「いただきまーす。」


プシュッという音を最小にして開ける。至福のとき。いざ参る。


「最高。」


風呂上がりというのは何を飲んでも美味しく感じるだろうが、ある境界線を超えてから酒というのは特別なものになっていた。

あっという間に缶は軽くなり、視界もうつらうつらとし始めてきた。限りある意識を総動員し、歯磨きをする。


さて、寝るか。明日のチェックアウトは夕方だって言ってたからアラームを消してゆっくり寝よう。






来たる翌朝。私は驚きで目が覚めた。それはお腹の上にある重さで息苦しくなったから。


「えっと、えぇ、っと。」


ごめん、山本なのは分かるんだけど。どうしてこうなってるかが分からない。もしかして喉乾いたけど、ペットボトル取るまでに力尽きたとか!?それとも家と勘違いして、ここがベッドだと思ってるとか!?

そんなことよりも、まずはベッドに戻してあげないと!


「ごめん、山本起きてる?その体制だときついと思うから移動しよ?」


いくら声をかけても山本が起きる気配はない。どうしよう。このままじゃ足痛いし。


「山本ー?起きてもらえない?」


時計を見ると、時間は八時を回った頃だった。朝ごはんに丁度いい時間。どうせなら起こして、ご飯行こうかな。


「山本起きてー。朝ごはん食べよう?」


そう声をかけると、むくっと起き上がった山本は特に何も言うことなく洗面台へ向かった。

もしかして寝起き悪い?感じかな。少し放おって置こう。

私も着替えたいし、軽くメイクもしたい。


「おはよう。山里、昨日の記憶ないんだけど。何あった?」


顔を洗った山本は少し体調の悪そうな顔をして私に聞いてくる。今回は初めて片方が記憶を残しているパターン。


「いつも通りの飲みすぎで、今回はいつも以上に飲んでたかな。それで、部屋につくまでに殆ど寝ちゃってた。だから、とりあえずジャケットと靴だけ脱がしておいたけど。触らないほうがよかった?」


「いや、大丈夫。助かった。ご飯前に風呂入ってくる。先に向かっててくれないか?」


わかったと伝え、昨日お姉さんから教えてもらった会場に向かう。会場の前に着いて、足が止まる。

山本と一緒に来ればよかったと。知らないコミュニティーの中で一人なのはとてつもなく気まずいと。

オドオドしていると、後ろから声をかけられる。


「おはよう。朝ごはん食べないの?」


「お姉さん!!おはようございます。」


何だか入る勇気が出ないことを言うと、一緒の席に通してくれた。


「ありがとうございます。本当にどうしようって思ってたんです。」


運ばれてきた料理を前に何度も感謝を伝える。お姉さんはいつもよりゆっくり寝ていたらこの時間になったようだった。後から、山本がやってくることを伝えると


「あら、あの子朝まで起きなかったの?夜にお風呂入ると思ってたんだけど。」


「今入ってますよ。多分。」


運ばれてきた料理はどれも美味しくて、いつも朝は起きれたら食べれる派の私の身体にえげつないほど染みた。特に卵焼きと味噌汁。


「はぁ〜、染みますね。」


食後のコーヒーを一口飲んで身体の力を抜く。結局山本は食べ終わる頃になっても食事会場には訪れなかった。


「弟のこと心配じゃないの?」


正面でデザートを食べているお姉さんに聞かれると、


「心配ではありますけど、山本なら大丈夫かなって思えるんですよね。仕事でも信頼してるんで。」


なんだかんだ言って器用だからな、彼は。私だったら力技で何とかしてしまうことをきちんと順序建てて、事を進めることが出来る人。信用も信頼もある。


「でも、流石に何も食べないのはまずいと思うのでコーヒーと小腹用のミニパンは持っていこうと思います。」


「そうしてあげて。帰りは電車?」


「そうですね。行きと同じ経路で帰ると思います。」


今日は土曜日。もしかして早めに席とらないと帰れない!?

どうしよう。


「心配そうな顔してるけど、多分大丈夫よ。あいつが席取ってると思うから。」


「えっ?」








朝ごはんを食べ終わって部屋に戻ると、山本は着替えも支度も準備万端だった。

持ってきたパンとコーヒーを渡すと、今食べると言いだしてバッチリキマったままで食べ始めた。


「何か不思議だね。あ、こっちで食べてるなら洗面台使ってていいかな。メイクとかしたいし。」


さっきご飯食べる前にやろうと思ったけど、忘れてた。どうせ軽くしかやらないつもりだったけど。

髪の毛も結べる程度に整えて、昨日着た服を整える。


「山里ー、電車の時間送っといたから。確認してー。」


ドア越しに叫ばれて、慌ててスマホを取ろうと手を伸ばしたら腕をドライヤーにぶつけて落とした。それなりに音が出てしまい、部屋からどんどんっとこっちに向かう足音がする。


「山里!大丈夫か?」


「ごめん、ぶつけてドライヤー落としちゃった。」


その事を伝えると、はぁ、と胸をなでおろした。


「ごめん、心配かけちゃった。もうすぐで出れるから。」


その後30分程して私達はホテルを出た。どうしてか、山本が帰りの席をとっていた。どうしてだろう。





帰宅します


そして、次に会うのは翌週


新しいお仕事に向かいます

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