5
え、お姉さんの部屋!?行ってみたい。でも、これから私達夜ご飯だし…。どうしよう。
「おいっ。山里が困ってるじゃないか。姉さんは早く部屋に戻ってくれ。」
悩んでいる間に、山本がお姉さんを部屋へ押し戻してしまった。あぁ、返事してないのに。
急ぐってことは山本はお腹空いてるのかな。お店の予約しておけばよかった。
「ごめんね、山里。うちの姉が迷惑かけた。やっぱり今日の夜は俺が奢るよ。近くに知り合いの店があるんだ。」
いきなりスマホの画面を見せられる。そこに写っていたのはお洒落なイタリアンの店で、私好みだった。
でも、本当にいいのかな。甘え過ぎてる気がして、素直に頷けない。
「どうした、気に入らないか?」
スマホの先からこちらを見る山本の顔が目に入る。こちらの顔色を伺っているように見えて、焦って何とか応えようと頑張るが、うまくいかない。
「大丈夫だ。落ち着け。ここで嫌なことはないだろうか?」
「ない!大丈夫!」
とりあえず、何とか応えたけど。応えた後、しまったと口を抑えた。
「待って!私払うよ!さっき約束したし!」
店が決まって動き始めた山本の後を追いながら、その背中に声をかける。しかし、勢いよく走って声をかけたため、その背中にぶつかってしまった。
「あ、ごめん。大丈夫?」
止まると思わなかったから、ぶつかっちゃった。山本大丈夫かな?
そろっと左から覗くと、山本が顔に手を当てていた。もしかして、どっかぶつけたりしたのかな。
「ほんとにごめん。どっか怪我してないよね?」
「大丈夫。少し驚いただけだよ。お店行こうか。」
山本の後ろにいたけれど、店に行こうと手を引かれ隣に並んでエレベーターに乗る。
さっき見せてもらった写真からして、パスタとピザがメインのお店なんだろうな。ワインとか良いのありそう。楽しみだな。
「山里、嬉しそうだね。そんなにお店気に入った?」
ホテルから出て車道沿いを歩きながら、美味しそうだと思った写真の話をする。
そこから気がついたら、昔好きだった食べ物の話になっていた。
「そっか、山本の実家料理屋さんだったんだ。だから、たまに見るお弁当が豪華なんだ。」
「そうなんだ。週末たまに母親が作り置きをくれるから、ご飯で食べて余ったら弁当にしてるんだよね。」
「素敵だね。私なんか朝早く起きれた時だけ、気分がいい時だけ、作るからな。いいな。山本も料理できるの?」
「俺は、簡単なものなら作れるよ。土日は余力があれば、作り置きとかやるくらいかな。」
「すごい!いいな、山本の料理食べてみたいかも。今度お弁当味見してもいい?」
「何か好きなおかずとかある?学生時代とか、お弁当じゃなかった?」
「私は、王道だけどやっぱり唐揚げ入ってると嬉しかったな。後はね、マカロニサラダとかも好きだった。」
「唐揚げか、入ってると嬉しいよね。俺はね、肉巻きとかが好きだった。母親が作ってくれてたふりかけが一番お気に入りだったんだよね。」
「お手製!すごい!」
「山里はいつも褒めてくれるな。母親に伝えておくよ。」
そんなことを話している間に店に着き、席に通される。別に予約してたわけじゃないのに。
「細かいこと何か気にしなくていいから。食べよ、俺お腹すいた。」
「わ、かった。」
メニューを二人で見ながら、注文を決める。お酒を飲みたい気分ではあったが、お腹も空いているから、気づけばパスタもピザも2人前注文していた。
「どっちも、私が食べたいやつだけどいいの?山本食べたいの頼んでいいのに。」
「とりあえず何か食べたい気分だっただけだから、逆に決めてくれてありがとう。」
何か山本ってこんなにスマートな人だったんだ。カッコいいというよりかは、親切な人だよな。
彼女とかいるのかな。顔だってお姉さんに似ていて整っているし、ちゃんと自分に合っているスーツを着こなしているから、充実してそう。
「そんなに俺を見つめてどうしたの?」
やば。見つめてたっぽい、変な人だと思われた。仕事の同期がじっと見つめてくるなんて不思議でしかないよね。
「ごめん。嫌だった?よね。」
とりあえず視線を逸らして、辿々しくも会話を続ける。料理届いた時の店員さん、なにこれって思いそうなシチュエーションだよな。
「大丈夫だよ。疲れててぼーっとしてたのかなと思っただけだから。からかおうかなって思ったら、謝られると思わなかったけど。」
「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしちゃった。」
そういうことにしておこう。流石に見つめてましたなんて素直に言えないし。
そうこう話しているうちに料理が届く。パスタもピザもどちらも丁寧に作られているのが感じられて、思わず美味しそうと声に出てしまった。
「美味しそうだね。食べようか。」
そこから、仕事のこととか、お互いの家族の話とか。いつもの飲みよりもゆっくりと、じっくりと話をしながらご飯を食べた。
もちもちもモッツァレラ
とろとろのチェダーチーズ
ぬるぬるのパスタソース
そんなこんなで、明日が来ます