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私はこれから同期の山本の親戚の集まりに行く。
改めて考えると、色んなことがおかしい気がする。でも、疲れてるし、ちょっといい休日ってことにしておこう。
「山里、準備できた?」
コンビニで下着など着替えを買い揃えている私を、入口で待つ山本。その手には350のビール缶が4本入っている。他にも私の好きなおつまみである、クラッカーとオリーブも入ってる。いつも居酒屋で頼むのがバレているようだ。
「うん、大丈夫。お待たせしました。」
「大丈夫待ってないよ。必要なものは揃ったね。」
さらっと車道側を歩いてくれる山本は十分に出来た男だろう。どうやらホテルまでの電車も用意してくれたみたいだし。
「さっき行くって決めたのに、電車とか急ぎで用意してもらって本当にごめんね。」
「いや、どちらかというと、いきなり誘ってるこっちが悪いからさ。気にしないでいいよ。」
そう言ってくれた言葉を信じて、甘えることにした。電車の中ではお互いに疲れていたのか、一時間丸々爆睡してしまった。
「山里、起きれる?そろそろ着きそう。」
優しく揺さぶられて、意識が浮上する。まだ若干ふわふわしているが、荷物を多少持ってくれてなんとか電車を降りることができた。
「ごめん、疲れてたみたい。すっごい寝ちゃってた。」
持ってくれていた荷物を受け取りながら、ホテルまでのタクシーを待つ。どうやら次の日が休日であるが故に、かなり出払ってしまっているようだった。
「タクシーまだ来ないみたいなんだけど、って起きてる?」
「あ、だいじょぶ。起きてる。」
さらっと荷物を持ってくれていることに気がついて、慌てて自分で持つと伝える。
「あ、気にしないで。もうすぐ一台来れるって連絡取れたから。荷物の代わりってわけじゃないけど、ペットボトル一本買ってきてもらえないかな。あとで、お金渡すから。」
「もちろん!」
少し小走りになりながら、近くの自販機を探す。目の前に来て、何味を買えば良いのかわからなくなり、一度山本の元に戻る。
「ごめん、何飲みたい?」
戻ってくると思わなかったのか、驚きながらも私の好きなものでいいと言われる。再び自販機を目の前にして、私は無糖の紅茶を買った。
「丁度タクシー来たよ。乗ろうか。」
そこから30分ほど揺られてホテルに着いた。時刻は22時を過ぎている。
「ねぇ、山本。もしかして私場違いだったりしない?」
助けるなんて大義を掲げたつもりでいたが、冷静に考えてみるとなかなかにすごいことをしている気がする。だって全く知らない家族の集まりに行くなんて。
「大丈夫。宴会自体はもう御開になってるし、酔っ払ってる人たちは温泉とか行かないから。っていうか、部屋に露天風呂あるし。」
お、おう。そうなのか。だったら顔合わせることもないだろうし、大丈夫か…?
部屋の鍵を渡されて二人でエレベーターに乗る。
もしかして、私山本と二人で一部屋ってこと…。
やば、私お嫁に行く前の女なんだけど。じいちゃんに怒られちゃうかも。言わなければバレない…!?
「そ、そっか。それじゃあ、私達ご飯どうしよう。会社出てから何も食べてないよね。」
「荷物おいたら、外に食べに行く?近くにいつものチェーン店あるし。」
上着をかけながら山本に提案され、お財布事情を確認する。今日なら少し散財しても問題なさそう。ここまでの交通費とか出してもらってるから、ここくらい出さないと。
「行く!でも、ここは私に奢らせて。気にしないで沢山食べたり、飲んだりしていいからね。」
ミニバッグと財布、家の鍵、スマホを持って部屋を出る。すると向かうの部屋から一人の女性が出てきた。
「あら、夏向。その方が噂の?」
噂?私何かやらかしてたっけ。この前先輩のボールペン勝手に使ったから?間違えてお弁当空っぽのまま持ってきたから?
「ちょっと、夏向。その子頭にはてな浮かべてるけど。」
姉さんは意地悪だな。
「ごめん、山里。紹介しよう、この人は俺の姉、佳織。見た感じあんまり出来上がってないから、まだまともに話せると思う。」
「ちょっと実の姉になんてこと言うのよ。」
だってあんたはこいつにちょっかい出しに来ただけだろ。なんてことない顔してるけど。
そろそろ山里の意識を引きたい。
「山里?ビビらなくて大丈夫。悪いところはないから、この人。良いところもないけど。」
「ちょっと山本、お姉さんにそんなこと言っちゃだめだよ。」
こんなに綺麗な人始めて見たし、加えてスタイル良すぎ。見惚れちゃう。
美しいお姉さんだな。
「あら、よく見たら貴女可愛らしいお顔してるじゃない。もっと見せてくれない?」
え、顔近っ。毛穴ないんじゃない、この人。肌綺麗すぎる。っていうか直視するの辛い。顎掴まれてるから離れられないけど。
「おい、離れろよ。困ってるだろ山里が。」
いきなり肩を引かれ、お姉さんと離れる。何か山本怒ってない?ちょっと掴む力強い気がする。
「大丈夫だよ。お姉さんが綺麗すぎて見惚れちゃってただけだから。本当にお綺麗ですね。」
その肌に触れてみたいと思って手を伸ばす。逸らされることなくまっすぐに進んだその手は美しい肌に届いた。
「うわ。」
思わず声に出てしまい、はっとなって口を抑えるが時すでに遅し。お姉さんがこちらを見ている。
「そんなに私に触ってみたかったの?可愛い子ね。」
「す、すみません。思わず…。失礼でしたよね。いきなり触るなんて。」
初対面で失礼なことをしてしまった。嫌われたりしてないかな。
そろっとお姉さんの目を見る。
「大丈夫よ。そんなに私に興味もってくれているなら、この後部屋来るかしら?」
次回
いちゃいちゃ、ぬるぬる
ふわふわ、もちもち
起こります