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その日のお昼、私は山本と近くの新しくできたレストランに足を運んだ。下っ端の私達が行くにはあまりにも豪華過ぎているが、山本曰く今度の商談で使おうと思っていたからその下見だと思って欲しいとのことだった。
特に昨日のことに触れること無く食事は進み、お互いに資料の交換と情報共有を済ませて仕事に戻る。
「そういえば、今夜空いてるか。一ノ瀬と三人でご飯行かない?」
「えっと。最近外食多すぎるから減らしてるんだよね。お誘いありがたいけど、また今度ね。」
丁寧に断って、自席に戻った。すると後方から何かの気配を感じて振り返る。
「わっ。どうしたの廣、堤下さん。どうかされましたか?」
「いや、さっき上のフロアからこの書類を受け取ったんだけど席が分からなくて。山里さんの席ってどこかな?」
見せてもらった書類は二人で進めてるものではなく別のチームでの仕事だったため、直接渡すのがいいだろうと思い席まで連れて行く。
「山本、上のフロアからだって。と、堤下さんが持ってきてくれました。」
そう言って廣を前に出し、役目を終えて席に戻る。その後二人が何の話をしていたかは分からないが、帰りに開いたスマホに
’俺、山本さんに嫌われてる?笑’
と入っていたため、明らかに何かをやらかしているようだった。
どうも一ノ瀬です。この前も飲んでただろうっていう声が若干ありますが、気にしません。
目の前で子犬のようにうるうると1点を見つめている人がいるので、他のことを考えていたらこの空間が異次元になってしまいます。
「おつまみ来ましたよ。そんなにいい人だったんですか、堤下さん。というか、どうして好きじゃないなんて言っちゃったんですか。本当にあなたって人は。ここまで準備してきたのを無駄にするんですね。」
「そこまで、言う必要ないだろう。それに別に褒めてないからな。俺より少し年上で、キャリアがあって山里に俺より早く出会って、付き合っていたってだけだから。」
語尾が小さすぎて何言ってるか分かりませんよ。はっきり言いなさいよ。
「嫉妬ですよね。見てられません。というか、そんなになっている先輩を見たくありません。」
「お前何だか言葉が強くないか。俺、これでもメンタルブレイクだぞ。」
そうでしたね。別に構いませんけど。私だって晴夏先輩に聞きたいことあるのに。思い切って聞いてみた時は、元彼だということしか教えてくれなかった。
ただの元彼だったならば、寝るときに口に出すだろうか。きっと何かが特別なのだろう。
「はぁ。」
「おい、この状態の俺の横でよくため息なんてつけるな。」
知りませんよ。あーぁ、知らない。お酒に身を任せよう。お酒に溺れよう。
’大丈夫だよ晴夏。お前は愛されてるからな。’
ちょっと停滞します
それは梅雨の前線のごとく
そして、山本、
告ります




