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「おはよう。あれ、一ノ瀬?」
そういえば、昨日ものすごくお酒飲んだ気がする。とりあえず机の上を片付けようと、身体を起こすと腰に巻き付く腕に止められる。もしかして、何かと私を勘違いしてる?
「あ、時間!」
時計を慌てて見ると、設定したアラームはあと15分で鳴るところだった。やっぱり寝起きが良いことだけはいくらお酒を飲んでも変わらなかった。
とにかく一ノ瀬を起こして、着替えとかシャワーを貸して、仕事に向かわせる。このことだけを計画し、一ノ瀬を揺らす。
「一ノ瀬、起きれる?今日もお仕事ですよー。」
なんとか振りほどいた腕をそっと置き、着替えを持ちシャワーを浴びる。出てきても一ノ瀬は一ミリも動いていなかった。自宅から会社までは電車で5駅ほどのため、そんなに慌てることもない。
それでも・・・。起こさないわけにもいかないし・・・。
あまり人に無理やり何かをするのは苦手であるが、少し力を込めて大きく揺する。
「一ノ瀬ー!起きてー!朝だよー!」
すると一ノ瀬はやはり何かと私を勘違いしているのか、また抱きついてきた。
だが、その行動は明らかに無意識ではないと分かる動きであったため、こらっ、と軽く頭をつつく。
「すみません。先輩と朝を迎えた喜びに浸りたくて。おはようございます。晴夏先輩。」
「おはよう、一ノ瀬。もう、寝ぼけて何言ってるの。着替え貸してあげるから、シャワー入っておいで。」
渡した着替えを抱えてシャワーに向かう一ノ瀬を見送り、冷蔵庫を開ける。普段は当たり前のように1人分の食事しか作らないから、2人分の食事を作る用意がなかった。
作り置きを使ってもいいけど、基本的におつまみとかご飯のおかず向けだから、朝ごはんに軽く食べるような用意してないんだよな。
昨日、そのまま寝てたからお米ないし、パンも最近買ってない。
「晴夏先輩、シャワーありがとうございました。」
何も準備できず悩んでいる間に一ノ瀬が出てきた。ご飯の用意しようと思ってたのに。
「晴夏先輩は朝ごはんは、ご飯派ですか?パン派ですか?」
「基本的には食べれたら食べるって感じなんだけど、今日は早めに起きたから何か食べようかなって。」
どっちというわけではないんだけど、どうしよう。はっきり言わないと一ノ瀬困るよな。
「私は、お米食べたい気分なんだけど、一ノ瀬はどう?」
「そうですね、私も基本的にお米派なので、どこか食べに行きませんか?美味しい和食屋さんがあるんですよ。着替えとかお借りしてしまったので、私にご馳走させてもらえませんか?」
なんだか、昨日から一ノ瀬に奢られ続けている気がする。せめてここだけでも、私が払うべきなのでは。
「い、いや。私が奢る!お店連れて行ってもらえないかな?」
何とか言いくるめ、着替えて家を出ることが出来た。一ノ瀬が教えてくれたお店は、2つ隣の駅前にあって、この前スマホのネットニュースで見たお店に似てた。
「すごい素敵なお店だね。何がおすすめとかある?」
「これとか、美味しそうですよ。」
一ノ瀬が指して教えてくれたのは、あっさりめのおかゆだった。
どうも最近多めの一ノ瀬です。皆さん知ってると思いますけど、先輩と夜を越し朝を無事に迎えました。はい、幸。
今は眼の前で美味しそうに先輩が朝ごはんを食べてます。それに、朝からそれとなく名前呼びしてるのにも違和感を感じてないみたいだし、続けよう。
「晴夏先輩、それどうですか?」
先輩が頼んだのは、やさしい味のおかゆとメニューに書いてあったものだった。私も同じものを頼み、飲み物は先輩がコーヒー、私は緑茶を頼んだ。小さなスプーンでぱくぱく食べている先輩は何とも形容できないほどに可愛い。起きてから時間は少し経っているが、まだ会社でいつも見るような姿ではないため、新鮮な感覚だった。
「美味しいよ。って一ノ瀬も同じでしょ?」
「そうですね。でも、晴夏先輩の言葉がほしかったんです。」
本当に美味しそうに食べるんだよな。たまにお昼ごはん食べてる姿見かけるけど、一人で食べてても美味しそうな顔してるし。
それから、静かに黙々と食べ30分くらいで食べ終わった。お互いに暖かい飲み物を飲んで一息つく。
「美味しかったですね。」
「うん、良いお店教えてくれてありがとう。」
荷物をまとめて先に出る。先輩がお支払いをしてくれている間、先輩の分の荷物を持ってお店の前で待っていると知った顔が現れた。
「あ、一ノ瀬。」
「あ、先輩。おはようございます。」
そういえば、山本先輩の家はここらへんだった気が。まぁ、気の所為。たまたま、行きたいなと思ったお店があって、それがたまたま先輩の家の近くだっただけ。
「こんな時間からどうしたんだ。」
なんてこと無いように聞いてますけど、あなたきっと私の持っている荷物から誰といるかなんて分かってるくせに。そういうところがあるから、手に入れられないんですよ。
「いつもより早く起きたので、少し良い朝ごはんを食べようかと。」
QOLの向上ですよ、と付け加えればつまらなそうに、ふーんと返された。だって、あなたが知りたいのは誰といるかですものね。
「晴夏先輩と、さっきまで食べてたんです。美味しいですよ、このお店。」
そろそろ晴夏先輩が出てくる頃だと見計らって、店に振り返る。
「あれ、山本。どうしたの?」
何も知らない晴夏先輩は、ぽかーんとした口が開いたまま首をかしげる。こういうところ、なのはお互いさまなのかもしれない。
「晴夏先輩、この辺山本先輩のお家が近いんですって。」
「そうなんだ、知らなかった。ってことはこれから出勤?」
私から上着や荷物を受け取り身につけていく先輩。山本先輩、目が怖いですよ。目線で私以外なら殺せますね。この先はお譲りしますから、どうせ昼休みは事情聴取になりそうだし。
「そうだけど。山里たちも一緒にどうかな?電車だろ。」
「折角だし、一緒に行こうか。私、この前の資料で確認したいことあったんだよね。」
あーぁ、これだから昔から三人組は良いことがない。
三人組にいい思い出は殆どありません
多分そろそろ一ノ瀬の想い人が出てくる予定です
山里晴夏は結婚します
必ず最後までに




