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【1−6】三十分で考えたざまぁアニメの主題歌です

 戦闘シーンの描写が難しすぎました。

 ついでに作詞も難しすぎました。

 熊はすごい速さで腕を振りかぶる。

 私はここで死ぬのかもしれない、なんて考えが頭をよぎった。

 あまりの怖さに、ぎゅっと手を握りしめて目をつぶる……と。


 キインッ


 硬いもの同士がぶつかったような、そんな音がして。

 いつまで経っても衝撃が来ないので、おそるおそるまぶたを開く。

 すると、信じられないものが見えた。


 緑のオーラに沿うように筒状の結界が現れて、熊の巨大な爪を防いでいたのだ。


「……えっ?」


 思わず間抜けな声が出る。


 あわてて辺りを見回すけれど、やってきたばかりの人が水色の熊に驚くことはあっても、緑の結界が爪を防いだことには驚いていないみたいだ。


 ラムネさんも驚いていないようだったので、聞いてみる。


「この緑の結界ってなんですか?」

「何、って……せ、セーフティエリア?」


 セーフティは、安全? だったっけ。


 ということは……ここ安全エリアと普通エリアの境界線が緑のオーラで、外部からの攻撃を防ぐのがあの結界で……じゃあ、さっきラムネさんの「助かった」という言葉から推測した「ここが安全」ってのは間違ってなかった?


 ここから出なかったら攻撃が当たることはないんだろう。

 だけど外に出られなかったら、町に行くことができない。


 あれ、この熊を倒さなきゃいけないってこと……?


 私は現実から目をそらしたくなった。

 仮想現実だけど。


 ……待って、落ち着け私。


「そっか、ここは――EFOの世界なんだ」


 知らず知らずのうちに現実の感覚が混じっていた。

 自分へ言い聞かせるようにつぶやいて。


 息を吸い込む。


♪ 届け!

  叫ぶんだ 叫ぶんだ

  思ったことそのままに


 歌いながら、ふと足元に目をやると、小さな赤色のおうぎ形ができていた。

 これが何を意味するかわからないけれど、今は歌いつづけるしかない。


♪ 嫌なことぜんぶ黙ってても

  何も変わりゃしないんだ

  私だって 私だって

  幸せになったっていいだろう


 おそらくこの場で最も長くこのゲームを遊んでいるラムネさんが、倒せない相手。それをこの歌唱魔術で倒せるわけはないけど、足止めぐらいなら叶うんじゃないか。


 ――そうしたら、ここで立ち往生している十数人のプレイヤーがみんな町へと行けるんじゃないか。


 そんなことを考えながら、叫ぶように歌い続けていた。


「あっ……」


 ラムネさんの声がした方へと歌いながら振り向く。

 ラムネさんの視線を追って、自分の足元を見る。


 おうぎ形の中心角が、まるで時計の針がぐるりと回るように、だんだんと大きくなっていく。小さな円ができ、少しずつ大きくなり、やがて大きな円に複雑な模様が描かれた。


 ――きっと、これで魔法陣ができたんだ。


 私は歌うのを止め、魔法陣に意識を向ける。


「ちょっ、待って!」


 さっそく魔法を発動させようとする私を、ラムネさんが引き止めた。


「攻撃魔法を撃つなら、セーフティエリアの外……じゃない?」


 ラムネさんは尻すぼみになりながらも教えてくれる。

 この世界の仕組みについて私はほとんど知らない。

 だからラムネさんの言葉に従って、てくてく外を目指した。


 もちろん、いつでも魔法を撃てるように準備したままだ。意識をそらすと魔法が霧散しそうな気配があったので、ずっと魔法陣に意識を向けながら少しずつ進んでいく。


 これ結構、集中力が持っていかれるなー……。

 少し疲れてきた私の前に、ラムネさんがひらりと降り立った。


「私があの熊を引きつけるので、その間に攻撃してもらえませんか? 一撃当てたらセーフティに戻るのを繰り返せば……攻撃の効き方によるけど……たぶん倒せると思うので」


 魔法陣に意識を割きながらも頑張って話を聞き取り、私はなんとか首を縦に振る。

 セーフティエリアの端ギリギリまで私が近づくと、ラムネさんは駆け出した。


「こっち、おいで!」


 その言葉に反応してか熊が腕を振りかぶるのを視界の隅に捉えながら、私はセーフティエリアの外へと一歩踏み出す。瞬間、魔法陣がさらなる輝きを放った。


 私は熊の背中を指さし、念じる。

 ラムネさんに集中している熊の背中は、ガラ空きだ。


 私の指先から謎の波動がほとばしり、熊をパックリと割った。


 腰の上あたりから胸あたりまでまっすぐに分断された水色の熊を、たちまち白い光が包む。熊の色に合わせてか水色になった光は、バランスボールぐらいの大きさまで小さくなった。


 えっと……これは、どういう状況なのだろう。


 混乱する私の耳の中で、小さくファンファーレが鳴り響いた。

 非常にどうでもいいですが、ファンファーレは耳の中で鳴っているのではなく、脳に直接信号が送られているみたいです。


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