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【1−4】ランダムにすると超低確率で一覧にないスキルが選ばれる、って伝え忘れちゃったけど大丈夫だよね?

 いいねが身に染みる……。

 エターナル・フロンティア・オンライン。永遠の……何だろう?

 私が頭をひねっている間にも、映像は移り変わっていく。


 いかにも「熱血!」って感じの騎士団。

 なんだか険しい表情の魔法使いたち。

 慈しみを込めて微笑む美人のシスター。

 なんかいろいろはっちゃけた人たち。


 そして――すごく主人公っぽい、凛々しい顔の女戦士。

 一瞬だけ彼女が切ない表情を見せたあと、場面が切り替わる。


 木造の建物に集まったたくさんの人が、ワイワイしている光景。

 そんなワクワク感を抱かせる映像を最後に、上の方から暗転していく。


 面白そうだ、と素直に思えた。



 ☆



 再び真っ暗になってしばらく。

 気がつけば、白い空間の中に私はいた。

 大きな鏡が置いてある。


 覗いてみると、パジャマ姿の私が映っていた。

 周りがただの白だからか、意外と目立たない。


 鏡をじーっと見つめていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。


「ひゃあっ⁉︎」

「わぁ⁉︎」


 びっくりして硬直すること十数秒。

 振り返ると、小さな人間がふわふわしていた。

 どこか焦点が合っていないように見える。


 少しして、目が合った。

 小人さんはわたわたと手を動かす。


「ええっと……さっきはごめんなさい。びっくりしちゃった」


 どうやら私がビクッと肩をふるわせたせいで、叩いた側もびっくりしてしまったらしい。申し訳なさと、声が少年のようだったことへの驚きとで固まっていると、小人さんは私の方に近づいて首をかしげた。


「キミの名前は?」


 本名を答えるべきか、プレイヤーとしての名前を答えるべきか。


「これから行く世界での名前だよ」

「じゃあ……モモ、でお願いします」

「モモ、ね。りょうかーい」


 桃山のモモ。かなりそのまんまだ。正直もうちょっと捻りたかったけど、そうすると呼ばれた時に気づけないかもしれないから諦めた。


 小人さんは鏡に近づいて、縁をトントンと叩く。

 すると黒い半透明のディスプレイがたくさん現れた。

 大量の画像や、虹色の輪っかみたいなものが表示されている。


「ここから好きなのを選んでくれれば、鏡の中のモモに……アバターに反映されるよ」


 選択式ということは、身長とかはいじれないということだろう。

 何か悪影響とかがあるのかもしれないし、まぁ仕方ない。


 ディスプレイに近寄ると、スマホみたいにスクロールやタップで操作できることがわかった。とはいえこのディスプレイはかなり大きいから、腕をだいぶ大きく動かさなきゃいけないけど。


 髪色、髪型、目の色。

 一つずつ、丁寧に決めていく。


「……できたっ!」


 前髪は姫カット、後ろ髪はハーフアップ。

 髪色は、オレンジ色とピンク色の間の色。

 目の色は、青くキラキラ透き通ったサファイアみたいな色。


 なんだか気の強いお嬢様みたいな雰囲気になった。

 服は庶民のパジャマだけど。


「それで決定でいい?」


 見とれていると、小人さんが視界の隅っこで手足をバタバタさせて聞いてきた。

 急に恥ずかしくなって、私はぶんぶんと首を縦に振る。


「じゃあ最後に、この中からスキルを一つ選んで!」


 小人さんがそう言うと、さっきまであったディスプレイが消えて、入れ替わりに新たなディスプレイが現れた。ずらーっと並ぶ白い文字から「歌唱魔術」を探す。


「スキルによって、世界に降り立つ場所も初期装備も変わるから、気をつけてね! どうしても決められないなら、ランダム選択もできるけど……」


 なかなか見つけられずにいると、小人さんが心配そうに声をかけてきた。

 いっそのこと探すのを手伝ってもらおうか。


「えっと、歌唱魔術ってどこにあるか分かります?」

「うーん……ちょっと待ってね」


 小人さんは懸命に体を動かしてスクロールし、ディスプレイをすみずみまで見ていく。


「あ、あった!」


 歌唱魔術のところを小人さんがタップすると、小さなディスプレイが現れた。

 どうやらスキルの説明が書かれているらしい。




〈歌唱魔術〉

 歌うことによって魔力を操り魔法陣を作って攻撃・回復・補助などをこなす。

 初期開始位置:マジクライン帝国 初期武器:なし




 ディスプレイから顔を上げると、小人さんが首をかしげる。


「これでいい?」

「お願いします」


 見つけたことを喜んでいるんだろう。

 どことなく嬉しそうな小人さんの姿になごみながら、私はぺこりと頭を下げた。


「じゃあ、これで準備は完了! 何かあったら、()を見てね!」


 その声が聞こえると同時に、足元がまばゆい光に包まれる。

 顔を上げると、小人さんの笑顔が見えた。

 足元の光はどんどん大きくなっていって、私を包みこんでいく。


「……ありがとうございました」


 小人さんが完全に見えなくなる前に、小さな声でつぶやいた。

 やがて、視界が真っ白に染まる。


「いってらっしゃい、楽しんでね!」


 直後、元気いっぱいな小人さんの声が聞こえた。

 今回の話に出てくるディスプレイはウィンドウのことだったり、虹色の輪っかはペイントソフトにある色相環みたいなやつのことだったりします。美紅が知らないことを書くと美紅が超能力者になってしまうので……。

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