【1−1】単語帳をめくるのは勉強じゃないのか
中学校の昼休みは、とにかくうるさい。
友達と喋りたいのはまだわかるけど、なぜ男子は暴れ回るんだ?
まだ一年生になってすぐだし小学生気分が抜けませーん、みたいな?
まぁ考えるだけ時間の無駄だし……勉強に集中できるわけもないから、私は自分の席で適当に単語帳をめくっていた。
タタタタタタタタ、と足音が近づいてくる。
「美紅ちゃん……っ!」
私の名前を呼ぶ、聞き慣れたかわいい声。
顔をあげると、茶髪メガネ美少女の笑顔が視界いっぱいに広がる。
「わわっ、彩香ちゃん⁉︎」
いつもよりも圧がすごくて、声がうわずった。
距離が近いのはいつものことだけど、今日はなんだか目がギラギラしてる。
「テンション高いね、いいことあったの?」
「うん! それで、えっと、今日うち来てくれる?」
私は帰宅部だし塾にも行ってないから、たぶん大丈夫なはず。
「うーん……ちょっと待って」
だけど一応、手帳を取り出して確かめる。
たまーに美容院とかがあって焦るから、念のため。
美容院はなかったけど、明後日に小テストがあった。
数学だからテスト勉強しなくてもいけるか。
「たぶん行けるよ」
「やった!」
私がうなずくと、彩香ちゃんはくるくる回った。
かわいい。
☆
放課後。
一度家に帰って荷物を置いてから、彩香ちゃんの家へと向かった。
「お邪魔します」
「どーぞどーぞ!」
彩香ちゃんは相変わらずハイテンションだ。
彩香ちゃんらしいかわいい部屋に入ると、異様なものが見えた。
やたらデカい段ボールが、部屋の一角を占めていたのだ。
「……なに、これ」
「よくぞ聞いてくれましたー」
えへんとドヤ顔をして、彩香ちゃんは段ボールを開ける。
そこには、また箱があった。
段ボールじゃなくて、パッケージ的な箱だ。
商品名らしきものがデカデカと書いてある。
「EFOを始めちゃいましょう、セット?」
「そう! EFO、知ってるでしょ?」
「知らないよ?」
「……え?」
彩香ちゃんはそう言ったきり、しばらく固まっていた。パッケージには「話題沸騰!」「トレンド一位!」と書いてあったし、界隈では有名なのかもしれない。
「えーっと、なんて説明すればいいかな……ほらほらここ見て!」
少しあわあわした様子で話し始めた彩香ちゃんは、パッケージの右下をなぞった。そこには「世界初のVRMMOに、第二陣として参加できます!」との文字がある。
「ここに書いてあるとおり、EFOは世界で初めてのVRMMOなの」
「……VRMMOって?」
「え、そこから?」
彩香ちゃんは腕組みをして、うーんとうなる。
「じゃあ、えっと……」
そこからは丁寧に説明してくれた。
超ざっくりまとめると、VRMMOというのは「VR機器を使って視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感を再現し、仮想の異世界に集まって遊ぶゲーム」らしい。
「遊んでいるうちにわかってくると思うから、無理に言葉で理解しなくてもいいと思うよ」
そう言って、彩香ちゃんは説明をしめくくった。
けど、ひとつ気になることがある。
――遊んでいるうちに?
「まさか私、これからその……EFOだっけ。を、遊ぶの?」
EFOは略称です。正式名称は後ほど出てきます。
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それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。