18-7.同。~再び、我が友となる~
~~~~完全に余談だが、銀貨10000枚で金貨一枚だ。まぁ、信用がないと交換できないがね。
マリーがここにいる事情は、特段何かあったわけではなかった。
つまるところ「予言にしたがってふわっと行き先を決めた」らここにいただけ。
偶然というやつである。
前の時どうだったかはわからない。
先の通り、ボクはマリーに、彼女自身のことをいろいろ聞いたことはある。
ただ細かくその来歴を聞いたり、調べたりしたことはなかった。
王国に行ったことはあるとは聞いたが、ひょっとするとこの時期だったのかもなぁ。
パールからの救援はまだなので、魔物をとりあえず一か所に固めておいて、我々はお昼中だ。
食べやすいので、果物やら加工肉を挟んだパンやらを出している。
パンはこの国ではお高めだが、携帯食ではよく使われる。需要がそこに集中していると言ってもいい。
マリーはそれを貪り食っている。
この子は健啖な方ではなく、食い意地が張ってる方。
ちょっと貧しい生活してた期間が長いからね……。
そんなに大量に食える口ではないので、ほっとけばそのうち食べ終わるじゃろう。
ボクはせっせと、黄金果の皮を剝き続けている。
この実、この辺だとえらいやすいみたいなんだよね。おやつにちょうどいい。
そして果物は、残り三人の腹にあっという間に消えていく。
遠慮しろや君ら。朝飯めっちゃ食って来ただろ。
「さて」
マリーのおなかが少し落ち着いたようなので、果物を切り分けながら話しかける。
ストックとミスティ、メリアがこちらを見ている。
マリーが此方を見て、首を傾げた。
「ボクらのことは、あなたが知りたい限りのことを教えます。
すぐ全部聞かなくてもいいです。でも聞かれれば応えます。
あなたは予言の力で、知り得ないことは知ることができてしまう。
隠しても無駄なので、話します。
その上で」
「……なんでしょう」
「特に予定がなければ、御一緒しませんか?
我々は、聖域ドーンを目指しています」
「あっとその……私も、でして。
いいんでしょうか?」
おや、そうだったのか。なんでだろうなぁ。
何を求めたのかはちょっと気になるけど、まぁいいか。
それをマリー自身が、よくわかっていないケースもあるはずだし。
「ええ。それに際して、よければ一つだけ。
マリー。よければボクと、友達になってくれませんか?」
「っ。ハイディ。私と友達になんかなっても、いいことなんて……」
「たくさんありましたよ。
それにボクはね、性根から何から何まで真っ直ぐな人よりも」
メリアを、ミスティを、そして最後にストックを見る。
「手折れても、再び天を目指して、真っ直ぐ立とうとする人が、好きなんです。
もちろん、ボクが信用できないとか、こいつ嫌っていうなら断っていいです。
でもどうか、マリー自身を理由には、しないでほしい」
「……未来の私は、ずいぶんあなたのことを、信頼していたみたいですね」
ラリーアラウンドを止めて。
これでよかったのかと悩むボクに、マリーはその胸の内を吐露してくれたことがある。
彼女は、自分の打算的で暗い性根が嫌いだ。
結構、否定的な感情が渦巻くクチなんだそうだ。
そしてそれでも、真っ直ぐに生きようとしてる人だ。
自分を好きにはなれないけれど。
その生き方を、誇りに思っていると言っていた。
自分とも他人とも、向き合うことを諦めない人だった。
その分疲れちゃうから、人付き合いは苦手みたい。
「ボクがその信頼に答えられてたかは、ちょっと疑問ですけどね。
よく、他人の世話を焼き過ぎだと咎められていましたから」
手を拭くものを探した様子の彼女に、布を差し出す。
受け取って手を拭いた彼女が……右手を差し出した。
「ほんとですね。
その、私でよければ。
よろしく、ハイディ」
「うん。よろしくマリー」
彼女の手をとり、握る。
この人は呪いの子というわけではないし、何か強い希求があるわけでもない。
だから多少長くなろうとも、良好な関係を作ることが、まず先だろう。
事情を話して、味方になってほしいと、一足飛びに迫るものではない。
ちょうど神器車で人が――パールからの救援が来たので。
いったんこの場はお開きとなった。
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