18-6.同。~聖なる国を追われ~
~~~~馬鹿なぁって言いたいのは、たぶんみんなそう。
マリーの意識が明後日に行って、戻ってこない。
んむ。なら興味を引けそうな話題で釣るか。
「ところでマリー。緊急通報したので、後でパールから人が来ます。
そのとき魔物の買取とかをお願いしましょう。
結構な金額になりますよ?」
「お金もらえるんですか!?」
「普通こういうのは、冒険者として依頼を受けたときに、ですけどね。
ボクらはこの通り、この国の冒険者資格を持っているので、ボクらが倒したとして魔物の買取をお願いできます。
その上で、12体中、九体分はお渡ししますね」
「い、いかほどくらいになるのでしょう……」
マリーは結構自重してるらしいが、こう、打算的なところがある。
お金とか、食べ物とか。
苦労してるんだから、それがにじみ出るのは普通だと思うんだけどねぇ。
自分ではそういう自身が、好きではないそうだ。
別に、助けてくれたのだってお礼を期待してのことだろうし、こっちはわかってるからいいんだけど。
本人はそうしておきながら、罪悪感を覚えるらしいんだよね。
「ん……ボク、魔物の買い取り相場は分からんな。王国はちょっと特殊だし。
ミスティ、知ってる?」
「バンシーバードは、素材として使えるところが少ないですからね。
12体で4000くらいじゃないですか?」
「やっす。ああ、脅威度は高いけど、そも生息域に近づかなければいいから……そうなるのか」
「ええ。割に合いませんね」
「4000……3000枚、くらいですか?私が」
「はい。銀貨3000枚くらいでしょうね」
「…………?どうか、では??」
あー……。まぁ額面だけ聞くと驚くか。
空を飛ぶ魔物なんて、国の軍事力が出張るレベルなんだから、報酬でこの額じゃ安いんだけど。
えーっと例のゲームの配信元の国の通貨で考えると。
だいたい銅貨1枚で100円……くらいなのかな?庶民は銅貨があれば経済が回る。
銅貨100枚で銀貨。ボクら四人で行ったお高めのビュッフェが、ちょうど四人で銀貨1枚だった。
銀貨の貨幣価値自体は、その円という通貨の基準にだいたい近いけど、王国は食べ物めっちゃ安いからな。
で、半島の通貨はだいたい金銀銅で統一。ただ同じ通貨というわけではない。
デザインもだが、それぞれの金属含有量が微妙に違う。
ただ含有量を測定する魔道具が普及していて、それで価値換算をするため、その価値の差を意識することは少ない。
特に王国内なら、商売だって契約なので、精霊が介在する。
変な通貨使ったら、そこで普通に引っかかるのだ。だから王国内の商取引は楽だ。
王国外の場合なら、測定魔道具を使ってやり取りする。帝国通貨なんて、帝国内でも金属含有量が一定しないしね。
「眷属じゃないんですから。魔物の買取ならそんなものです。
聖国は魔物が出ないから、そんな話を聞かないのでしょうけど……そうですね。
この規模だと、高位法術師でも一人では危ないはずですよ」
「ぎんか。こんな簡単に倒せるのに???」
「簡単ではありません。神器の遠隔起動ができるのは、半島ではあなただけです」
「そうだったんですか!?」
ん……まぁ聞かされてはいまいな。
ちなみに、こんなびっくり人間が聖国から放逐されたのは、役に立たないからである。
聖国は魔物が出ない。対魔物を考える必要がない。
そしてマリーは、魔力流の遠隔起動ができるだけ。オーバードライブは下手っぴ。
さっきやってたのは、マリー自身の超過駆動?みたいなもの。
個別の神器のオーバードライブも負担なくさせられるんだけど、これが狙ったところにまったく当たらない。
出るのは出るから、投げて刺して起動とかするんだけど。
おかげで神器を摩耗させる戦術魔導が、もったいない使われ方をされてしまう。
それでも、神器のオーバードライブの使用感がもっとよければ、重宝されたんだろうけど。
彼女の特殊能力は、どれだけ鍛えても戦術級にも達さないから、聖国では必要とされないのだ。
王国だったら貴族がノータイムで養子に取るレベルなんだけどね。帝国や共和国でも同じだ。
その辺に売られなかったのは……ある意味、彼女を育てた人たちの温情ということだろう。
国元には事情があっていさせてはやれないが、その分自由を与えたと。
マリーは言っちゃなんだが、人の中より、荒野の方が気楽に生きられるクチだ。
少なくとも前の時は、マリーがこの扱いを嘆いている様子は、まったくなかった。
むしろ感謝すらしているふうだった。
きっと、これでよかったんだろう。
「はい。えーっと……私は、あなた自身からあなた絡みのことを多く聞いています。
だから少しずつですが、その辺りは話してあげますよ。
自身の可能性を聞くだけなら、負担は大きくないはずです」
「ありがとう、ハイディ。でもなんでそこまで……」
「大事な友達、だったからです。
今からそうなってもいいですよ?」
「あ、いえ、私なんて……」
「そういうところが、ほっとけなかったんです。
ボク、世話焼きなので。
まずはまぁ……今度こそ、お昼にしましょうか」
次投稿をもって、本話は完了です。




