18-5.同。~そして予言の子~
~~~~相変わらず、魔物に対しては本当に鮮やかだね。マリー。
残敵がいないか注意しながら、ビリオンを雑木林の方へ進める。
窓を開け……ん?
「マリいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
なぜおぬしがここにいる!?」
メリアが車の外に出て、皇女にあるまじきお顔でその子を問い詰めている。
「は?え?なんですかその言い方は!
助けてもらっておいて、そんな。保護者の方はどんな教育を……あれ?」
もっともだが、ぶっちゃけ君の方が口の利き方気を付けたほうが良い方だからな?
今はまだ、メリアは皇女だし。
平民服で、判断つかないだろうけど。
一方のマリーは、フードをとってメリアに相対している。
ホワイトブロンドの髪、目は赤……というより橙かな。明るい色。
背はミスティより高い。全体の凹凸もあるほう。今確か14……だな。誕生日、ボクの後のはずだ。
顔は素朴な感じで、パーツはそれぞれ明るい印象なんだよね。
でも本人は言動以上に、暗い印象だったりする。ちょっと猫背で、おどおどしてるんだよね。
その分、笑わせるとかわいい。ダリアは怒らせた方が可愛いと言っていた。趣味が合わない。
いざ口を開いたり、行動すると、とてもこう積極的な人なんだけどな。
ピンチの時ほど思いっきりがよくって、頼りになる。
「私の名前を知ってる!?もしやあなたが、あなたこそが予言の勇者!!」
あー。
そういえばこの子、聖国追い出されるとき、使命を受けてたんだっけ。
「本物の勇者を見つけよ。魔を見かけたら倒せ」って。
ふわっとした使命だよなぁ。
それで、本物の勇者とやらは彼女自身もさっぱりわからんらしくて。
こういう、知り得ないことを知ってそうな人がそうじゃないか、と当たりをつける。
「馬鹿なああああああああああああああああああああ!!!!」
言うと思ったよメリア。気持ちはとてもよくわかる。
とりあえず、地面をだんだん叩いてる彼女に代わって、話した方がよさそうだ。
ミスティが出てこないのは、マリーが「呪いの子」である可能性を考えていたからだろうし。
近くで神器車を止めて、降りる。
マリーがこっち……というかサンライトビリオンを見ている。
彼女もクルマ乗りだから、フレームが独特なこの神器車は気になるんだろうな。
彼女がクルマに乗り始めるのは、もっと先の話だ。
今ごろは確か、金欠でクルマ買うどころではなかったはず。
しかし、何でこの時期に王国に来てるんだろう。
「初めまして。ハイディと申します」
「メアリーです。初めまして」
「聖国の『予言の子』メアリーさんで合ってますね?」
「……それはご両親にでもお聞きになったのでしょうか?」
「いいえ。未来のあなたに聞きました。マリー」
「みら……呪いの子!?」
やっぱ呪いの子って、ポピュラーな概念なんやな?
マリーまで知っているとは。あれでも、ミスティも知ってたっけ。
そういやマリーは今14だし……前の時も年上なだけあって、ボクらより物知りだったしなぁ。
「そこで地面をだんだんしてる子もそうですよ。
あと、あなたの神器を回収してるあっちの子もそうです」
「三人も!?」
マリーが黄色い神器車の方を振り返る。
運転席の窓がこちらを向いて、開いていて……ミスティが首を振っていた。
「その人は違いますからご安心を。
その上で、あっちの子は違いますが、そこのメリアと、ボクはあなたの知り合いでした。
その様子だと、あなたは覚えていないようですが――それであまり見ないように」
「!?」
「あなた自身に、予言とは知り得ぬものを知るものだ、と聞いています。
単に未来を知るものではないと。
ボクらとの未来は、多くのことに関連します。
負担が大きいから、おやめなさい」
彼女の持つ、謎原理の予言の力。
先がわかるどころではない。過去でもなんでもわかる。
えっと……検索機能みたいなものなんだよ。オンラインの。
ただ、望む答えを見つけてくるのは、質問者の知能にだいぶ関わってくる。
そして見つかるまで問い続けるのは、結構負担が大きい。
多くの答えが出てしまった場合も、単純に疲労が大きいと聞いた。
うっかり使って、数日寝込んだこともあるそうな。
「お気遣い、感謝いたします。ハイディ、さん」
「ハイディで結構です。ボク平民ですしね。
マリー、と呼んでも?」
「はい、ぜひ」
だろうな。オーナーにマリーって名づけられたとき、すごい喜んでいた。
この子は聖国でいろいろあったので、たぶん世界の真実に近いところを予言の力でいろいろ知ってる。
その能力の関係上、そのものを理解することはできないはずだけど。
荒唐無稽だし、人には言わないようにしてるんだろうけどね。
そういった秘密を抱える反動なのか、この人は結構なおしゃべりだ。
特に自分のしてきた旅暮らしのこととかを、ボクにも結構話してくれた。
後年、神器かついで一人クルマで荒野を渡ったのは、マリーの影響が大きいと思う。
「ちなみにそこで馬鹿なぁ!って言ってた子は、皇女です」
「…………こう、じょ、さま?」
「はい。今神器持ってきたこの子は、王国の侯爵令嬢です。
紹介します、ストックです」
「初めまして、ストックだ。私もマリーと呼んでも?」
「はい、え、ええ。えぇ~……」
「あとそちらはミスティ。同じく、王国の公爵令嬢です」
「令嬢って歳でもないですけどね。ミスティと申します」
「あ、これはご丁寧に。マリーです」
マリーは情報処理能力をオーバーしたのか、ポカーンとしている。
まぁ気持ちは分かる。
令嬢の群れが、供も連れずに何してるんだろうね?
次の投稿に続きます。




