17-4.同。~では、おいしい昼食を食べに行こう~
~~~~神器車は戦うものじゃなくて、身を守るものなんだけどなぁ……?なぜこうなったし。
「じゃ、あとは当面の車体魔石を選ぼうか。それで終わりだし」
「ではこれで!!」
「……躊躇いなく一番高いのにしたな。ま、出してあげるよ」
ミスティが、もらってきた見積もり紙面から、一番高い奴を指した。
そんなやつでも、豚半分にもならないのはびっくりだが。
「さすがハイディ太っ腹!でもいいんですか?私も出せますよ?」
「いいんだよ。ストック、この魔石ならばらして再利用できるだろ?」
「ああ。一つ下のグレードなら無理だったが、これは予定工材の一つだ。
今買っておくのは、いいだろう」
よし。なら決まりだな。
「ん。じゃあ注文に行って、そのままお昼食べに行こうか」
「私甘いのがいいです!」
「昼飯だっつってんだろ。
ストック、ビュッフェスタイルのとこ、どっかにない?
できれば果物だけじゃなくて、菓子まで出すところ」
「北東街寄りになるが、まだ行ってないとこがあるぞ。
菓子は連邦寄りだが、まだ食べ飽きてないか?」
さすがストック。
こっちの意図を汲んでくれたかな?
王国の飲食店には、食べ放題形式の店が割とある。
……食材、余りがちだからね。調達・調理コストを下げたこういう店は多い。
そしてマッシュさえ変なのださなければ、だいたい流行る。
なお、甘味は果物で済ませるところが多い。
菓子に調理して出しているところは、ちょっとお高くなる。
果物じゃない、麦菓子を出すところは、さらに高い。連邦式はこのレベルとなる。
「いいや、まだまだ。
じゃあそこにしようか。店を潰さない程度に、頂こう」
ボクとストックとメリアは、自分でも引くほどよく食べる。
ミスティはそうではないが……甘いモノだけは自身の体積以上に食べる。
そしてメリアはあれで甘いものも好むので、よくミスティと二人で大量に甘味を食べに行っていた。
ただボクの知る範疇では、王都もしくは、王国外が多かったはずだ。
だからきっと、気に入ってくれる。
「え、パールって連邦のお菓子食べられるんですか!?」
「パールとシャドウ、あとはファイア領でも食べられるぞ。
連邦の麦を使うから、少々高いのが難点だ」
ほら、食いついた。
ミスティはすでに成人だが、18まで学園にいて、その後二年モンストンにいる。
昨晩の説明を踏まえるなら、どの周回でもだいたい同じだろう。
そして王都近郊だと、西方の連邦じゃなくて、王国の果実菓子か、東方の砂糖菓子が流行りだ。
だから彼女がガンガン冒険してるだろう頃には、連邦の菓子はもう食べられないのだ。
イスターン連邦は、その頃にはとっくにない。
食べようとした場合、かなりの値になるか、残念な品になっているかのどちらか。
前の時間で、ミスティが連邦菓子へのあこがれを語っていたことがあったのだよ。
食べたけりゃあ、それこそいつでも食べられたはずなんだけどねぇ。
ずっと、メリアのことのほうが気がかりだったんじゃないかな。
「ミスティ。せっかくだから私が連邦式の作法を教えてやろう。
あと、後日茶会もしようか。もちろん、茶は淹れてやる」
ミスティが卒倒しそうなくらい茹だった。
全力でこくこく頷いている。
メリアがそれを、とても幸せそうに見ている。
「今度は何をしたんだ、ハイディ」
小声でストックが聞いてきた。その囁き声はやめて。しげきがおつよい。
それにしても、なんでボクが何かしたって思ったのさ。
「二人は強く想い合っているようだったが、かなり緊張していた。
昨日は、ああも自然ではなかった」
心まで読まないでほしい。そんなわかりやすい顔をしてたかな。
「ミスティと改めて友達になっただけだよ。
友達なら、悩み事くらい聞くでしょ?」
「そうか。先を越されてしまったな」
「ドーンでタンクができるころには、絶対懐かれてるよ、君」
「それは半端なものは作れないな。
ハイディ、手伝ってくれ」
「予算だけとってくれれば、良いものにしてやるよ。
ボクの研究が火を吹くぜ」
ストックが吹いた。
「燃やしちゃ、だめ、だろ」
こんなんでいいとか、たまに君は笑いの沸点が緩めじゃのう。
「おっと確かに。
ボクらも、行こうか」
二人がいつの間にか、部屋のドアの外にいる。
ストックに手を差し出して。
彼女がボクの手をとって。
せっかくだから、人目につくまでは繋いでおこうかな。
……こら。指絡めんなし。
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