17-3.同。~新たなクルマの概念、生まれる~
~~~~ボクのように慣れた者には意味がある。けどどう考えても需要はない。
「おいハイディ。神器は使わないんじゃないのか?」
「メリア。ボクは神器車は乗ってるでしょ?あれと同じ機構だから、魔力なしだと結晶化しないだよ」
「え、でもオーバードライブでしょう?あれはさすがにするのでは?」
「そもそも、そこを何とかしたくて考えていたやつでな。
超過駆動による結晶化促進を、通常の神器使用程度まで落とすのが狙いだったんだ。
結局これも単純だった。車載神器をオーバードライブしても、結晶化しないだろう?」
「ああ、間に挟む魔結晶を増やすんですか?」
「そういうことだ。元より、聖域で行っているそういう分散機構からの着想だからな」
魔結晶に魔結晶を制御させて、一つずつの負担を減らす、みたいな感じだ。
聖域では人を増やしてこれをやっているが、神器車および車載神器もこれと同じ。
神器車は核結晶と、運転手の魔結晶の共鳴で動かしている。だから負担が少ない。
車載神器はさらに、核結晶からの制御になるので、これをオーバードライブさせても運転手に負担が来ない。
ミスティが車両戦に拘るのも、実はこの辺りから来ている。
その代わり、車載神器および神器車の魔石の負担が大きいので、よく壊れ、金欠になっていた。
そりゃ接近戦苦手で、運転技術が飛びぬけてるわけでもないのに、車両戦が簡単に成立するわけないからね……。
結局切り札の超過駆動を切っては、困ったことになるという。
なお神器超過駆動はかなりの出力を保証してくれるので、貴族魔導師並みの威力が出る。
「車載神器側をこの新機構のものにしていいなら、ついでに車体も考えていたものでやってみたい。
まぁドーンについてからになるが。お母さまに掛け合って、予算と場所をいただく」
「ん?穴開けないの?」
「ああ。後から開けるくらいなら、最初っから組み込んで作ればいいだろう」
「それは総魔石外装じゃなくなるから、ダメなんじゃない?」
神器車、神器船は外装が魔石で囲われてないとダメ、という制限がある。
神器はいいんだけど、クルマや船はそうしないと意図したとおりに外側を魔力流が回らないのだ。
魔石自体が使われてればいいので、鉄や鋼を混ぜるのはOKだけど。
「珍しく頭が固いな、ハイディ。二つを足してみろ」
「二つ……え、ストック。神器で神器車を作るんですか?」
「は?……あ」
一瞬、何言ってんだミスティと思ったが。
そうか。魔石ベースの神器を大量に用意して。
それを連結させて車体にするのか。
例の負担分散機構の構想とも合致する。
必要な予算は……膨らんだようにしか見えないが。
「そうだ。それなら耐久性と機構が両立する。
しかも、負担の分散能力も飛躍的に上昇し、超過駆動の連発もしやすい」
「…………すでに神器車ってより、戦車とやらのようだな」
メリアがどこで想像が繋がったのか、ぽつりとそんなことを言った。
そういやこやつも、地球の知識がある。
こちらには、戦闘専門の神器車というものはまだ存在していない。
「さしずめ神器車ではなく、神器戦車か。
確かに車両戦が主眼のものだ、そのコンセプトでいいだろう」
「おおおおおおお!漲ってきましたよ!!」
…………あれ?
地球にある誰でも使える個人携行火力の銃とか爆弾とか大砲じゃなくて、戦車が先にできる??
いやまぁ、戦車って発想自体は、チャリオットだっけ?そういう古代戦車があるから、先ではあるけど。
…………まぁいいか。
神器は、魔物に対する必殺性が環境を変えたわけで、対人兵器としてはまったく価値がない。
この機構は、魔導に対して非常に脆弱だからね。たぶん戦車にしても、王国魔導師相手だと普通に負ける。
相手は戦略爆撃機とか、超威力の高射砲とか、そういうのだからね……。
戦車くらいなら、まだ対魔物の状況が変わるくらいか。
開発した結果、万が一帝国に流れても、問題なかろ。
次投稿をもって、本話は完了です。




