表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/518

16-4.同。~面倒臭い女は、己の性を告白する~

~~~~君がずっとボクを見ていてくれるから。ついにボクは……君の方を、向いてしまった。


「ボクはね、ミスティ。そのためにストックの側にべったりいるつもりだよ。


 その上で自分にも、彼女にも、互いを選ぶという選択を迫り続ける」



 一つは、そばに居続けること。物理的に。その努力は怠ってはならないと思う。


 もう一つは、相手といたいという意思を、選択の連続で作り続けること。



「そんなに愛をささやきあってるんですか……」


「いや?」


「は?」



 まったくやってないのも確かだけど、まぁそういう話ではなく。



「それじゃ現状確認だろ。選択じゃない」



 ジョッキの中身をあおる。


 気持ちの確認は、大変結構。ただその先が必要だろう。



 好きだからそばにいて、と言って。それを他人が聞いてくれるだろうか。


 好きだからそばにいる、と思って。それが自分を鼓舞してくれるだろうか。


 好きだからそばにいたい、ならどうすればいい?そう自ら問うて答えを出してこそ、先が続くのではなかろうか。



「続けなければならないのは、選択。配った札から、互いだけを選び続ける」



 まだ戸惑いは抜けないけれど。


 君を受け入れ、思う気持ちに、間違いがない以上。


 それがどんなに、ボクの在り様に逆らうものだろうとも。



 ボクは君を選び続けるよ。ストック。



「ふーん。それ、相手に自分を選択させるのに、どんないかさまをするんですか?」



 そこで人を見て、にやりとするなし。



「当然、ストックに配る札の全部がボクなら、ボクしか見ないだろ?」


「ひどい手ですね。私好みですが。


 でも互いしか見えない状況にしてしまっては、依存し合ってしまうのでは?」



 おや、思ってもみない方向に話が跳んだ。



「んー……依存の話は難しいが、程度問題だしなぁ。


 そも、パートナーの選択を埋め尽くすだけで、閉じ込めたりするわけじゃないんだそ?」


「なぁんだ。ハイディ、もっとえぐい趣味かと思いました」



 なんやとこら。どこ見てそう思ったし。


 まったく。じゃあお望み通り、えぐいこと言ったらぁ。



「ボクは、ストックがいなければ生きて行くつもりはない。


 ストックもまたそうだと、様子を見ていて確信を抱いている。


 ボクらなんて、そんな程度だよ」


「程度、ではないでしょう……」



 引いてら。望みの注文だろうに。



「君だって、その点はどうなんだ?


 精霊に罰せられそう、なんだろう?


 メリア五歳だぞ。その執着の仕方は、依存ではないのか?」



 エールをミスティがあおる。


 そして給仕の人を呼び止めて、果実水を頼んだ。



「いいえ。もしそれが依存なら、私は今ここでお酒を飲んでいません。


 彼女に依存しているなら……国の外に浚って。


 もう戻れなくてもいいからと、求めたでしょう」


「ボクだってそうだ。互いの関係を壊したくないから、ここに来てるんだよ」


「手は出さないのに?」



 さっきの寝床の自分を、少し思い出す。



「誘惑しそうなんだよ」



 ミスティがむせた。なんだよ。


 幼児の体じゃ、それは無理だってか?


 まぁボクも、常識で考えりゃそうだと思うよ。



 でもボクはその気なら、手段を尽くしてストックを篭絡して見せるだろう。



「そしてそうすれば、ストックはすぐにでも押し倒すと思うよ?


 でもそれはダメ。ボクの望みを、彼女が叶えるという形は納得しない。


 彼女がボクを望むことに、ボクは魅入られてるんだよ」



 一つ一つ、思い出し、整理していく。



 ストックの言によれば。


 ボクが――閃光のように、彼女の人生に割って入って止めたことが、彼女を魅了している。


 ボクの隣でボクの生き様を見るストックは、確かに本当に幸せそうだ。



 ボクが同じように、ストックの何かに魅入られたとしたら。


 コンクパールにやってきた、彼女の炎のような情熱の瞳だ。


 今も時折、同じ目でボクを見る。ボクを求める、綺麗な瞳。



 あの目が、たまらない。



 まぁそれとボクを陥落させた何かは、また違うと思うんだけどねぇ。



「最っ高にめんどくさい女ですね、ハイディ」


「たぶんだけど、これがストック好みなんだよ。自分でも信じられんが。


 君らみたいに、重たいけど素直な関係じゃないんだよ」


「んむ、私はともかく、メリアもですか……?」


「あの子は飾らない態度だけど、主張はすごい控えめだ。


 そのメリアが君の手をつないで離さないとか、よっぽどだよ。


 人目に晒されてもそうしてたんだからね。


 君のこと、絶対誰にも渡さないって思ってるよ」



 酔っても赤くならないミスティが、茹でられたようになってる。


 ミスティは冒険家気質が強いが、メリアはあれでちゃんと皇女なのだ。


 人前ではきちんと猫を被る。最近外でもかなり砕けてるのは、平民服と皇女辞める宣言のせいだろうな。



「何をしたらあの皇女を、あんなにも蕩かせるのさ?ミスティ」


「私は……」



 目の前の果実水のグラスを、ミスティが弄んでいる。


 言いづらそうというより、言葉を選んでいるようだ。



「何も、しなかったんです」

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ