16-2.同。~自身の性に向き合って~
~~~~君はお酒は弱いけど、前もこうして語らうことが多かった。それを思い出す。
ボクはやっぱり……同性は無理だわ。興味が沸かない。
よく鍛えてる人とかは見て関心を抱くが、普通の女性の裸体は、別に何とも。
そしてこれは想像しかできていないが、過度で緊密な接触には、嫌悪感を覚える方だ。
いや、想像の段階ですごい怖気だったから、あれはダメだ。
男性からの接触の中でも、トップクラスに嫌だったやつと同レベルだ。
実際に味わった悪寒との比較だから、そこを基準に誤差を想定すればいいはず。
となると……どう考えても、「無理」の判定が覆らないな。
「あー……。なのに一緒にいるんですか?」
……………………。
本当に。ストックのことは、どうして大丈夫なんだろう。
ジョッキを傾け、その中身を見ながら、少し思い起こし、考える。
お風呂で見た彼女は、綺麗だった。正直、ドキドキした。
まだ四歳の体で、どこに見どころがあったのか全然わからないんだけど。
肌とか髪は綺麗だけど、それは前から知ってるし。
昼のデートは……あんなに他人が自分のそばに、いたことがなくて。
それが、嫌じゃなくて。嬉しくて。幸せ、で。
ずっとあのままがよかった。人目さえなければ……その。もっと。
だからさっき寝床ではこう、本当にボクの情緒が炸裂しそうで。
危なかった。押し倒すとか、簡単に言うなし。
それは、怖い。
嫌われたくない。彼女がボクを嫌いになるなんて、思ってもいないけど。
でも怖くて、手なんて出せない。
…………逆。
ストックに、求められるなら、きっと……。
……………………。
やめだやめ。これはさすがに回答拒否だ。
ジョッキの中身を少し喉に流し込んでから、ミスティに向き直る。
「そっちこそ。ボクの知る限り、ミスティもメリアもストレートだ」
「……合っています。でも、そういう問題じゃないんです」
まぁそうだろうけど……。
その呟きが妙に嬉しそうで。ちょっと気になる。
この二人、男の趣味をあーだこーだときゃいきゃい語り合ってた気がするんだが。
ボクは結構悩んでるんだが、そういうのないんだろうか?
「後学のために聞きたいんだけど、性欲沸かないと大変じゃないの?」
性愛の対象とは、欲の対象、興味の対象、らしい。
それが好意を持つかどうかに結び付きやすい。
あくまでボクの聞いた範囲の話でだが。ボクはその辺、悩んだこともなかったし。
本当はもっと複雑で、分類も難しいんだとかなんとか。
恋愛と性愛で対象が違う人もいるとか、そういう。
そこの自認の境を何かで超越し、先に好意が芽生えることもあるのかもしれない。
好意、恋愛感情だけで、きちんと結ばれることも、あるのかもしれない。
だがあれは、互いの絆と心で乗り切れってのは、ちょっと酷な代物だろう。
そういう嫌悪感だったぞ。少なくともボクにとっては。
自認が異性愛者であるなら、同性を受け入れるのは容易ではないと感じる。
「沸かなかったら私、ここにいないんですけど」
だが、少なくともミスティは違うようだ。
そういや精霊に罰せられる心配をしてたんだから、そりゃそうか。
でもそれは同性愛者っていうんじゃないの?という気もするが。
長い時を生きているこの人が、いまさら自分のことを間違えたりはしないか。
性の意識や自認と、メリアへの思いや関係性が、剥離しているんだろうか。
ボクが、ストックを、そう思うように?
余談だが。
この話題については今後も、今の我々の年齢関係については、友のためにちょっと忘れておく。
それを思い出すと、性欲沸く発言が別の問題を醸し出してしまう。
「ああ、そうか……。何があってそうなるんだか」
「さぁ?私は自分ではよくわかりません。
ただ何度繰り返しても、メリアのことしか考えられなかっただけで」
なるほど。ミスティにとっては、メリアだけ本当に特別と。
そこはまぁ……共感できる。
「重たい女だねぇ。気持ちはよくわかるが」
「ハイディもそうなんです?そっちこそ何があってそうなったんでしょう?」
ボク、ねぇ……。
そうだな。話ながら自分の気持ちを、振り返ってみようか。
次の投稿に続きます。




