16.パール冒険者ギルドにて。深夜。再び友情を誓う。
――――生々しい話をノンアルコールでするのは、そろそろ止めよう。もたれる。
(注意喚起)
本話各部分は、少々センシティブな話題にハイディが言及します。
苦手な方はご注意ください。
今後は。
まず、パールで車両を見繕う。ミスティのものだ。
結局、モンストンでは買わず、すぐパールに来ていたのだそうだ。
準備を整えたら、ドーンに向かう。
メリアを無事精霊に合わせるのが、短期目標だ。
その後はマリーをミスティが探す。
ダリアには折を見てボクらが会いに行く。
キリエとフィリアルには手紙を出す。
さらに、クレッセントを建造する魔都の貴族『オーナー』に接触する。
この人、名前がないんだよね……。調べてもわからんかった。
魔都の貴族で、女性だってことくらいしか。あとは容姿とかかな。
ボクら八人と、オーナー。
必要最低限の協力者を集めることが、中期目標となる。
その上で神主を始めとした神殿勢力を退けつつ、地上の魔界化に着手。
これは真っ当に、被害を出さない手段で行う。
そのため、王国貴族を中心に協力を呼び掛けることにもなるだろう。
螺旋循環の消滅、それを邪魔する勢力……役を押し付ける者たちの一掃。
これが長期目標となる。
で。明日は神器車の手配等に、パール南東側を中心に回ろうとなって。
メリアが力尽きたので、お開きになった。
ミスティは同じベッドに引きずり込まれた。
ストックも疲労が嵩んだのか、ボクをひしっと抱いて寝た。
……が。ボクは寝れなかった。
なんとかして抜け出し、遅い時間だが食堂まで出てきている。
実はちょっと物足りなかったので、エールレッドとマッシュを摂取中だ。
ぼんやりと、先ほどのことを考えている。
前の時のミスティの言動――あいつたまに、その時には知り得ないことを話してた――もあったとはいえ。
我ながら、証拠もない荒唐無稽な話をしたもんだ。
科学研究に携わった者として、あるまじきよの。
各々の体験自体は受け入れる。証言も採用しよう。
けど検証されていないことは、あまり事実としては話したくないものだ。
せめて魔結晶が魔素に戻る工程が、観測できてればいいんだけどねぇ。
最低数千年単位とみられるため、何らかのブレイクスルーを経ないと、究明できまい。
「ほんと、良く信じてくれたもんだよね。
エール飲む?ミスティ」
「あー……はい、一杯だけ」
食堂に入ってきたミスティに声をかけた。
ミスティも眠れなかったようだ。
ボクと同様、寝巻から着替えてここまでやってきたみたい。
給仕の人にエールと、エールレッドのおかわりを頼む。
「寝れなかったんだ?」
「そちらこそ」
ミスティが椅子を引いて座った。
多少別のものも頼んでいたので、勧める。彼女は切った果実の皿を引き寄せた。
相変わらず甘いものは好きだな?
「昼間さ……デートしてたんだよ。
ここの観光小舟で。それ思い出しちゃって」
「押し倒しちゃえばいいのでは?
罰もないんですから」
すごいこと言いやがった。吹かなかったボク、偉いぞ。
「ボクらまだ四歳やからな?ダメでしょ?」
「こんな四歳児はいません。何に?」
給仕の方が置いて行ったジョッキを掲げて、ミスティが尋ねる。
ボクもジョッキを持った。
「新たな友情に、とかどうかね?」
ミスティがちょっと驚いた顔をしている。
忘れそうになるが、この人はボクらが体験した時間を覚えていない。
だからこそ。
「ボクは前のことは忘れて、改めて君と友達になりたいんだ。
どうかな?」
「ええ、是非に。では小さな友との、新たな友情に」
「「乾杯」」
ジョッキを、かち合わせた。
「それでだね。そもそも、ボクは異性愛者だ。
押し倒したりしないよ」
「え、ストレートなんですか!?信じられません……。
まさかストックも?」
おいストックはともかく、何でボクがそういわれた。
どういう印象だったんだ。
「ストックは同性愛者だよ?よく女の人を目で追ってるし。
さっき大浴場に一緒に行ったときは、だいぶ大変そうだった」
露骨には見てなかったが、目移りはしてたなぁ。いかんでしょ。
本人も困ってたし、周りにも道義的によくないし、公衆浴場は以降避けるようにしておこう。
それから鼻血吹きそうなのは、ちょっとどうかと思うよ侯爵令嬢。
それもボクを見て。
次の投稿に続きます。




