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15-7.同。~最後に、共に戦う誓いを~

~~~~ボクは知らないことを知る力は持たないが、見聞きしたものは全部覚えてる。忘れられない。


 だいぶ雑談に流れてきたが、いっそ気になることは聞いておくか。



「そういやミスティがメリアの名前を知ったのは、その結晶のせい?


 前の人生のとき、普通にわかってたらこうはならなかった気がするし」


「あ、はい。この結晶を持って死んだときに、知りました」



 なんだそのタイミングは。何があったし。



「……ハイディ、もしかして私たちも過去にいた、ということか?」



 ああ、ボクとストックが取り込んだ結晶か。赤と青の。


 この辺は、推測しかできないが。



「たぶんね。ただ『ウィスタリア』や『リィンジア』じゃなかったんだと思う。


 同じ魂が同じ体に入ったら、前回のことを思い出す、という塩梅じゃないかなぁ。


 で、死んだ後に残った結晶が色付きだと、同じ魂ならそれが共鳴する」



 おそらくだか。


 ひとの身は魔素の塊のようなものだから、自然に還ればその工程で魔力になり……結晶化もする。


 その時に、色付きの石が生まれたりするんではなかろうか。



 そういえば。


 全然違う話だけど、ちょっと気になってたこと思い出した。


 ついでに聞いておこう。



「メリア、前の時間の時も林までは来たんでしょ?


 そのあとひょっとして帝都に戻されたりした?」


「ああ、したした。よくわかったな?」


「ボクらがいないんだから、狼にがぶってやられて緊急転送したかなって。


 皇女なら管理権限を一つくらいは登録させてるでしょ」


「あっ。同じメリアでも、パールに来ないこともあったんですか!?」



 そういうこった。


 肉体と魂が同じでも、まったく異なる外的要因があれば、結果が違う。


 この二人が前の時間で会っていながら、本当の意味で再会できていなかったのは、これが原因だろう。



「ミスティ、前にメリアといたときって神器船あった?」


「…………ありませんでした。神器はかなり最近の時代の発明です」


「なるほど、だから螺旋か。毎回完全に同じではなく、発展している。


 その結果、違う展開になることもあるのか」


「みたい。危なかったねミスティ。誘拐される皇女=メリアだから、毎回張ってたんでしょ?」



 でなくば、この冒険中毒が間引きしながら二年も大人しくしているはずがない。


 誘拐事件や……その先の「メリア」との邂逅機会のために、準備していたのだろう。



「ほんとですね……。ハイディとストックがいてくれなかったらと思うと」


「まぁ前回は船まで会えなかったんじゃない?同じことになったろうね。


 で、メリアは自分からは名乗れないし。


 ミスティは船に来た『カレン』をメリアだとは断定できなかった」


「……でしょうね」



 どれだけ繰り返したのかはわからないが。


 幾度かは傷ついたこともあるのだろう。


 おいそれと、とりあえず名前を呼んだりはできなかったのだろうな。



「さて。ボクの話は、だいたいここまでだが。


 力を貸してくれるかね?ミスティ」


「ええ。是非に」


「メリア」


「やってやるとも」



 ふむ。大変結構。



「……私には聞かないのか?」



 別に仲間外れにするんじゃないから、拗ねるなしストック。


 君、たまにかわいいな。



「君がボクから離れるわけないだろ?


 それとも、愛想でも尽きたか?」


「まさか。変わらずいい女で、安心した」



 そりゃあ何よりだが、急に言わないでくれますかね。


 顔が火照りそうなので、ボトルの中身を一気に飲み干し――テーブルに置く。



「今後の大方針だ。


 結晶による螺旋循環を止めるため、地上に穏便に魔界を築く。


 それに敵対してくる戦力は撃退する。役を押し付ける者も退治する。


 味方は可能な限り引き入れる。


 神主及び、後期クレッセント、神殿勢力は敵。


 クレッセント創設者周りは味方」



 ミスティとストックが頷く。



 敵対勢力に関しては、今のところは「こちらの指針と衝突するから」敵扱いだ。


 役を押し付ける奴がいるのは確かなのだが……ちょっと気になることもある。


 今回の誘拐事件がなければ、黒幕と目してよかったんだけどね。



 色分けとしては味方でも無関係でもなく、敵で間違いない。


 仔細はゆっくり考えればいいだろう。



「味方なら、まだおるだろう」


「君、招集に拘るな?割とみんなのこと好きか」


「おうよ。好ましく、頼りになる友だ」



 ただの友達なら、ここで招集しようとはならないんだけどね……。



 大人は頼りになる。彼らは己の領分を果たしてくれる。


 ただ彼らが責任を持つのは、自身の掲げるテーマに対してだけだ。


 その範疇のことは、頼めばやってくれる。対価を払えばなおのことで、利益があればさらにだ。



 でも、積極的にこちらを手助けしたり、協力したりしてくれることは、ない。


 そうしてくる場合は言い方は悪いが、下心がある。



 だがボクら7人は、ちょっとそういった範疇にはない者たちだった。


 自分のルールと能力の範囲なら、普通に人に手を差し伸べる。


 そこに打算や躊躇いがない。



 ボクは度の過ぎた世話焼きで、キリエは面倒見がいい。


 フィリねぇは人が困ってたらほっとけないクチで、マリーも辛そうにしてる人に寄りそう性質だ。


 ダリアは恩を受けたら、それがどんなに小さくても必ず報いる人だった。



 そしてミスティは非常に義理堅く、引き受けたことは200%やり遂げてくれる人で。


 メリアはいつもひっそりと人に気を回し、心と手を尽くしてくれる。



 だからそれぞれ、いろいろと抱え込むことが多かったし、それを互いに手伝うことも少なくなかった。


 そう組んだわけではなかったけど、いつしかチームのようになっていた。



 前の時間のこと、覚えていようといまいと……その気質はおそらく、変わらないだろう。


 であれば、メリアが期待を持つ気持ちも、わかろうというものだ。


 ボクとしても、彼女たちが力を貸してくれれば、心強い。



「わかった。キリエとフィリねぇ……エリアル様にもなんとか伝えよう。


 ダリアはそうだな。直接どっかのタイミングでイスターンに行くか。


 あの人、13になる歳から学園行くはずだから、ここ二年くらいなら捕まえられる」


「マリーはダメそうか?」


「あの子は聖国出だけど、聖国にいる間は『予言の子』として軟禁染みた生活させられてる。


 今15くらいだから、そろそろ活動を開始するだろうけど……どこに行くか予想がつかない。


 イスターン滅亡前に、あそこにいたらしいのはわかってるんだけど。


 だから……」



 ミスティを見る。


 ボクがこの人を「探偵」と呼んだのは、伊達や酔狂ではない。


 人探しの、プロなんだ。



 前のときは、逃げてしまった職員を探してもらった。


 私物や結構な額の金銭を置いて行ってしまった人たちが、いたんだ。


 組織の信用をこれ以上落とさぬため、金をかけてでもやるべきだと思って、ミスティを頼った。



 ミスティは、ボクが捜索をお願いした人、全員を見つけてくれた。



「頼んだ。名探偵」



 彼女は手を出して親指を立てて……サムズアップした。



「任せていただきましょう」

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