表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/518

15-4.同。~我が過ぎたるを語る~

~~~~六連戦とか、とんだ罰ゲームだった。七戦目があったら?ボクは生きてはいないな。


 ほんと、何度振り返っても、自分が生きて六人に勝った理由がよくわからない。


 勝ってしまったのは事実だし、各戦闘については先に通りだが。


 言うは易し、だ。それを六回連続で。



 なにより……自分のあの時の精神状態で。


 それを為せたのが、未だに信じられない。



 …………話を戻そう。



「そう。でさ。どう思う?」



 ミスティが目を伏せ、考えている。


 しばらくすると、瞼を開けた。



「……他の方の心情的にもあり得ませんが。私が行くはずないです」


「そうだ。ちなみにボクがやったのは魔物を呼び出すんじゃなくて、聖国水脈の暴走だ」


「水脈……?あ、魔境!でも何のために?」


「魔境がもっと広がると、魔力が飽和して魔素に戻らなくなる。


 そうなったところを魔界といい、魔界の中の魔物は魔力供給が安定する。


 飢えなくなり、人を襲わない」


「……根拠は」


「ダンジョン深度5に行って、同じものを見た。人と魔物が共存していた。


 あと、最初に言ったでしょ?ドラゴン。普通に話できるし、やつはその辺も知ってる。


 結晶の螺旋循環も、実際に見てるってよ」


「…………」



 ミスティは驚きつつも目を細め、考えながら聞いているようだ。


 手で促されたので、続ける。



「話を戻すがこの状況。君なら水害の被災支援をまず行って、その最中に魔境のことに気づく。


 魔物を直接蜂起させたんじゃないところから、何か違うってちったぁ調べるだろう。


 魔界化の件はストックも自力で調べて辿り着いてるから、君でもわかる。


 ボクは君の行動を、そのように想像するわけだが。


 さて、コンクパールに来てる場合かね?」


「ハイディの想像は合っています。


 確かに、私なら絶対に行きませんね。


 でもこれ、あなたが自分の力で水脈をどうこうしたんですか?


 その場合、あなたを倒せば静まると結論しそうですが」


「聖国がやってる仕掛けを調べて、暴走させた。


 一度やったものは、二度と元には戻らない」


「そこも後から調べればわかる、と……。


 確かに、これは。自分以外の意思がないと、あり得ない」



 ミスティが、顎に手をあててじっと考えている。


 そう。『役割』を外から強制した何かがある。


 ここを共有してほしかった。



 もちろん、まだ「何か」としか言えない。ただあるのは確信している。


 誘拐事件のモザイクしかり、コンクパールに彼女たちをけしかけたものしかり。


 一定以上の強制力を持って、役を押し付け、あるべき流れを実現しようとする何かが、ある。



「ふふん。この話をした分の見返りは、期待できるかね?名探偵」


「やっていいということですか?水脈変更」


「やるのか!?」


「ストック。ボクさっき魔界をなんて定義した?」


「…………魔力が、魔素に戻らない。世界が循環しなくなる?」


「そゆこと」



 螺旋循環が止まると、ミスティはもう『クレア・コンクパール』を演じなくてよくなる。


 もう一度メリアを探し回りたいなら、話は別だったが。


 やっていいかと聞くということは、その気はないんだ。



 というか、どう考えてもメリアが泣いて止めるしな。



「ミスティ、君が主導していい。やり方は任せよう。


 ボクからのおすすめは、帝国を沈めることだ。最高効率で、最小被害だよ」



 帝国は領土が広大だが凍土や荒れ地が多すぎて、人が住んでいるところがまばらだ。


 うまい具合に「魔境で」国を分断できる。


 国はなくなるが、人の被害は最小限で済む。出るのは出るが。



「それは考慮しましょう。


 でもそれ以前に、敵がいるんですね?」



 ミスティはそちらには食いつかず――メリアから手を離して移動し、椅子に深く腰掛けた。


 そしてボクを見てきた。


 目が、やる気だ。見返りを期待して、良いということのようだ。



 やっとここまで来た。


 この冒険家に、目先のスリルではなく、未来をとらせるのは大変だ。


 この人は簡単に椅子には座ってくれない。



 でも一度座ったなら、やり遂げるまで力を貸してくれるだろう。


 自分の目的を果たしつつ、一緒に戦ってくれると期待してよさそうだ。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ