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13-3.同。~観光小舟のデート~

~~~~魚もいいな。酒と一緒にいただきたい。


 エングレイブ王国は豊かな国だ。


 農地、森林、鉱山の生産力が桁違いで、余らせるのがもったいないからと加工業の発達が著しい。


 国内では消費しきれないので、それらは中型神器船や、海を行く魔導船で他所の国に運ばれ、売られている。



 半島内だと、連邦や共和国あたりが友好国で互いに輸出入が盛ん、帝国は消費地、聖国は商売仲間だな。



 帝国は売る物は少ない方だが、魔石や工材の出土が多いので、魔道具、神器、神器船が主力産業だ。


 国としては武力侵略国家なんだが、それらを使っても他国に勝てないので、売り物にすることが多い。


 その上で、土地がやせているので他所の国から食料や燃料を買っている。



 聖国はあれで法術による魔導船を数多く運用する貿易国で、王国等から買ったものをさらに半島の外で売ってる。


 そして半島外から買いつけたものを、半島の中で売ってる。



 ただ差益は国内に還元されているかというと、そうではないようだ。あそこの平民の暮らしは貧しい。


 貴族もあまり豊かではなく、国を牛耳る宗教勢力だけが富んでいると見られる。


 中枢の聖都は豪華なんだよな……。ほかは、帝国よりマシかな?くらいだけど。



 そんな感じで意外にちゃんと経済が回っているクレードル半島の中で、旅行ができるほど余裕があるのが王国だ。


 その理由はまず、第一次産業が楽すぎることにある。彼らは働き過ぎても、生産品の消費先がない。


 ゆえ、よく休むし、遊びに出る。彼らの受け入れ先として、都市部は観光地化が進んでいる。



 次いで、国内の治安に不安がないことが挙げられる。魔物や眷属はまず出ないし、犯罪も非常に少ない。



 国民は精霊との契約をしており、重犯罪は一発アウトで極刑。精霊が直接罰する。彼らは融通が効かない。


 軽犯罪も驚くほど鮮やかにばれる。わりに合わない。


 外国人も正規入国なら同様の契約をするし、勝手に入るとすぐばれる。



 当然、そうは言っても後ろ暗いことで楽をしようとするのが人間だが、この勢力が大きくならない。



 この国最大の武力とは、貴族である。そして貴族は精霊によりその存在が担保されているので、腐敗できない。


 多少の貧困街までまったくできないとは言わないが、暴力を背景にした組織的集団ができることはまずない。


 貴族がそれを許さない。場合によっては、貴族の子弟が所属している、国防省が出張ってくる。無理。勝てない。



 貴族の持つ治安維持組織として領兵が、国防省の下部組織として冒険者ギルドがあり、これらも目を光らせている。


 今の王国では特に問題なく運用されているので、この体制下で悪事を働くのは難しかろうな。



 その上で、国内は街道も整備されているし、主要街道では馬車は乗り合いの定期便が出ている。運賃は高くはない。


 神器車の運搬サービスも確かあったような?あれはさすがに結構な料金だったけど。その高い金で十分時間が買える利便性だ。


 なお貨物車は結構なサイズなので運転できる者が少ないが、これは割のいい商売になるそうだ。



 で。その平民が旅行できちゃう国の交通要衝パールは、観光地としても十分以上に発展した街だ。


 お洒落な呉服店はたくさんあったし、飲食店は見栄えのする工夫された食をたっぷり堪能できた。


 桟橋街は風情があり、買い食いが大変捗った。変な小物を買い控えるのが大変だった。



 ちょっと我々は、遊びを満喫しすぎたなーと思う。



 ストックがパール伯爵経由で然るべき連絡をしたくらいだ。


 メリアのことをヴァイオレット様に知らせるとか。ミスティに手紙を出すとか。



 働かずに遊び惚けるだけで、すでに幾日か経った。


 あんまり幼児三人が毎日街を遊び歩くのは、よくないと思うんだがなー。止まらんかった。



 メリアは一通り遊んで満足したのか、今日は部屋で休んでいる。


 というか、ボクらが目の前でいちゃつくから、たまには一人にさせろと追い出された。


 ならせっかくだから存分いちゃついてやろうとストックが言い出し――今、小舟に乗せられている。



 長い櫂で水底をついて水路を進む、観光用の小舟だ。


 桟橋街から出て、北のレンガ水路あたりをぐるっと回ってくれる。


 船頭の腕がいいのか、揺れは心地よい感じだ。雰囲気が良すぎる。



 その。ですね。



 船頭に背を向ける形で、我々は二人並んで座っている。


 ちょっとぴったりしすぎだし、つい握った手が離せないし。


 水上だから涼しい風は吹くが、じっとりと暑く、互いに汗をかいて。



 なんだこの、なんだ。


 ちょっと早すぎたんじゃないか、これは。


 油断した。少々調子に乗りすぎた。とても反省している。



 ストック、おいストック。


 赤い顔でずっとだんまりのストックよ。


 その陶然とした目で何見てんのかしらんが、そろそろ戻ってこい。



 ボクは景色が綺麗って楽しむ余裕もないし、別のこと考えて気を紛らわせるのも限界だぞ?


 贈った暗めの赤いリボンはよく似合うし、日差しが強いからと買った帽子もかわいいな。


 この至近距離だと、そのとっても良いお顔が堪能できてしまって、ボクは今非常にやばいぞ。



 呼吸は静かになるようにしているが、鼓動はもう爆発しそうだし。


 顔はもうずっと熱くてどうにかなりそうだ。


 ボクはあまりのことに、ロザリオを弄る余裕もない。



 あ、意識ないのかと思ったらこいつ、普通に動いていつの間にか腕絡めるし!?


 ダメだって、腕も指も絡めちゃだめだから。それはいかんて。


 うしろ人いる、いるって。むしろ周りからも見られてるって。



 やっと桟橋街まで戻ってきた。


 だめじゃろこれ。10年とか無理でしょ。


 舟が桟橋まで戻るまで、もたないって……。



 すとっく。


 そんなに近づいたら、ボクはがまんするのをやめちゃうぞ……?


 ――――いきなりストックが、明後日の方を向いた。



「ストッ」


「ハイディ、あれギルドだよな?」



 何だ。言われて見れば、少し遠めに……ああ、確かにボクらの泊ってる部屋が見える。


 ブルーパール側から桟橋街に入ってきたから、来た日に見たのと逆向きの景色だ。


 窓が開いていて……何だ?麻と思しき袋か何かが宙に……窓に、人が。



 今の袋、まさかメリアか!?

ご清覧ありがとうございます!

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