13.パール観光。事件発生。
――――デートの邪魔とはロックだな?ならばエレキで迎え撃ってやろう。
「「「乾杯!」」」
まず食べ物やらと一緒に、エールレッドを二つ頼んで。
念のため少し果実水も用意してもらって。
来たエールレッドをメリアに味見させたら、すぐ自分でジョッキを頼んだ。
そして、改めて乾杯したわけだ。
ほらみろ、やっぱり気に入ったじゃないか。
「ぷはー!たまらん!アルコールがほしい!!」
「自重しろ四歳児。あと10年は待てや」
「長すぎじゃろう。ってそこ訂正せねばならんな。私はもう五歳だ」
「……ああ。ごめんよ、4の月だったか」
メリアは確か、4の月の29の日が誕生日だ。ミスティと同じなはず。
「よく覚えておるな。
ところでエール……ファイアだったか?かなり酒精をきかすのか?」
「そうだよ。ボク、あれ飲むと普通に酔っぱらうよ」
「は?ハイディが?酔う??」
メリア――カレンとお酒を飲んだことはあるが、まぁ酔ったところを見せたことはあまりないな。
「うん。エールとかじゃさっぱり酔わないからさ。
学園では他に強めなやつがなかったから、あれ飲んでたんだよ」
淑女の在り様ではないが、酔う時はきっちり酔いたい。
……あれ、ストックはよく付き合ってくれたな。ほんと。
一応、赤くなるまで酔うだけで、記憶をなくしたり奇行に走ったりはしない。
まぁ最初は酔いたくて飲んでたんだけどね。
結局、あの辛みが気に入って愛飲していた。
「蒸留酒でも混ぜとんのか?」
「そうそう。きっつい蒸留酒を混ぜるんだ。
北で飲まれる穀酒って知ってるだろ?
王国では、あれの芋のやつがあるんだよ。それをぶち込む」
「ペリステライトのことだな。この領の国境沿い、北にある山脈の名がついた酒だ」
「それをこれに入れるのか……?
なぜそんなカクテルを作ったんだ……」
メリアが引いている。
なお、こいつは杜松酒という蒸留酒をロックで愛飲していた。
穀酒だって飲んだことがあるはずである。ありゃ帝国の酒だしな。
「そのペリステライト山で遭難した貴族が、その場にあるもので作って飲んで暖をとったという逸話が元だな。
文字通り、火のような酒になったらしい」
「いやここまでやるか?やらんだろ……」
「嫌なの?メリア」
「好みだ。複雑でたまらん辛みだな」
「こうはならんやろ、って意見はボクも分かるけどね。
ほれ、マッシュと一緒に食え」
「この量なら満足できそうだな……んむ、良い塩気だ。
それに香りも良いな?そして飲むと……合うな。素晴らしい」
「雑に見えるけど、マッシュの味が店の味だからね。
王国じゃ、どこも手を抜かんらしいよ」
「おぬしもすっかり王国民だな、ハイディ」
「血が馴染むんだろうさ。私は、ハイディが聖国出だという方が信じられなかったぞ」
「言われて見ればそうだが……おう、すまんがこいつをもう一杯くれ」
もう二杯目かよ、早いなメリア。
そして彼女に出したマッシュがあっという間に消えていく。
とりあえず、小水老揚げの皿を彼女の近くに寄せておく。
水老は水棲の甲殻類だ。川に生息しているものもいる。
身がぷりぷりしてて、うまい。
確か赤辛ソース絡めたやつもあったな?後で注文しておくか。
「そういえばおぬしら、今更だがなんでそんな喋り方なんだ?」
何だ藪から棒に。
むしろなぜ今までは気になっていなかった。
「ボクは立場上丁寧だっただけで、そも身分は平民だぞ。こんなもんだよ。
聞いてなかったけど、ストックはどうして?」
「組織の連中に舐められてはならんと思って、やり始めた。
存外、板についてしまった」
「学園で明らかに猫を被っておったときより、その方がよいわ」
猫……猫?そうだったっけね。
ストックは普通に令嬢してたと思うけど。
「そういうメリアはどうなんさ。それでいいんか?」
メリアだって、最初は彼女の言うところの、猫をしっかり被ってた。
ラリーアラウンドが王都に来る前くらいには、今の有様だったかな。
「よかろ。もう廃業するんだし。まぁ私は元々こんなんだ」
皇女は業務だったか。
「それはどっちが?」
「どっちもだ」
ほんとによかったのかそれで、皇女カレン。
次の投稿に続きます。




