11-6.同。~もしも友がその時、いてくれるなら~
~~~~かっこつかねぇ。調子に乗りすぎた。
「あ”、あー……逆だよメリア。これは体に流れる電流を、電撃にする技法だ。
神経に通ってる僅かな電流を、増幅してるんだ。
魔素のエネルギー変換は使ってない」
やっと喋れるようになってきたので、説明する。
先のメリアの例を出すなら、実はやっているのは身体強化だけ、だ。
神経に力を集中してる、みたいな感じ。
それ自体もただの呼び水で、呪法の起動に用いらているだけだけどね。
呪いが速さ、雷光、力強さをすべて提供してくれる。
そしてその力に、ボクが耐えられていない。
メリアが、令嬢にあるまじき口の開け方をした。
そんなに驚くことかね。
「めちゃくちゃ痛いのではないか?」
「結晶を取り込む痛みが、擦り傷に思えるくらいに痛い」
なお、乙女の様々な尊厳が垂れ流されないコツは、さすがに最初に習っている。
それを流用すれば痛みの回避はできるはずなんだが、大変集中が必要でうまくいかない。
ストックも似たようなことしてるはずだし、今度聞いてみようかしら。
エリアル様は丁寧に説明してくれたが、さすがに感覚的な話なので分かり辛かった。
こういうのは複数人から同じ話を聞いて、材料にするに限る。
「なぜそこまで……」
「メリア、これは呪法という技だ。武術と、呪いの組み合わせなんだよ。
己を痛めつけるような激しい鍛錬から、呪縛を結実させる。
呪縛の効能と武術の魔素制御を使って、高い効果を得る。
私も授かっていて、使える」
「なっ!?」
「そーなんだよー!ストックは使えんの。別のやつだけどさ。
またあんな結末を迎えるのは嫌だから、頑張りたいんだけどねぇ」
ストックが極震発勁は打てるということは、彼女の套路はたぶん完成してる。
我らは体がまだ小さくて、魔素は僅かなので、その後力尽きるのはしょうがないのだ。
ボクも一撃なら技を放てるが、ボクがやってることと、ストックがやることの間には高い壁がある。
「そこまでするほどか?」
「ドーン崩壊は、王国滅亡の原因と言ってもいい事件だ。
その時点でボクらは10歳。子どもだからと戦えない身でいたら、まずいことになる」
「大人に任せるわけには、いかんと」
「そも、あれの主犯はタトル公爵。それが王国最強の武人、ヴァイオレット・ロイド様を倒してる。
直接的なところは、ストックを人質にとったかららしいけど、たぶん別の絡め手もあるだろう。
人質とった魔導師、だいたい10m程度の対峙距離だとして。
前のボクなら人質に何かされる前に一撃で首が落とせるぞ?
ストック、当時の状況に君を倒したときのボクがいたとして、それは無理だと思うか?」
ストックが目をつむって思案している。
「…………あの時は、亀が私を人質にとって、お母さまと対峙。一対一、距離はそんなもんだな。
奴の実力を加味しても、お前なら瞬く間に斬り伏せるだろう。奴にできるとすれば、緊急転送だけだ」
「なら、ヴァイオレット様だって同じだ。違うか?」
「いや、合っている」
「そしてその状況で、あの方が倒された理由は、わからないと」
「そうだな……私も少し、気楽に考えすぎていたか」
まぁ気楽に人任せにはしたいけどね……。
でも最低限ってものもある。ボクらは人質にされても、自力脱出できるくらいの力は要る。
「万が一同じ状況になっても、自分たちの身で最低限、盾にされぬようにしたいと。
それなんでハイディまでやるんだ」
「ボクが人質にされたら、ストックはうまく動けない。同じか悪い状況になる」
「そしてハイディも巫女になるから、ドーンにいないわけにもいかん、と」
「そういうこと」
ストックを見ると、目で頷いた。
ストックを人質にとられたヴァイオレット様が倒されたのだから。
ボクが捕まってストックが助ける立場でも、同じことになる。
そうしてストックまで捕まったら、もうどうしようもないだろう。
この場合の対策としては、「人質が自力脱出する」「第三者の援護を受ける」あたりが妥当だ。
「で、力を貸してくれるんだろ?メリア」
彼女はちょっと虚を突かれたような顔をした後。
にやりと笑った。
「任せておけ」
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