22-3.同。~破滅の未来、その残滓を打ち破る~
~~~~不確定要素は多かったが……順調だ。もう少しだからね、ストック。
次に目が覚めたとき。
近くにいるのはソレイではなく。
「あ、やっと来たわね」
刀をもった、ウィスタリアだった。
突入に際し、分離したのか?
周りは先の空間に似ている、が。
もっとこう、生物的で。
具体的には、細い触手のようなものがうねうねしてる。
……ちょっと多くないですかね?
奥には黒い膜のようなものが見え。
そこに見慣れた子と、そっくりな子が。
……彼女たちが分離済みなのは、何か理由があるんだろうな。
融合するのが魔導依存のものだから、それが否定されるのか?
おそらく、この皮の方に。
「すまんね。遅くなった」
「どこ行ってたのよ。遅刻とか、信じらんないわ」
忌憚なく言うねぇ。
ウィスタリアがおもむろに、刀を振る。
こちらに伸びようとしていた幾本かの触手が、斬れて落ちる。
「で。ここからどうすんの?」
「あれは斬れなかったんだな?」
黒い膜を指す。
「ええ。シフォリア先輩なら、できるかもだけど。
私じゃ無理ね」
根源たる呪い。
おそらく、現存の呪いすべてを一つにしたものに、近い強度があるだろう。
ならやはり、外からの干渉は諦め、内から出てきてもらうのが平易だな。
とはいえ、出てきたらここがどうなるかはわからない。
先に脱出手段を、確保しよう。
ボクは両の腕輪を回し。
「じゃあこうする」
両の手を頭上で交差した。
「『救世の 門よ、 開け』!!」
今回、向こうは起動済みだ。
それは即時に現れ、流れしものの外皮を内から引き裂いた。
ボクらと黒い膜の間くらいに、首が割り込んでる。胴体部は外だな。
物体のあるところに門なんか開かんが、ここは「物」じゃないってことだ。
「げ、滅茶苦茶するわね!?」
普通だろ?
そして!
「ソレイ!!」
胸に手を当て、叫ぶ。
食いに来るもなにも、内側からなら。
その名を呼んでも、文句はなかろう!!
『カンナ!!帰ってきて、カンナ!!!』
ボクの内から響く彼女の声に、黒い膜が波打って。
ボクは今一度、袖を咥えて呪いを起動。
瞠目し、全身の魔素を活性。
「ディード、回収よろしく!」
回る。
魔素が舞い散る。
『星 空 よ』
仄かに紫の魔素が、蔓のように結びつく。
ウィスタリアと、奥のストック、リィンジアに。
そして。二人の間に僅かに出て来た、緑の光。
大きく左足を引き。
裾を両手で少しつまんで。
深く深く、頭を垂れる。
前を、彼女を見据え。
膜が弾けるのに合わせ、駆けた。
『紫藤に、輝け!!』
触手を砕き、駆け抜け、三人を回収。
緑の光は――――ストックのブローチに吸い込まれて行って。
ボクはアウローラまで辿り着き、まず最後部に二人を。
助手席にストックを放り込んで。
自分は運転席に潜り込み。
「てっしゅー!!」
『人使いの荒いやつめ』
竜使いじゃなくて?
アウローラは、口腔に溜めた力を放ち。
呪いの身を砕きながら、その首を引っこ抜いた。
次投稿をもって、本話は完了です。




