21-6.同。~その戦略、読み切って……引きずり出す~
~~~~最悪で馬鹿みたいな手でほんとにきやがった。どんな生産力だよ。チートか。
途中、ストックを拾おうと思ったが、ネフティスが見当たらず。
……赤の腕輪を、少し弄ってから。
優先すべきことがあるため、ボクはパンドラ近くに降りることにした。
アウローラを低空まで持ってきて、飛び降り、地上に着地。
龍はディードに頼み、そのまま飛ばしておいてもらう。
ドッグからパンドラに入ったら、幾人かが出迎えてくれた。
エイミーとマリエッタ、マドカとアリサ。
……よし。マリエッタとアリサがいれば、まずは大丈夫だ。
「共和国組は帰ってきてない?」
「ええ。あと魔都に行った人たちも。
そっちで戻ってきたのは、ハイディだけよ」
クエルとシフォリアもいない、か。
となると、ここをこれ以上手薄にはできない。
「エイミー。ダンジョンから魔晶人が出て来てるみたいだ。
それは?」
「こっちでも確認した。
マリエッタに聞いたら、手段があるって言うんだけど。
大丈夫なの?」
マリエッタとアリサを見ると、二人が頷いた。
これもまた、マリーも交えて準備してきたこと、だ。
赤い腕輪を操作。彼女たちにピコマシンの大部分の権限を預ける。
「ピコマシンとアリサの力で、結晶破壊の魔導をばらまくんですよ」
「私は精霊の力を得たからな。マドカと合わせて、問題なくいける」
頼もしい。
わかりやすく言うと……ウィルスのようなものを、半島中に撒くんだよ。
散布補助・管理にピコマシンを使う。散布そのものは、パンドラから専用弾頭を大量に発射する。
「エイミー、パンドラから二人に魔力供給を。かなり食うから。
となると、こちらは四人で大丈夫だね」
「ハイディはどこか行くの?」
「ストックがいないんだよ」
「「「「!!??」」」」
え。そんな反応するとこ??
「す、ストックがいないのに、ハイディが落ち着いてる……」
「雨じゃなくて、槍が降るやつでしょ、これ」
「荷電粒子砲が降ってくるのでは?」
「いやいや。ハイディ、すぐ探さないといけないんじゃ?」
そんな反応するとこ……??
「リィンジアとウィスタリアも、帰ってきてないんだね?」
「ないけど」
「なら、居場所は分かりやすい。
行き先も決まった」
腕輪の示す相対座標も、予測と合っている。
たぶん、そのうち座標点は消えるけど。
「どこに?」
「聖国だよ」
「「「「????」」」」
あー……まだ説明してなかったしなぁ。
「最初ウィスタリアとリィンジアには、ボクとストックに対する融合機能が入っていた。
同じ結晶だから、触ったら一つになるように、と。
これはゲームの展開に戻すため……だと思ったんだけど」
「違うの?」
「それだけじゃないってことだよ、マドカ。
やりたかったのは、聖女リィンジアの再現」
どうしても、クストの根がいない中で東宮が仕掛ける戦略としては、違和感が抜けなかった。
でも星帚という呪いを信奉する集団や、聖国とのつながりを思うに。
彼らからの要望を受けての計画なんじゃないかな?これは。
ストックの体は、リィンジアの本来の転生体。
リィンジアベースで統合することで。
「それにより、『いと長く流れしもの』の活性化させる」
彼らの聖女、そして信仰対象を呼び覚ます。
「え、活性化、するの?」
「奴はリィンジアを食って、そのまま封印されたそうだから。
中にはリィンジア本体が、まだいるだろう。
そして外に同位体がいれば、引き合う。
ストックとリィンジアが融合し、聖女が没したという竜神山を訪れれば、出てくる」
ドラゴン・ディードの発言からの、予測だ。
「大変じゃないの!?」
「だからアウローラを用意したんだよ。
いろいろ必要だったけど、今の状態なら一人でも対抗できる」
流れしものは、クストの根に囚われ、離反したというが。
ならそいつを封じたときの再現戦って感じか?これは。
もちろん、当時と役者は違うわけだが。
「だめじゃないの!!倒しちゃったら、ストックたちが……」
「そこも大丈夫だよ。ボクはストックの救出に赴く。
アウローラには、ディードの意思を借りて、戦っておいてもらう。
だいたい、今後の動きはわかったかい?エイミー」
「うん、わかったけど……その。ほんと落ち着いてるわね?ハイディ」
めっちゃ心配されてるし。
気持ちはまぁ……わかるけどさ。
ずっと準備して、覚悟してきたことなんだよ。これは。
しかもまだまだ、序曲ってやつだ。
「正念場というやつだ。
ボクはいつか来るこの日のために、備えて来たんだから」
アリサとマリエッタの顔に、少しの緊張が走る。
この決戦に前後し、ストックが帰るというボクの見積もりが……伝わったのだろう。
そう。だから流れしものから、呪いの祖たるものを切除し。
祖霊をボクから追い出すのは……ただの前哨戦だ。
「ああ、共和国に行った人らは、帰ってこないとは思うけど。
もし来たら、パンドラで待機。動かし方は、エイミーに任せる。
ここに残ってる子らもね」
共和国組……というか、ビオラ様たちはおそらくは別件だな。
娘たちも、がんばってくるのだろう。
先の質量弾は察知できたろうから、この好機に動かぬわけもない。
マリーとダリア、リコはこのままパンドラにいてもらったほうがいい。
オリーブはどのみち危ないから、戦闘局面には連れ出せない。
あとは……
「私たちはどういたしましょう。主よ」
遅れてやってきた、センカと、フィラの二人。
「アウローラを預ける。ディードが主だけど、補佐してやって。
ほかの子らも乗ってるし」
「分かりました」
「王様、がんばろう」
「ああ。じゃあ……」
「待って!!!!」
ドッグに声が響いた。
次の投稿に続きます。




