21-3.同。~我が領土よ、ここに~
~~~~奴らの目や手足は潰したはずだが、いいタイミングで狙ってきやがる。
愛車のネフティスは、魔都出口で少々のやりとりの後。
魔境――――荒野へ出た。
「まただ!」
ストックが叫ぶ。
雲を引き、打ち上がる質量弾。
そしてそれに合わせ、南から飛び立った怪鳥が、空に登っていく。
高空で衝突し、破裂。
今ので、すでに三射目。
迎撃はうまく行っている。さすがエイミー。
どうやって確認して撃ち落してるんだろうね???
まぁあの子、見えない水路の中のワニ、倒してるからなぁ。
とはいえ……向こうがどのくらい撃てるか、わからない。
エイミーだって、限界はある。
細かい制御は大得意だが、大きな出力はちょっと苦手なんだ。
あの質量弾を落とす大怪鳥。あと何匹撃てるか……。
弾を打ち上げている何かは、地平のはるか向こうにあるようだ。
荒野に出ても、その姿が確認できない。
ネフティスじゃ、辿り着けないな……。
あれ?なんだ。
北の地平、山向こう。
何か、赤い、光が……
背筋が、粟立つ。
その光の集まる様が。
自分が必殺とする、それに似ている。
「ストック!悪いが運転代わってくれ」
「おい、魔境のど真ん中で何をする気だ」
「別の移動手段で近づく。
様子を見ていられない。
下手すると、魔都が焦土になる。
――――奥の手を、使う」
クルマを止め、両の手首の腕輪を回しておく。
「…………わかった。行ってこい!ハイディ」
視線を、合わせる。
たぶん、これが決戦。
少しだけ……名残が惜しい。
ごめんね、ストック。
必ず、行くから。
「ありがとう、ストック。
――――行ってきます」
頷き合い。
ベルトを外し、扉を開け、出て、すぐ閉め。
遠めから、すぐにやってきそうな魔物の気配がし。
急ぎ、コールする。
魔都とあの光、その直線上にボクらはいる。
ならば!
両の腕を頭上に掲げ、二つの腕輪を交差させる。
「『救世の 門よ、 開け』!!」
ボクの二つの腕輪から、ビームと見まごうような大きな緑の光が打ち出され。
天を貫いた。
シーケンス完了まで約100秒!
間に合ってくれよ……!
魔物が近づいてくるのが、見える。
ボクの素手では、奴らの皮は貫けない。
だが。
瞠目し、頭の中の撃鉄を起こす。
深く息をし。
息が音に、音が声に、声が鳴動に、鳴動が雷鳴になって響く。
「__/\/\/\/\/\/\/\/\/\/ ̄ ̄!!」
人から出たとは思えない音が、躍動し、暴れ、荒野に響く。
目を開き。
雷光の乗った紫の魔素を、ばらまく。
さぁ、大盤振る舞いだ!
「極小神器機構、起動」
紫の魔素が。
緑ではなく――――紫の、光になっていく。
━━━━『星空よ、 ここに』
都合七柱の精霊が顕れる。
砂、火、水、木、風、土、闇。
━━━━『『『『『『『こ こ に』』』』』』』
ボクを囲む、精霊の長たち。
魔物たちの歩みが、止まる。
ものによっては、一目散に後ろを向いて逃げた。
賢くてありがたいね。
四世と、水の精霊ウィンを見る。
紳士は帽子を取り、乙女は頷いて前に出た。
間に合わなければ、二人の力を借りることになるが……。
遠く山の向こうから、日が昇るような赤い光が溢れている。
その時。
ボクらの少し前方、数十mの高さに。
1km四方にわたる、まだらの空間が現れた。
それはすぐに全体を露わにし、地上にふわりと降り立つ。
長方体の――――我が領土。
来た!!
次の投稿に続きます。




