表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
490/518

21.魔都。決戦。

――――来たか。


 魔都。


 半島横断魔境の、あまり広くない水の囲みの中にある、都市。


 共和国の一都市分しかないが、住んでいる者は意外に多い。



 国家ではなく、ただの一都市で、どこの国にも所属していない。


 各種魔導を研究しており、神器や魔道具各種も作っている。


 外貨獲得手段は、主にこれらの販売だ。



 土地には割と魔力があり、耕作地面積あたりだと連邦に迫る生産量を誇る。


 聖国や帝国より、実はよっぽど豊かだ。



 攻め取られそうなものだが、南には共和国、北は帝国東部地域にあたり。


 その帝国東部には各種武具を下ろしていたりし、協力的な関係。


 帝国の東端は広い魔境に接しているため、他国に攻め込むどころではなく、関係良好だそうな。



 ボクはこの魔都に結構馴染みがある方、ではあるんだが。


 実は今生で来たのは、初めてだ。



 パンドラは、都市の外堀の向こうに停泊。


 そこから車両で、外壁を通り、中へ。


 クルーに魔都出身・関係者が多いため、結構な車両群で入場した。



 関係ない人もそれなりにいるから、留守番組も多いけどね。


 例えば、ボクの友達らはほとんど居残りだ。特に用もないから。



 今パンドラにいないのは、共和国に行ってる組かな。


 ギンナとベルねぇ、ミスティとメリア、スノーとビオラ様。


 あとクエルとシフォリア。



 娘二人は護衛と用事があるとかで、スノーについてった。


 マドカとアリサは今回お留守番だ。



 航路予定を出したときに、ビオラ様経由で話は行ってるため、魔都に入るのはすんなりだ。


 魔都は元々、その辺がおおらかなんだよねぇ。


 差別・迫害は絶許だけど。こう、それ以外はなんというか……達観した社会だ。



 ボクはネフティスに、ストック、ウィスタリアとリィンジアを乗せてやってきた。


 ウィスタリアが、最初にしばらく世話になった人に挨拶したいと。


 当時はその後、自分で神殿に赴いて……クレッセントに行ったらしいんだよね。



 魔都は神器車が多く、道路も整備されている。


 とはいえ人も多く歩いているので、ゆっくりめに走っていく。



 この都市は六本の真っ直ぐな道が、中央から外側に伸びている。


 道同士は60°おき。上から見ると確か……風車ってわかるかな?


 羽が六枚あるものを想像してほしい。そんな造りになっている。



 我々は南門から入ったが、目的地は北東。


 オーガ氏族の区画なんだそうで。



 オーガといえば、パンドラだとシドゥさんとケルケンソさん。


 あと最近知り合ったな。魔術科のデケイルくん。


 学園、いきなり休園になっちゃったけど。ここに帰ってきてるよね。



 寮とか下宿からは、追い出されてるはずだもんな。


 彼は貴族令息だし、寮暮らしだろう。


 魔都だから、転送通いという線もあるけど。



 魔都には移動しない神器船が、衛星都市として周囲に配置されてるからね。


 前の時間のクレッセントは、そのうちの一つだったんだけどなぁ。


 動かさなければ、きっともっとましな暮らしができていただろう。



 今生でも同じように魔境を不定航行すると聞いたときは、心底呆れたものだ。


 難しいことだし、やってればある種の注目は浴びるが。


 そんな見栄でする労苦じゃねぇよなぁ、あれは。



 それでデケイルくんについては……伯爵令息だったはずだから、誰かに聞きゃ家がわかりそうだが。


 先触れもなしでご挨拶は、失礼だ。


 また学園で会った時に、お話しするか。



 人は多いが、馬車はいないので、道路の流れはスムーズだ。


 よく行った王国のシャドウの街は、中心あたりがとても混んだが。


 魔都は走りやすくていいな。真ん中はもう、抜けてしまった。



「ウィスタリア、何番街か覚えてる?」


「7……8だったはずよ」


「8?貴族街じゃねぇか。誰に拾われた」



 そういや聞いてなかったが。


 この流れだと……。



「オヌ伯爵よ」



 隣でストックが吹いた。



「それ確か、あのオーガの子の!?」



 ストック、直接は挨拶してないが、話は聞いてたか。



「そうだな、他にはいない。


 おいウィスタリア、あの時どうして絡んでこなかったし」


「へ?私、伯爵本人にしか面識ないもの。


 ご子息がいても、わからないわよ」



 わかれよ。


 ああいや、こやつ三年前にここに来たというから……。



「魔都の貴族令息なら神殿か。会わないわな」



 ここの神殿は、神職を養成する神学校に近い。


 結晶の使い方を教えてもくれるし、初等部未満の教育もしてくれる。


 魔都の貴族令息令嬢は、基本的にここに通って教育を受ける。



 別に親元から通ってもいいんだが、たいがいは寄宿舎に入って生活だ。


 デケイルくんもそうだろうな。



 で。神殿に行ってすぐクレッセントなら、ウィスタリアが会うことはなかったろう。



「そうそう。よく知ってるわね」


「ボクは前の人生、ここ出身だからな。


 神主が来る前から、クレッセントにいたんだよ。


 その頃はまぁ……ベースはパンドラみたいなもんだ。


 食料はなかったが」


「そうだったのね。


 いやそれ……食料なかったらダメじゃないの」



 君の主眼はそこかよ。腹ペコめ。



「ダメなもんか。パンドラが異常なだけで、この世代の神器船はそれが普通だ。


 これから、全部パンドラ基準になってくがね」


「そう。皆飢えない時代が、来るのね」



 リィンジアがしみじみと言う。



 本来なら、神器船一台作るのも結構金がかかるもんだ。


 けど王国は戦略として、他国を巻き込んでこれを作りまくるつもりでいる。



 移動領土をたくさんこさえた上で、地上の水脈を変更し、魔境を魔界にする。


 そうすることで魔物はおとなしくなり、空気中の魔素は徐々にみな魔力になっていく。


 誰も魔物の餌食にならず、飢えず、魔結晶ができない社会になっていくだろう。



 そういや、その到来前にやっとかなきゃいけないことがあるな。


 魔結晶がなくても、神器を動かせるようにしないと。



 人の間から結晶がなくなるのは、だいぶ先だろうけど。


 神器船が動かせなくなったら、大問題だ。



 まだまた、ボクの仕事はなくならんかなぁ。こりゃ。


 他の人がやってくれりゃいいが、なかなか頼めることでもない。

次の投稿に続きます。


#本話は計8回(14000字↑)の投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ