20-9.同。~求める君。求めるボク。~
~~~~微妙に過去の自分を見ているようで、懐かしい。だが共用部では自重しようよ。
二人を見送り、部屋のソファーに座って待つことしばし。
ノック音がして。
「どうぞ」
扉を開け、ストックが来た。
穏やかで。
とても嬉しそうで。
さみしそうな顔の。
「おいで、ストック」
膝を揃えて、ぽんぽんと叩くと。
……すごい勢いでやってきた。
ご令嬢として、他の人も来るかもしれない部屋で。
いきなりうつ伏せでここに突っ込んでくるの、どうかと思うよ?
優しくその、銀糸の束を撫でると。
手に、太ももに、その頬を擦り付けてきた。
「固かろうに……君、ボクの太もも好きだねぇ」
「だいすき」
くぐもった声を発しながら……おい、その吸い方はどうなの。
そこはちょっとこう、近かろうに。アウト判定されたらどーすんだよ。
ストックが、とても深く深く息をしている。
明らかにいろいろ吸ってる。
その唇が、布越しに、吸い付きそうで。
だめ……これは。
先のクエルのことが、あった……せいには、したくないけど。
いつものふれあいより、ずっと興奮する。
何かストックも素直で、積極的、だし。
いつもなら逃げちゃうのに。
このところどんどん、甘えてくるように、なって。
人前でも、当たり前のように。
やっぱり君自身は……もう戻ってこれないと、思ってるんだね?ストック。
しょううのない子だ。
……彼女の後頭部を、そっと押し込む。
自分の柔らかいところと、大事な人の顔が、とても近くて。
尾てい骨あたりから、ぞわぞわとしたものが、何度も背を駆け登る。
ストックの深い呼吸に、息を合わせると。
何かこう、深いところを吸い合っている、かのようで。
触れてはいないのに、湿気が、する、ようで。
たまらず、彼女の……着乱れた上着の裾を、直すふりをしながら。
その尾てい骨あたりから、背骨をゆっくりと撫で上げる。
ボクの柔らかめのところに鼻先を埋めているストックの、身が震える。
ボクの腰を抱き、より深く潜ろうとする彼女の頭に。
押し留めるよう置いた手が。
うなじまで降りて、より引き寄せようと動く。
もっと、ふかくに、きて、ほしい。
どうしようもなく、信じられないくらいに、昂る。
ストックで、頭がいっぱいになる。
彼女の耳が触れる、下腹……へそ下あたりが、煮えたぎるように熱くて。
真っ赤なその耳を、さらに温めている。
膝が、ゆるんで。
脚が、開いて、しまいそう。
ボクの力が抜けたのを感じたのか。
ストックがこちらを伺うように、少し横目で見つつ。
ボクの正面に、回り込んで来る。
体を伸ばして、膝の向こうから……ストックの顔、が。
今度は、彼女の耳を温めた場所に、吸い付いて。
鼻先が、押し込んで来る。唇が、少し柔らかい、へそのしたあたりの肉を、明らかに食んでいる。
体が跳ねそうになるのは、抑えられたけど。
食んだまま始まる、彼女の呼吸に。
細かな震えが、止まらない。
力が、入らなくて、膝が、開いて。
脚が、彼女の背を抱きこむように。
ボクの奥へ、ストックを引き込んでいく。
もう少し、お顔が下がると。
もう完全に、アウトだと思うんだけど。
ボクの両手はストックの髪を撫でながら、柔らかに下へ押し込もうとしてるし。
脚はその体に絡みつくように、彼女を誘い込んでる。
声と息は、整えて、誤魔化して、いるけど。
体温とか、湿度とか、におい、とかは、だめ。
ボクのそれらにストックが、とても興奮しているのが、わかる。
背中を、ソファーの背もたれに押し付けて。
腰を、浮かせ、て。
期待に、さすがに息が乱れて。
額の奥が、何か強く、刺激、されて。
思わず、目を強く、つむって。
――――感じていた彼女の熱が、すっとなくなった。
服も髪も乱れた彼女が、いつも間にか立ち上がっていて。
息も乱れて、顔もとても赤くて。
ボクも、すごい恰好だけど……直す気力も、湧かなくて。
熱が、引かない。
「…………だめなの?」
ボクは誘うように、はしたなくも片膝を、抱える。
彼女は、思いっきり生唾を飲んだ後。
頭を振った。
「へたれと笑ってくれてもいい」
こやつ、何言ってるか、自分でもよくわかってねーな?
もう帰ってくるのが無理だと思っているから、踏み込もうとして。
でも帰ってきたいから、引き下がって。
引き下がったことを、自分の意思で口にしたのなら。
君は何が何でも、ボクのそばにいたいんじゃないか。
なのになぜ、そんなに諦めたような……傷ついて顔をするのさ、ストック。
「笑わないよ。大好き」
ストックが身もだえるように、少し揺れ。
それから、ボクの隣に、少し乱暴に、ぼすん、と座った。
ボクの手が取られて、少し荒々しくにぎにぎされる。
指をすりつけ、絡めながら。
肩に寄せられるその頭を、そっと抱く。
「ストック」
「ん」
「結婚まで、我慢しなくていいからね?」
「……ぃぃ、のか?」
すごく、苦しそうな声で答えられた。
「うん。今すぐ君がほしい」
ボクは焦らされるのが大好物で。
ストックは我慢するのが大好き。
でもそれ以上に今は……お互いが欲しくて、たまらない。
ストックはそれが辛くて。
ボクはそれが幸せ。
ごめんねストック。
でも君が悪いんだぞ?一人で拗ねてるから。
だからこの幸せは、今だけは。
ボクが独り占めにするから。
……代わりに、ちょっとサービスしてやろう。
頭をかき抱くように……胸元にすりつける。
「ちょ!ま!やわ!!やわかいたすけて!?」
どういう悲鳴だよ。
思わず吹き出して。
ボクは正面から、ストックの頭を抱え込んだ。
このうっすい胸元でよければ。
好きなだけ、窒息するがいい。
いつも一人で頑張ってくれてた、君。
今度はボクが、君の助けになる。
みんなの力を借りて。
ボクのすべてを賭して。
相手が世界であろうとも。
君はボクのものだ。
必ずいただくよ。
ストック。
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