20-4.同。~忍の煩悶~
~~~~君らは貴族じゃないから悪いとまでは言わないが。自重しろ。
リコは。
内側の黒いそれを、外側の何かで完全に補ってて。
内なる情動が、自分では好きになれなくて、でもどうしょうもなくて。
発露しそうになるたびに、身もだえている。
そしてそれを躊躇いなく見せられ、受けいれてくれる相手を。
浅ましく、求めているのだ。
汚濁のマリー。
空虚なエイミー。
そしてリコの場合は、情熱……否、欲情。
まだ幼い身、淑女を信仰する者でありながら、その色が溢れそうになっている。
自分でも嫌で、見せたくもないのに、見られることすら悦びに変わる。
そんなリコを見て嬉しそうなあたり、オリーブもドムッツリ系か。
「分かったから、部屋に帰ってからにしろ」
「はい」
オリーブが手をとめて、リコが物欲しそうにしている。
なんか、最近来たのはこんなんばっかりだったりするのか??
よだれ人形といい。色ボケ忍者といい。
「……ハイディさんは、こう、何の反応もしませんね?」
「ボクは女子には興味ないからな」
こういうのを見ても、特に感じるものはない。
「え、ストックさんがいるのに?????」
「ストックにしか、興味ないんだよ。男女ではない」
「「あぁ~」」
納得された。
「話しは戻るけど。今まで忙しかったろうし、怠けるのはいい。
ただ先を考えるなら、とにかく今やってることを手じまいするといい、リコ」
普通に考えるとだね。
常任議員、忍頭、学生もやって、完全にオーバーワークだろ。
学生、教師、公選議員やってるベルねぇも近いが。
だが責任の重さが違うし、あっちはギンナと二人でやってるからな。
オリーブが議員職か忍を手伝えれば別だが、あいにくそれは難しかろう。
むしろ、オリーブはオリーブで医師と技師の勉強で、忙しい。
ボク?ボクはそんなに立場持ってないし。
だいたいのことは、人に任せてる。
自分がやってることが少ない、とは言わないけどね。
「手じまい……常任議員をですか?」
「そうだ。そちらもだ」
「……忍頭、も」
リコが少し、暗い表情になる。
「やめろたぁ言わないがね。
もしそれが、オリーブのために何かするのに、足を引っ張るのであれば。
十全にできる誰かに引き継ぎ、任せなさい。
その者を君が管理し、育てろ」
「後継、ということでしょうか?」
リコは回転と理解が早い。
自分ではすぐ思い至らないことも、人に言われるとすぐ飲み込めるようだ。
「そうなる。継承というより、冗長化だ。
頭を務められるのが一人だけだったから、君は大変だったわけだ。
君の下に、同じ苦労をさせるか?」
「育て、万が一の時は、私がまたやればいい、と……」
「血筋での選抜じゃあないんだろ?」
「一応考慮はされますが、皆の納得が優先ですね」
率いる立場だし、そうだろうな。
リコが、身を起こす。
「それは、やりがいがありそうです」
「ついでだから、議員も誰か拾ってきて育ててみればどうだ?
君らなら、見つけられるだろう。
カール氏にも聞いてみればいい」
「ぉ。それは、妙案、ですね」
彼女は流すように、隣のオリーブを見た。
「また何ができるかはわかりませんが。
オリーブの助けとなれるような、気がします。
私なりの、やり方で」
その瞳が、少し蒼に揺れている。
脳の魔素制御に通じるリコのことだ。
本当に、何か可能性を探り当てたのかもしれない。
「それは、嬉しいな。ぜひ手伝ってほしい。
けど」
オリーブは少し、ボクの方を見る。
「私が元気づけてあげたかったのに。残念」
「致すのは構わんが、一線は超えるなよ」
「しませんよ」
君じゃなく、そっちの残念そうな顔しとる子にいうとるんやで?
次の投稿に続きます。




