19-2.同。~あの星から、帰るには~
~~~~一応領主なので、アウローラにはたびたび来ている。実は領民も少ないけどいるんだよ?いるんだよ。ボクはボッチ領主ではない。
「肉体を持たない、ボクの契約下の精霊の長。
七柱の力を、十全に使うための措置を行う。
敵が広範囲、または高火力を用いた場合への対策だな。
今もある程度積んであるが、より高効率に、素早く行えるようになる」
「なるほど」
「改めてえっぐい数だよね……」
「肉体を持つ者が、さらに6人いるわけだが」
「「こわい」」
娘たちに引かれた。
ボクだって怖い。
そもそも彼らの王とはなんだ。どういう概念だ。
あまりにこわくて、聞く気にもなれない。
昔のボクは、いったい何をしやがったんだろうか。
……そういや、ストックはこの件、あまり突っ込まないな。
ボクが精霊の長と、やたら契約している件について。
あれか。八年前、魔力もないのに四世を呼んだから。
もう、そういうもんだと思われてるんだろうか?
「私向けの対策、も含まれているのか?」
聞かれたと思ったら、別方面からの質問だった。
やっぱり、気にしてはおらんのね。
しかしストック……笑顔が柔らかだ。
もうすっかり、肩の力が抜け落ちてる。
今更だが……ボクが、娘たちのことなんとかしなきゃって言ったから。
きっと追い詰めてしまったんだよね。
ごめんね。
でも。
やっぱり君、寂しそうな顔、してるね。
「使えなくもない、かな」
精霊の可逆的移動、という点ではテーマを推し進めることができる。
本質的には、流用できるものではないかな。
「はいはい!!」
「はいシフォリア」
「そろそろその話、詳しく聞きたいです!」
確かに、共有したのはストックの出自くらい。
地球に関わりがあるが、神主のような外敵ではない、と。
あとはボクが責任もってなんとかするって、話をしただけ。
んむ。いい機会だし、よかろ。
「ストックは精霊に招かれ、クストの根討伐の使命を負っていた。
ここまではいいね?」
「「はい」」
「ストックもいいね?」
「……ああ」
含みがあるが、まぁいいだろう。
「クストの根、その種子とみられる邪魔、そして招かれた神主たち。
これをすべて滅ぼしたとき、使命は完遂したとみなされ。
ストックは地球に戻される」
邪魔についてはボクは詳しくないが、ビオラ様に聞いたところではそうらしい。
「お父さま、行っちゃうんだ」
「となると、お母さまがしようとしてるのは」
「行かせない、あるいは連れ戻す、だな」
「……信じてはいるが、ハイディ。
そろそろどうやるのかは、教えてほしい」
信じてる、ねぇ。
そういう割には、自信なさそうに言うじゃないか、ストック。
ほんとーはもうちょっと、君が根掘り葉掘り話してくれたら言う気だったんだけどなー?
娘たちが不安そうだから、言っちゃろう。
自分の分の魔導式書き換えを始めつつ、内容を整理する。
「まず一つ。
そもそもボクは、ストックがどこにいても追いかけられる。
観測結果はまだ出ていないが、どう考えても地球よりクストの根がいた空間の方が、遠い。
十分、辿り着けるだろう」
「そうなのか!?」
そこ驚くとこかよストック。
「同時空間上に存在すると思しき別の星より、異次元の方が遠いに決まってるだろ。
なんなら、ダンジョンだってそうだぞ。
場所さえわかれば、行くのは難しくない。
そしてボクは、君の居場所なら分かるし、跳べる」
「お、おぉ……そう、か。そうか?」
そうだよ。
「ただしこれ、分かるのは君の居場所だけだ。
ボクは『この世界の座標がわからない』。
つまり、帰ってこれない」
「「「ええ!?」」」
相対的なものならともかく、絶対座標なんてわからんからね。
目印がいるわけだが。
「このため、二つ課題がある。
一つは、この世界に目印を作って置くことだ」
「それは、どうやるんだ?」
「いくつかあるが、一番いいのは『ボクを置いておくこと』」
「「「??????」」」
別に難しい話じゃないんだが……。
自分がここにいるなら、そら場所はわかるだろ。
そしてそのための準備・検証は――――こないだ終わったわけで。
「もう一つの課題は、その目印を地球からどうやって知るか、だ」
「そっちは、その。どうするんだ」
「こちらから精霊か魔素を、地球に持ち出す。
持ち出した魔素と、こちらに置いたものを紐づけ、特定する」
魔素も精霊も、情報を保持する。
ボクのそれがここにあれば、地球からも観測できるし。
地球にあれば、当然にこちらから「ボクがそこにいる」と特定ができる。
ただ地球にはおそらく、魔素はない。
ボクの知識上では、そんな摩訶不思議存在がある世界じゃない。
だからこちらから持ち出す。
それが可能かどうかを調べるためにも、「精霊の移動」という現象を観測しておきたかった。
フィラを新しい体に移したのは、その実験を兼ねている。
ほんと、彼女に巡り合えなければ、いろいろぶっつけ本番。
かなり賭けになっていた。
フィラとセンカの出会いには、本当に助けられている。
次の投稿に続きます。




