18-3.同。~呪いの徒、一網打尽~
~~~~ディードの語りは面白い。たまにとぼけるけど。ボクは知ってることは何でも言っちゃうからな……見習いたい。
ディードと別れて。
やっとやってきました、共和国。
入国審査は、議員様々から話が通ってて、すんなり行った。
根回しと段取りは、大事だね。
7人乗せたネフティスで、クルマ用の山道を走る。
目的地はロードⅢ。イオの生家、ニップ家のあるところだ。
共和国では北端に当たる街で、つまり国境からすぐ近い。
こうして台地を登り切って、そのてっぺんに出ると。
ほら。すぐ、街の門だ。
それなりの外壁にぐるっと囲まれた、この半島ではよくあるデザインの街。
こうなってないのは……聖国と、帝国の一部だったかな?
「ほー。ここが、か」
助手席から、感心したようなお声が。
「ん。あれ?ストックここ初めてだっけ?」
「Ⅲはな。ⅠとⅩⅢは一緒に行ったろう」
ロード共和国は、Ⅰ~ⅩⅢまでの都市で形成されている。
最東端がⅠ、最西端がⅩⅢだ。
「そうだけど。前んときは来なかったのか」
「ⅩⅢから入って、Ⅰまで行って出たんだよ。
大して見どころがなくてな」
「あぁ~……」
ストックが立ち寄ったのは、ボクが水脈の変更を行った後、だろう。
いろんな意味で、そりゃ観光どころじゃないしな。
「今回も、見て回れなくてごめんね。
イオ、リコ!場所間違ってたら言ってね!」
事前に聞いてるし、地図は頭に入ってるけど。
「「はい!」」
後部座席の二人が、元気よく返事してくれた。
道案内が二人もいる。安心感マシマシだ。
ボクの安心感蒸発のお知らせ。
リコに止められたので、目的地から少し離れたところにクルマを止めて。
街はずれの、あまり人気のないその区画に入った。
共和国は比較的整備されているから、さびれていても不穏はないけど。
さすがに手入れがないところは、雰囲気がよくないね。
まぁそれは……明らかに周囲に潜んでるやつのせい、かもしれないけど。
あと。
「来たか」
少年が、二人。
学生服ではなく、貴族令息らしい平服。
あの眼鏡少年、決闘場の特別席で見たな。
ウォン家の長子だ。
測定会で、ボクにある種の妨害を行ったのは。
こいつだな。
そして。
「イオ、『戻れ』!」
アシャード・ウォン。
君ら共和国では外国人じゃろうに、よくここで勝手しようと思ったな。
でもこいつらも含めて、なんとなく何がどうなったのか、分かる。
そっとリコと、イオを見る。
力ある言葉だったが……イオは何も影響がなさそう。よしよし。
リコは、薄く笑っている。
そうか、やはり招き入れたな?
ここで一網打尽にするつもりか。
うちの突っ込んだ経費は、効果的に使ってくれたようだ。
この二人はともかく、星帚とやらをどうやって集めたのかはわからんけど。
「ぐ、効いていないのか!?」
効くわけねぇだろ。仕掛けは全部ポイしたわ。
よくあそこまで、人道バイバイなことしたもんだよ。
周囲の、目には見えない者たちの気配も濃くなってきた。
力づくタイムだな。
では先んじて。
「リコ。皆いるか?」
「はい、確かに」
よろしい。
特に打ち合わせは、していないのだけど。
この子が「誘い込んだ」のならば。
必勝の機会を作ろうとしたのならば。
ボクに期待されていることは、これだろう。
リコの方を振り向く。
彼女がかしづく。
これは必要な条件はいくつかあるが、様式は簡素なものだ。
「この『目帚』を筆頭に。
我ら箒衆一門、ハイディ・シルバ様にお仕えしたく」
「許そう。その名を捧げよ」
「はっ。我らの名を、王に捧げます」
王家精霊が、天から降り注ぐのとは、逆に。
大地から、緑の小さな光が、浮かび上がっていく。
それは、契約の成立を唄うもの。
そういやここの彼女の言い方も「王」なんだよなぁ。
気になる言い回しだこと。
「ばっ、かかれ!」
アシャードが、慌てて言うが。
すでにかすかに、音がしている。
人の倒される、音が。
「一気に参ります!」
いつも黒が多い彼女が、今日は緑の装いで。
くるりと回ったその身に、赤い炎が灯る。
その手が、後ろのオリーブに伸ばされ。
二人の手が、重なり、組み合った。
オリーブは、過魔力化症の患者であり。
常に、膨大な魔力を、保持していて。
それを他人に、渡すことができる。
赤と緑が、舞い踊る。
「『火遁・朧焔勢』!!」
力ある言葉が、混じり。
一帯すべてが、炎に丸ごと包まれ。
瞬時に、晴れた。
リコの姿が、ない。
続けて各所で、打撃音がいくつも聞こえる。
ボクの、後ろからも。
「が!」「ぐぅ、こん、な」
防御魔導くらいは、張っていたんだろうが。
たぶんさっきの炎で、それを剥がされたな。
あれは幻、目くらまし。
されどそれが覚めるとき。
すべてが現に、返される。
もちろん、魔導も含めて、だ。
呪いも解けるとか、言ってた気がするなぁ。
箒衆の忍たちが……改めて、姿を現し。
その腕の中の者たちを、無造作に地面に置いていく。
っていうか箒衆、普通のおっちゃんにーちゃんだな。
明らかに、調理場から来ましたみたいな人おるぞ??
星帚の連中はこう、確かに「忍装束」っぽい服だわ。
口元も隠してて。普通、忍ってこうやないの?
まぁそれはいいや。
「こいつらは不法入国の諜報工作員だし。
後の始末は任せていい?ハイニル常任議員」
「はい、お任せを。
みなさんは、フィラを」
といっても、人数ちょっと多いが。
「私も見たいし、ついてくから」
ビオラ様に、釘を差されてしまった。
ならもう、リコ以外連れてくしかないじゃないか。
「あまり広くはなさそうですし。
ここではただ隠蔽等を解除して、運び出すだけですからね?」
「分かってるわよ。行きましょ」
ビオラ様はディードと話してから、まだ上機嫌だ。
しょうがねぇ。さっさと済ませちまうか。
次の投稿に続きます。




