表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
472/518

18-3.同。~呪いの徒、一網打尽~

~~~~ディードの語りは面白い。たまにとぼけるけど。ボクは知ってることは何でも言っちゃうからな……見習いたい。


 ディードと別れて。



 やっとやってきました、共和国。


 入国審査は、議員様々から話が通ってて、すんなり行った。


 根回しと段取りは、大事だね。



 7人乗せたネフティスで、クルマ用の山道を走る。


 目的地はロードⅢ。イオの生家、ニップ家のあるところだ。


 共和国では北端に当たる街で、つまり国境からすぐ近い。



 こうして台地を登り切って、そのてっぺんに出ると。


 ほら。すぐ、街の門だ。


 それなりの外壁にぐるっと囲まれた、この半島ではよくあるデザインの街。



 こうなってないのは……聖国と、帝国の一部だったかな?



「ほー。ここが、か」



 助手席から、感心したようなお声が。



「ん。あれ?ストックここ初めてだっけ?」


「Ⅲはな。ⅠとⅩⅢは一緒に行ったろう」



 ロード共和国は、Ⅰ~ⅩⅢまでの都市で形成されている。


 最東端がⅠ、最西端がⅩⅢだ。



「そうだけど。前んときは来なかったのか」


「ⅩⅢから入って、Ⅰまで行って出たんだよ。


 大して見どころがなくてな」


「あぁ~……」



 ストックが立ち寄ったのは、ボクが水脈の変更を行った後、だろう。


 いろんな意味で、そりゃ観光どころじゃないしな。



「今回も、見て回れなくてごめんね。


 イオ、リコ!場所間違ってたら言ってね!」



 事前に聞いてるし、地図は頭に入ってるけど。



「「はい!」」



 後部座席の二人が、元気よく返事してくれた。


 道案内が二人もいる。安心感マシマシだ。





 ボクの安心感蒸発のお知らせ。


 リコに止められたので、目的地から少し離れたところにクルマを止めて。


 街はずれの、あまり人気のないその区画に入った。



 共和国は比較的整備されているから、さびれていても不穏はないけど。


 さすがに手入れがないところは、雰囲気がよくないね。


 まぁそれは……明らかに周囲に潜んでるやつのせい、かもしれないけど。



 あと。



「来たか」



 少年が、二人。


 学生服ではなく、貴族令息らしい平服。



 あの眼鏡少年、決闘場の特別席で見たな。


 ウォン家の長子だ。



 測定会で、ボクにある種の妨害を行ったのは。


 こいつだな。



 そして。



「イオ、『戻れ』!」



 アシャード・ウォン。



 君ら共和国では外国人じゃろうに、よくここで勝手しようと思ったな。



 でもこいつらも含めて、なんとなく何がどうなったのか、分かる。


 そっとリコと、イオを見る。


 力ある言葉だったが……イオは何も影響がなさそう。よしよし。



 リコは、薄く笑っている。


 そうか、やはり招き入れたな?



 ここで一網打尽にするつもりか。



 うちの突っ込んだ経費は、効果的に使ってくれたようだ。


 この二人はともかく、星帚とやらをどうやって集めたのかはわからんけど。



「ぐ、効いていないのか!?」



 効くわけねぇだろ。仕掛けは全部ポイしたわ。


 よくあそこまで、人道バイバイなことしたもんだよ。



 周囲の、目には見えない者たちの気配も濃くなってきた。


 力づくタイムだな。



 では先んじて。



「リコ。皆いるか?」


「はい、確かに」



 よろしい。



 特に打ち合わせは、していないのだけど。


 この子が「誘い込んだ」のならば。


 必勝の機会を作ろうとしたのならば。



 ボクに期待されていることは、これだろう。



 リコの方を振り向く。


 彼女がかしづく。


 これは必要な条件はいくつかあるが、様式は簡素なものだ。



「この『目帚』を筆頭に。


 我ら箒衆一門、ハイディ・シルバ様にお仕えしたく」


「許そう。その名を捧げよ」


「はっ。我らの名を、王に捧げます」



 王家精霊が、天から降り注ぐのとは、逆に。


 大地から、緑の小さな光が、浮かび上がっていく。


 それは、契約の成立を唄うもの。



 そういやここの彼女の言い方も「王」なんだよなぁ。


 気になる言い回しだこと。



「ばっ、かかれ!」



 アシャードが、慌てて言うが。


 すでにかすかに、音がしている。


 人の倒される、音が。



「一気に参ります!」



 いつも黒が多い彼女が、今日は緑の装いで。


 くるりと回ったその身に、赤い炎が灯る。


 その手が、後ろのオリーブに伸ばされ。



 二人の手が、重なり、組み合った。



 オリーブは、過魔力化症の患者であり。


 常に、膨大な魔力を、保持していて。


 それを他人に、渡すことができる。



 赤と緑が、舞い踊る。



「『火遁・朧焔勢(おぼろえんぜい)』!!」



 力ある言葉が、混じり。


 一帯すべてが、炎に丸ごと包まれ。


 瞬時に、晴れた。



 リコの姿が、ない。



 続けて各所で、打撃音がいくつも聞こえる。


 ボクの、後ろからも。



「が!」「ぐぅ、こん、な」



 防御魔導くらいは、張っていたんだろうが。


 たぶんさっきの炎で、それを剥がされたな。



 あれは幻、目くらまし。


 されどそれが覚めるとき。


 すべてが(うつつ)に、返される。



 もちろん、魔導も含めて、だ。


 呪いも解けるとか、言ってた気がするなぁ。



 箒衆の忍たちが……改めて、姿を現し。


 その腕の中の者たちを、無造作に地面に置いていく。



 っていうか箒衆、普通のおっちゃんにーちゃんだな。


 明らかに、調理場から来ましたみたいな人おるぞ??



 星帚の連中はこう、確かに「忍装束」っぽい服だわ。


 口元も隠してて。普通、忍ってこうやないの?



 まぁそれはいいや。



「こいつらは不法入国の諜報工作員だし。


 後の始末は任せていい?ハイニル常任議員」


「はい、お任せを。


 みなさんは、フィラを」



 といっても、人数ちょっと多いが。



「私も見たいし、ついてくから」



 ビオラ様に、釘を差されてしまった。


 ならもう、リコ以外連れてくしかないじゃないか。



「あまり広くはなさそうですし。


 ここではただ隠蔽等を解除して、運び出すだけですからね?」


「分かってるわよ。行きましょ」



 ビオラ様はディードと話してから、まだ上機嫌だ。


 しょうがねぇ。さっさと済ませちまうか。


次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ