16-4.同。~蘇る者たち~
~~~~ほんと、もうちょっと早く言って欲しかったでござる。
「始まったわね、いつものが」
「ぁ、姉上。何をお気づきに……」
「わ、私は何もしてないぞ!?」
なんだよその反応。失礼しちゃうな。
「いーや、今回はストックが悪い。
今の話、もう少しだけ早く知りたかった」
「どういうこと?」
少し頭の中で、話を整理する。
アクセルを緩め、速度を落としつつ、岩場を曲がり込んでいく。
これまでのことが、繋がっていく。
主に……事件再現。特に、4年前の連邦、聖域ジュノー。
ジュノーが滅んだという未来を再現され、現実が隠蔽された。
これは神宮・西宮という、『揺り籠から墓場まで2』のプレイヤーの分身役の技によるもの。
そして奴が今もいる、という可能性は。
0ではない。
「ストック。
ボクや君がいながら。
ウィスタリアやリィンジアは、作られたわけだが。
これ、ボクらだけの話だと、思うか?」
ボクらはある意味、役を降りたわけだが。
それでもボクたちとウィスタリアたちは、本来同等の人物だ。
同時に存在するのは、おかしい。
だがいる。
「ぇ。本人がいても……ああ、作れるのか」
そういうことだ。
どこからか、『ウィスタリア』や『リィンジア』役ではない、過去の<ハイディ>と<ストック>の結晶を見つけ。
そこに聖女二人の魂を降ろし、新しいウィスタリアとリィンジアに仕立て上げた。
実にややこしいが。
役被りはおそらく不可で、そうでないなら通るんだろうと予測する。
そして。
似たようなことは、いろいろとできてしまう、はずだ。
例えば。
「封じられたのは、この世界に干渉を行っていた神主。
別の神主の魂に、神主の肉体を再現して与えれば。
どうなる?」
「そんな!?」
スノーが驚愕している。
ビオラ様は、冷静なご様子だ。
「……今までのことを踏まえれば、可能だと思うけど。
結晶は?」
「そりゃ、生前に本人のやつを摘出したんでしょ。
あいつらは、中型神器船を動かせるプリースト。
当然に、体に魔結晶ができている。
結晶量から言って、それで作れても一人だと思いますけど」
そうすれば、少なくとも同じ能力が使える神主ができる。
超過駆動を継承させるのと、同じやり方だ。
「やられた!そんな手が!!」
スノーの声に、後部の三人の雑談も止まる。
「クストの根に呼ばれたわけではない、この世界にいる神主を作った。
使命を帯びているわけではないけど、東宮と協力している。
そういうことね」
「そいつが『アーカイブ』の力で、邪魔を一体隠したのでは?」
複雑だが。
現象再現を起こし、魔境の主・邪魔をどこかに出す。
本来のものと、再現のものが二体できる。
本来のものは再現に上塗りされて「いないはず」になるので、精霊から認知されない。
また過去のことを踏まえると、再現物も精霊に見つからない。
スノーは西宮が蛇の海を従えていることを、知らなかったようだからな。
「だから見つからないのね」
「もう一つあります。中宮も、だいぶ前から活動してるでしょう」
「はぁ!?」
……そもそも、もう一点おかしいこともある。
「蛇の海を従えた」だ。人間の言うことを聞く連中じゃない。
だが、言うことを聞かせられる手段が、その当時からあったとしたら。
奴の『ロールプレイ』という技は、役割を強制する。
対象は、人間だけだろうか?
それに加えて。
「ボクらが4歳のときに経験したいくつかの、事件再現。
主犯をそそのかした人間が、未だに不明だろう?」
あとまぁ……4年前のマドカも、そうだろう。
そしてこの力。
永続というわけではなく……命令か何かの単位でかかってるのかもしれない。
コンクパールの六人なら、ボクの殺害。
マドカは連邦の滅亡かな?
ただマドカを見るに、何が何でもというほどではないな。
こう、イベントが終わったらそこまで、みたいな印象を受ける。
「なんてこと……しかも、神主本人は異物じゃないから、ソルとルナが気づかない!」
スノーが頭を抱える。
そういうこった。
まぁ敵も、いろいろと本気だってことだろう。
そしてそうだとしたら。
次の手は、これだろうな。
岩山にあるものを見かけ、ボクはクルマを止める。
「ストック、車外に出てやるぞ。絶対殺すな、魔導拡大に注意だ。
スノー、緊急通報。シフォリアを呼べ。
ビオラ様、ネフティスを預けます。三人を守ってください。
リコ!君は二人の護衛だ」
「は、え、姉上!?」
スノーからは見えないだろう角度に、いる。
運転手からは見放題だが。
「魔女姫と勇者のお出ましだ。
彼女たちも――――作れるってことさ」
ほんと、ストックがもう少し早く話しておいてくれりゃあ、ある程度対策できたのになぁ。
まぁしょうがない。これまでの備えと積み重ねで、突破しよう。
ボクはベルトを外し、ドアを開けて出て、閉める。
この魔物の跋扈する魔境の中で。
二人、人間が小さい岩山の上に立っていた。
次の投稿に続きます。




