16-3.同。~精霊から隠されたもの~
~~~~まぁ三人とも、ある意味よく似てるし。ボクは好きだよ?でも相談はしような。
ロード共和国。
王国東の台地にあって、その周りをぐるっと水流が囲んでいる。
13の都市からなる都市国家で、貴族がいない。評議会が国を運営している。
パンドラには今、その国の議員が二名参加している。
一人は、選挙で選ばれた公選議員のベルねぇ――ベル・ロール。
元聖国民で、王国を経由して共和国に帰化している。
もう一人は、今ボクの運転するクルマの最後部に乗ってる、リコ。
表向きの名は、ハイニル・ロール常任議員だ。
二人ともカール・ロール氏の養子となったため、義理の姉妹だ。
選挙はいわゆる普通選挙で、成人……15から選挙権被選挙権とも備わる。
一方、常任議員は選挙による選出がなく、一定基準の能力を満たした者がなる。
常任議員には年齢の制限も、任期もない。そして三人だけ。
リコが常任議員になったのは、二年前。10歳頃だったはずだ。
彼女は脳の魔素を制御する技を身に着けており、情報処理能力に長ける。
その能力を活かしたのだろう。
しかし。
常任議員の仕事は特殊とはいえ、どうやって学生しながら続ける気なんだろうか?
彼女が頭を務める、忍衆をうまく使うのだろうか。
その共和国北側の魔境に停泊した、我らの神器船パンドラ。
そこから出た蒼い神器車ネフティスは、共和国を無視し、一路北東に向かっている。
岩山と水流に囲まれたところに小さな魔境があり、そこにドラゴンが居座っている。
最初に目指すのは、そこだ。
山の天然洞窟を入って、その向こう側まで行く。クルマで彼女のところまで行ける。
この辺の魔境は、パンドラが出向いて幾度か掃討しているが、まだまだ魔物が多い。
とはいえ魔物は、魔力流を出した神器車には近づいてこない。
やや遠巻きに、見られている程度だ。窓さえ開けなければ問題ない。
以前幾度か、大型の魔物に魔境で寄ってこられたことは、あるが。
……今日はそんなことはないよな?
クルマ――ネフティスは前後二節に分かれた構造で、中は4列シート。
11人くらいは乗れる。
今は7人でのドライブだ。
ボクとストック。
すぐ後ろにビオラ様とスノー。
イオ、オリーブ、リコの三人の順だ。
四列なので、一番後ろのシートは空いている。
後ろの三人は結構談笑が弾んでいる、ようではある。
ビオラ様とスノーは静かなものだ。
助手席のストックは……いつも通りだな。
運転席寄りに、少し背中を向けて座ってる。
たまにボクを、チラチラ見てるけど。
素直に見ればいいのに。
しかしオリーブ……イオを一人にしなかったのは、偉いけど。
隣のリコが、たまにすごいお顔してるからな?面倒見て??
リコのバックミラーに少し映る笑顔が、かなり怖い。
バックミラーといえば、なぜかスノーはによによしてて。
見なくてもわかるが、ビオラ様はそわそわしている。
ビオラ様はドラゴンに会えるから、だが。
スノーはなんだ。それはどういう意図だ。
なお、ギンナたちは二台のクルマに分乗し、共和国西側に向かっている。
転送でも行けるんだが、それをすると国内での足がなくなってしまうので。
今回はみんな、クルマでの移動だ。
「姉上~。そこのヘタレの反応はどうだったんです?」
この妹め、楽しんでやがる。
…………君に教える義理は正直ないんだがな?
本人の懇願で口止めしたのは分かるが、ものがちょっと重要事項過ぎるだろうに。
娘たちのことも隠してたわけだし、ツーアウトだ。
一応、次はないと警告はしてある。
言われたストックは、両手で顔を覆っている。
そんなに堪えるんかよ。
「見りゃわかんだろ。言ってからずっとこんな調子だ」
二人っきりのときにとーーーーーーっても甘えるようになったが、それは内緒。
本人に聞かずともわかるが、ストックのこの不機嫌でめんどくさい態度はね。
つまり、はっちゃけてるのだ。
抑えてた気持ちが、溢れてる。
ずっと二人でイチャイチャしてたいが、それが叶わないので人前では機嫌が悪い。
同時に、自分のしでかしたことを思い出して悶えてるわけだが。
それもまぁたぶん、無駄なことして甘えそこなったと、後悔してるんだろう。
あ、そういやストックから聞けなかったこと思い出した。
「ビオラ様、聞きたかったんですけど。
あと二体の邪魔ってどこにいるんです?」
ストックは、残りの数しか知らなかったんだよ。
どうもビオラ様やスノーが場所を見つけ、ストックが倒しに行ってたようだ。
……一人でどうやってたんだろう?
「あと一体のはずよ。一つはこないだ倒したから」
「叔母上いつの間に!?」
ストックが、おてての中から蘇ってきた。
「あなたはもう、何が何でも自分でやらなくてもいいでしょ?
だからこっちでやったわよ」
復活は一瞬だった。ストックは、また顔を覆いに戻った。
「で。あと一体は情報がないのよ……」
なんとまぁ。
奴らは人間を見かけると全力で襲ってくるので、観測が難しい。
だから、居場所がはっきりとはわからないんだよね。
今そうだと言われている場所は、あくまで「そのあたりを通ったけど襲われなかった」ところ。
変な航路を空いてるからって通った神器船や聖域が、奴らに見つかって潰されることが、ままある。
だからといって、確かめにはいけないからねぇ。
下手すると、街や国に招いてしまうから。
「帝国東方魔境とかですかね?」
「あちらではないんです、姉上。
我々の情報源は『囁き』なので」
ああ、精霊の……。
ん?情報がないってことはだ。
精霊からは、見えないってことか?
嫌な感じが……。
「まずいな」
ストック、ビオラ様、スノーがなんか固まった。
次の投稿に続きます。




