表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
456/518

16-2.同。~突き進む者たち、時に沈む~

~~~~ボクの必殺技(笑)が効かない子、多すぎるんだが???


 この疑問は以前から、抱いた違和感から導き出せる可能性の一つ、かつ有力なものとして話してある。


 もちろん、マリー、マリエッタ、アリサにだけ。


 ボクの中でそれが確信に変わったのは、こないだスノーとビオラ様の二人と話した時だけど。



 ただまぁ……厳密にはちょっと、疑義があるんだけどね。


 たぶん、ストック自身も把握してないことだから、そのうち確認するつもりだ。



 さて、まだ詳細は知らせてないから、残りはボクが引き継ぐか。



「神主のような、外敵を排除する使命を負っていたんだってさ。


 神主三名、クストの根、そして魔境の主・邪魔(ヤマ)が対象で」


「ああ……検討していた可能性では、それが有力でしたね」


「そ。あの通りだった。


 で。邪魔(ヤマ)はあと二体しかいないそうだ。


 神主・東宮を倒したら、使命は完了。


 地球に帰ることになる」


「ちょちょちょっと!それ、ハイディは……」


「もちろん、ボクを残して、だ」



 エイミーとマドカの瞳に、頬に、さっと朱が差す。


 そしてまず、それぞれに机の下を睨んで。


 ボクを見た。



「ハイディ、私怒るから」「私も」



 ちゃんとボクに聞いてくるあたり、偉いな二人とも。



「いいけど、対策はとれてるからな?


 マリー、マリエッタ、アリサに手伝ってもらったし。


 ただ……」



 ボクも机の下を見る。


 隙間から少し、銀の髪が揺れているのが見える。



「早く白状してくれれば、五人でさっさと対策できたんだけどね」


「「このへたれ!!!!」」


「もうしひらきもございません……」


「拗ねる資格ないじゃないのよ!!」「そうよそうよ!!」


「ああ、そこはね。


 自分で頑張ろうとしたら、全部ボクがやっちゃったんだよ。


 君たち、自分がそうされたらどうなるよ?


 マリエッタやアリサに」


「「…………」」



 二人悩んで。



 エイミーは再び突っ伏し。


 マドカもストックの隣の席まで行って、座って同じように突っ伏した。


 エイミー、ストック、マドカの順で並んでる。



 なんぞこれ。



「ごめんなさいでした」


「もうしません」



 なんだ思い当たる節でもあるんかよ。



 …………マリエッタとアリサが、悍ましい情緒の籠った顔をしている。


 その表現しづらい、にやまぁりみたいなお顔、やめない?


 どういう感情表現なの???



「エイミーはわかるけど、マドカは?


 この子、何やらかしたの?アリサ」



 エイミーは魔道具関連だ。何度やらかしたかわからん。



「貴族に自らを売り込みに行った」



 ボクは無言でパンドラの制御にアクセス。


 放送魔導を起動。拡声前に。



「招集かけるけど」


「や、それは別の機会にしてくれ……。


 ギンナに手伝ってもらって、丸く収まったよ」



 アクセスを切る。


 報告は上がってないが、政治案件ならギンナかミスティが止めたか。


 権限は与えてるしな。



「ビオラ様が知ってるならいい」


「知らせてある。というか、ギンナに話を通してくれた」



 んむ。ならばよし。



「事情は聴いても?」


「ん……マドカはそろそろ自分でも何かしたい、って思ってたみたいで。


 何をしたらいいかわからないから、マリーに相談したらしいんだよ」



 ……あやつめ。



「そしたら『嘘をつくのがうまい』って言われて」


「嘘……ああ。演技かな?」



 マドカが机に伏せながら、びくっとなってる。



 この子は普段から素直だ。その善良さに疑いはない。


 だがマリーが言うなら、そこに才能があるのは事実だろう。



 ん……?まさか、この子の力は。


 祈り、じゃなくて。



「願望をかなえる力、だったのか」


「!そう、そうなんだよハイディ。


 あまり強くはないけど、人の望みをかなえるみたいなんだ」



 なるほど。


 当然に、目の前の人間の望む姿がわかるし、とれると。



 通りでふわっとした力なわけだよ。


 相手によって、変わるんだな。



「で、昨年あたりに調子にのって、いろいろやって。


 手籠めにでもされそうになったか?」


「そういうこと……。


 私が一緒だったから、なんとかなったけど」


「そりゃ褒めてあげたいね。


 自分が高く立とうとするとき、支えてくれる誰かをちゃんとそばに置いたんだから。


 ストックとは大違いじゃないか」



 机がちょっと揺れて、音を立てた。



「怒らないのか?」


「そりゃ君の権利だ、アリサ。


 ボクとしては、ちょうどいいと思ったくらいだし」


「ちょうどいい?」


「うん。


 アリサ。マドカを、ギンナたちに同行させてほしい。


 もちろん、君がマドカに専属で補佐につけ」


「…………ああ。任せてくれ」



 アリサが、左手首にした、細めの緑の腕輪を見せ、微笑む。


 頼もしい。君の成長は、ここ四年、間近で見させてもらった。



 マドカは様々な面で、共和国での鍵となるだろう。


 狙われることも、あるだろう。


 だが君がいてくれるなら、安心だ。



「では、私はお留守番のエイミーの見張り、ですね」



 マリエッタも、同じように左手首に腕輪をしている。


 この二人がばらばらの局面にいることになるのも、戦略上意味が大きい。



「頼むよ。しばらくは作るものもないしね」


「ふふ。ならエイミーを手伝ってますから」


「長く手を借りて、悪かったね」


「いえ」



 また……マリエッタが、妖しい顔をした。



「この日をずっと待っていましたから。


 ふふ」



 エイミーがガタガタ震えている。



「……ストックと同じ、か」


「そういうことです。時間切れ、ですので」



 なるほど。



 道理で、こちらを快く手伝ってくれていたと思ったら。


 技術を磨き、いずれ間に合わなかったエイミーを手伝って。


 一気に人型魔道具を完成させるつもりだった、と。



 あれ、いったんもの自体は完成して、他所にもプロジェクト立ってるんだけど。


 人型魔道具そのものにまだエイミーが納得してないらしくて、作り続けてるんだよね。


 で、それがうまくいってない。



 たぶんこう、その時のエイミーのあれこれが見たくてたまらなかったんだろうな、マリエッタ。


 大層歪んでるけど、まぁいいか。楽しそうだし。



 ボクだって、ストックから根掘り葉掘り聞き出した後。


 ぜーんぶ対策済みだって言うのは。


 そりゃあもう楽しかった。



「あの、ハイディ。


 それはいったい……?」



 オリーブに支えられたリコが、こちらまでやってきた。


 辛いなら、もう少し休んでていいと思うのだが。



 ただ、だね。「それ」扱いはやめたげて?



「ん。周りに黙って突っ走った者の末路」



 ついぞマドカとエイミーまで、もぞもぞと机の下に消えて行った。



 共和国はもうすぐそこなんだが、大丈夫かね?

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ