15-9.同。~聖教聖女派と、聖女その人~
~~~~今までのことを鑑みるに、ボクのことが伝わるのは時間の問題だな。
嫉妬深いのは結構だが、そんな気にすることかねぇリコ。
「あれが君から離れる口かよ。
あの女の業は君が思うより、ずっと深いぞ?
不安なんだったら、あの子のために働けるようにしな。
今すぐじゃなくてもいいから、考えておくといい」
「んっ。それは、その……わかりました」
時間逆行はボクの周りじゃ随分多いが、それを果たしているのは全員ある意味、豪の者だ。
それぞれ、故国が滅ぶとか……を超える、伴侶への情で戻ってきてる。
ボクとしちゃあ、普通に同性愛者なリコを、オリーブがきちんとつなぎとめておいてほしいところだ。
少なくとも、ボクに向かってこないでほしい。
お。時間を戻ったと言えば。
忘れるところだったよ。
「ああ、それで思い出した。もう一つ。
君、聖女派だがウィスタリアには反応せんな?」
こやつ、聖女復活のために共和国常任議員になったはずやで。
ウィスタリア本人のことも、うっきうきで探しに行ってくれてたし。
常任議員は能力を認められるとなれる。任期は不定で、個々人の目的達成までを任期と定める。
この目的がはっきりしてないと、承認されない。
リコ……ハイニル・ロール常任議員の場合は、どこかにいるとみられる聖女の、復活。
没してはいないという論拠を突きつけ、常任の座を勝ち取ったらしいのだ。
まぁこの子が何かする前に、ウィスタリアは蘇ってしまったわけだが。
ウィスタリアが聖女だと認められれば、彼女の常任議員としての使命は、終わりになる。
「あー……何かするっとご本人がお出でになったので。
こう、実感が湧きません」
気持ちはわからんでもない。
「こちらとしては、彼女が聖女として共和国に認められるまでは。
君に常任議員として、働いてほしいね」
「それはもう。尽力致しますゆえ」
こういう伝手は、ありがたい。
彼女たち忍・箒衆がいち早く動けるのも、この子の表の肩書あってこそだ。
今しばらく落ち着かないだろうから、頑張っていただきたい。
「あら、あれは……」
リコが、ボクの後ろを見て呟く。
「やっと見つけたわ、ハイディ」
「探しましたよ」
あれ、そのウィスタリアとリィンジアだわ。
「ボク探してたのかよ。なんでや。
っと、そういえば紹介とかは済んでるんだっけ?」
少し、横にずれまして。
聖女二人と、リコを見る。
「いえ。お名前は存じていますが。
リコと申します。魔道具科です」
「リィンジア・ロイド。戦略科よ」
「ウィスタリア。同じく」
ウィスタリアはもう、ヒロイン猫を被るのを止めたらしい。
学園で初日に見たあれは、猫を何枚被っていたのやら。
「それで?」
「休園は聞いたけど、暇なのよ。
することがないわ」
本当に君は遠慮がなくなったな?淑女の祖。
分かりやすい仮面を被るより、その方が似合うとは思うが。
…………そういえばボクも、この態度の方がいいとは、友達に言われたが。
先のウィスタリアと、似たようなものだったんだろうか。
「今しばらく休んでたり、鍛錬に精を出してもええんやで?
まぁ何か実のあることをしたい気持ちも、わかるけどさ」
「他の子は、何かしら仕事を持ってたりするみたいだし。
さすがに居心地がわるいのよ。
ご飯がおいしく食べられない」
そこが主眼になるのかよ。
よっぽど料理が気に入ったのか、ウィスタリアは。
リィンジアも深く頷いとるし。腹ペコどもめ。
「そうだな……。いや、君たちはやはりまず勉強しろ。
学生の本分を果たせ」
「ん、まぁ言い分は分かるけど……学生って年でもないわよ?」
「それを言いたいなら、1500くらいは取ってほしいね?」
「んぐ」
「だから言ったじゃないの、ウィスタリア。
ハイディ。それはそれとして、さすがに自習だけだと限度があるのよ」
ああ……二人で勉強しようとして、続かなかったな、これは。
教師ができるのは、ミスティ、ベルねぇ、マリー、エイミーの四人。あとはボク。
だがボクはフィラを作るし、ミスティとベルねぇは共和国とを行き来する。
あとはマリーとエイミーだけだ。
エイミーには三人見てもらうから、やはりマリーだな。
ちょうどいいから、二人を探すか。
「そうだな。
リコ、まだここは不案内だな?」
「はい」
「二人とも、施設は全部案内された?」
「一通りは」
「分からなかったら、人に聞くけれども。
どこに?」
察しがよくて助かる。
「会議場があったろう。そこで待ってろ。
部屋を使って講義してもらおう」
「もらおうってことは、ハイディがやるわけではないんですね?」
「残念ながら、ボクはやることがあるんだよ、リコ。
君たち魔道具科は、エイミーに頼む。
ウィスタリアとリィンジアは、マリーだな。
ボクは二人を探してくるから、教材持って向かっててくれ。
リコは、イオとオリーブを連れて行くように」
「分かりました」
ウィスタリアも頷いてる。
そしてリィンジアから、質問が飛んできた。
「その二人はどこにいるのです?ハイディ」
「ああ、あっちの医務室だよ。
他はないかい?」
「ええ……いえ。
朝食、ごちそうさま。
美味しかったわ」
「そりゃよかった。
余裕あるからしばらく作るし、お昼ご飯も楽しみにしてな。
二人を見つけてくるから、後を頼むね」
別れ。そのまま廊下を奥へ向かう。
少し振り向くと、ウィスタリアが手を振っていた。
ではリコは二人に任せて、マリーとエイミーを探すとするか。
どっちかの仕事部屋かなぁ。
次の投稿に続きます。




