表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
442/518

15.パンドラ。休園につき、大事な話を進める。

――――ボクは君を諦めない。ストック。


 その後。



 リコ、オリーブは満足したのか寝に行ったので、ボクとストックは残って朝飯を作ることにした。


 イオは、料理はできないというので、配膳を手伝ってもらっている。


 意外にきびきび動ける子だ。第一印象では、もっと鈍そうだと感じたのだが。



 そうこうしてるうち、教師組と初等部組が起きて来て。


 欠食高等部組が、食べにくる時間になって。


 ビオラ様が帰ってきた。早いな。



 学園の、正式な休園の知らせを持ってこられた。


 「なぜ」という部分まで、隠さず公表されるのだそうだ。


 学費と学ぶ機会の保証はされるものの、期限を切らずに休園になるという。



 寮は当然追い出され、国元に返される。


 神器船経由で通いの子らには、すでに転送路で人づてに急ぎの連絡がいってるらしい。


 もちろん、下宿町にも伝えられるとのこと。



 下宿は、追い出すとちょっといろいろ拗れそうな気もするが。


 たぶん、王国肝いりの何かでやることになったんだろうからな……補填がされるんだろう。


 元々、下宿町だって国の運営だしね。半官半民だ。



 ま、良家の子女が入る寮に、監視の魔道具仕掛けられちゃな。


 現物も押さえられており、ぐぅの音も出ない形だ。


 そらここまで徹底してやるしかない。



 なお魔道具各種は、監視とはいうが遠隔ではなく、記録をとって後で回収する形のものだ。



 魔道具の利点はここだな。魔法や魔術、法術は基本的に、視線が外れると効力を失うが。


 魔道具は起動までできれば、魔力が尽きるまで効果が続行する。


 十分記録を取ったところで、回収するつもりだったのだろう。



「…………ぇ?きゅうえん??」



 最後に起きて来たエイミーが、きょとんとしている。


 否、まだ半分寝ている。



 エイミーの襟元とかを直して上げていたマリエッタも、手が止まった。


 彼女はもっと早く起きて食事は済ませていて、その後にエイミーを連れて来てくれた。



「急……いえ。監視の魔道具が出たんでしたっけ。


 それでですか?」


「そ「なになになにが出たの!?帝国で新型が出たって聞いたんだけど!!」」



 どこ情報だよエイミー。しかも新発売情報じゃねぇよ。



「ゲーリー2はまだ先だろ。その出たじゃなくて、仕掛けられてたって意味だよ。


 女子寮に」


「うっわ引く……」



 すごい勢いで目が覚めたね君。


 両手で自分の二の腕を抱くようにして、身を震わせている。



 ただこれ……ちょっと気になるんだよね。


 ラース皇子たちが仕掛けたにしては、『早すぎる』。


 少なくとも、実行犯はもっと早くから仕掛け始めてないと無理な量だった。



 彼らが寮に入ったのは、つい先日の入学式の日からだ。


 自分たちではもちろんのこと、仮に令嬢を使った……としてもだ。


 いくらなんでも、無理がある。



 強力な精神作用の魔導は、入学時の契約で禁じがかかってる。


 弱い魔導で抜けられないとまでは、言えないが。


 入学式の日にその存在に気付いた様子の彼が、そこまで周到にできるとは、ちょっと思えない。



 となると、犯行を行った可能性が高いのは、むしろ在校生。


 裏のつながりはともかく、実行犯はそうだろう。



 しかしこの状況、犯人は野放しになってしまう、わけだが。


 王国がこの休園を仕掛けたというなら、何かあるのだろう。


 父上やお義父様は、まーた何考えてるんだか。



 ……先日のかーちゃんの対応を思えば。


 相手は聖国……否。呪いの信奉者たち、だな。


 ならば自然、これまで得た情報から、ある程度は推察できる。



 ウィスタリアとリィンジアの騒ぎのとき、たまたま生徒会所属の上級生がいたこと。


 魔道具が、()()()()()()()()にばかり仕掛けられていたこと。


 そして。



 …………『聖女リィンジア』。



 クレッセントが彼女を作り、送り出したことを知って。


 自分たちが求める、本物の「呪いの」聖女かどうかを、確かめようとした。


 決闘で彼女は、その身に備わる星の力を発揮している。



 その後は我々が完全に確保しているから、手は出されていないわけだが。


 測定会の感じだと……様子を伺われていた、というところか?


 不穏過ぎる。



 そのリィンジアは、優雅に食後のお茶に洒落込んでる……つもりのようだ。


 音めっちゃ立ってるぞ君。淑女力はこれからに期待だな。


 やっぱり作法は、彼女の前でまだ食べているウィスタリアに適わないな。



 だが綺麗にしっかり食べてる。


 食事に満足はしてもらえてるようで、何よりだ。



 ウィスタリアは美しい食べ方なんだが、量がドン引きだ。ボクを見ているかのようだ。


 早くはないが、ずっと食べ続けてる。


 なおリィンジアも大層食べた。



 ほんと、王国並みの農産物が算出する神器船でよかったよ……。


 でなきゃ食費で破産するだろ、ここ。



「どうしたのかしら?ハイディ」



 …………?


 あ、今のリィンジアじゃねぇ、ウィスタリアだ!?


 なんか声が違うと思ったら!



 なんですごい落ち着いちゃってるんだよ。


 淑女みはどこから拾って来た?



「君こそどうしたウィスタリア。


 なんだ、もしかして前はおなか減ってたのか?」



 ずいぶん淑女らしく振舞うようになって。別人か。



「……………………」



 なんだねその長い沈黙は。


 否定できないってところか?まぁわかるよ。

次の投稿に続きます。


#本話は計13回(26000字↑)の投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] まあ肉体的にはハイディとおんなじはずだもんなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ