表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
439/518

14-3.同。~休暇の急報、来る~

~~~~信じる、なんて言わない。君の視線は、ボクのものだ。必ず勝ち取る。待ってろ。


 翌日。



 まだ暗い時刻から、動き出す。


 寝ぼけ気味のストックと、支度し合って。



 研究情報は公開原則なパンドラだが、多少の機密はある。


 ストックは、王国にいくつかあるロイド家の屋敷に帰ればお嬢様だが。


 ここにはあんまり使用人を入れるわけにもいかないので、貴族令嬢も自分で生活する。



 お世話し合ってるのは、ただの趣味だ。


 ボクは、ストックを世話すること自体が好きで。


 ストックは、ボクを着飾ることを好む。



 ……さした見てくれには、ならないと思うのだが。


 ストック好みにされてるのだから、悪い気はしない。



 とはいえ、今日も弄れるところは多くない。制服着るからね。


 朝は忙しいから、行くまでは平民向けのデザインの服を、ずぼっと着て働くけど。



 王国は綿や麻が引くほど生産されており、服飾は工業化が進んでいる。


 王国所縁のパンドラでも、服は安く手に入りやすい。



 前の時間では、この辺りも大変だったんだよな……。


 クレッセントは王国所属の船じゃないし、布は他の国じゃそこまで入手容易じゃない。


 古びた布をリメイクして、なんとか着ていたものだ。



 考え事をしながら、お互いの髪を整えて。


 まずは一路、食堂へ。部屋から出て、廊下を往く。


 何をするにも、朝飯が片付かんとなぁ。



 人数が急に四人ほど増えたし。


 ああ、イオの様子も見に行きたいところだ。


 早めに済ませておかないと。



 ようやく眠気がとれて、隣を歩くストックは……見たところ普通だ。


 そも、この子が眠そうという時点で異常だが。


 肉体的な疲労は昨日とった。ストレスも癒せた、と思う。



 となると、悩み事、だな。



 …………そこ、解決してあげたいけど。


 今回に限っては、君から言い出さないのが悪いということで。


 もちろん、ちゃんと対処はするよ?でも今しばし、悶えるがいい。



 いつだって、ボクらは一緒だ。


 さみしいのも。


 悩んじゃうのも。



 幸せになるのだって。



「おや、叔母上?」



 ん?ほんとだ。ビオラ様が急ぎ足でやってくる。



「おはよう二人とも。ちょっと緊急通報が来たから、私すぐに出るわ」


「通報?どこからです?」


「学園よ。内容は……しばし休園の連絡」


「は?」



 む。イオ絡み、じゃないなこれ。


 たぶん、先にリィンジアやウィスタリアの寮の部屋で見つかった、監視系魔道具――――



「全寮……いや、敷地全検査ですか。


 新王都スピリッティアの学園に、素早くあれだけ仕掛けられた以上。


 場合によっては、王都全体でも少し警戒を強めたほうがいい」


「あたり」


「ですが」



 ではなく。それを建前にした、何か。



「展開が早すぎる。


 これ、予定されてたでしょう?ビオラ様」


「ふふ。私は知らされてないわよ?」


「でも知ってはいると。


 王都か王家側の動きですか」



 上司殿が薄く笑っておられる。


 言わないってことは、情報源はスノーだな。


 あれ、となるとこれ……対クレッセント、および神主絡みか。



 この人が行ってくるのは、ある種の手続きだな。


 パンドラも噛んで、我々で情報共有。対処を始めるためだろう。



「相変わらず、そつなく仕事される上司で安心です」


「部下に後を任せられるし、私の動きを適切に評価してくれるからよ。


 委細、あなたに頼むから。ハイディ」



 そういうところだぞ所長。



「はい。ああ――ただ、この流れで野暮をいいますが。


 もしイオが起きて、人形確保ができるようなら、それを優先します」


「構わないわ。それも重要事項だと認識しました。


 資料を上げて頂戴」


「ええ。時間をとって、今日のうちに」



 僅かに見上げるボクと、ビオラ様の視線が少し、交錯し。


 少し頷き合って。


 彼女は、パンドラの転送路へ。



 ボクは……すぐそこの、戦場の扉を開いた。


 よし。今日は久々に米食でそろえて――――



「ふぉうふぁま!!」



 そこには元気にパンや肉や握り飯や麺や甘味を頬張る、イオ嬢の姿が!


 君も欠食令嬢かよ!?



 身の上が身の上だから、礼については問わないが……。


 すごい食べっぷりだな。



「ご、ごめんなさいハイディさん。勝手にキッチン使って……」



 昨日良い啖呵を切ったオリーブが、慌しく配膳している。


 ということは、作ってるのはリコか?


 キッチンは、食堂入ってすぐじゃ見えないのよな。だが、誰か調理してるのは分かる。



 そういやあの子、牛鳥料亭の娘だもんな。


 娘ってか、女将みたいな感じだったが。



「いいんだよ。ちなみに誰に許可をもらった?」


「私。じゃ、行ってくるから」



 もう行ったと思った上司の声が、後ろから。


 振り返ると、にやりとしてやがる。


 そして今度こそ行ってしまった。



 ……さてはこれ、起きたの知ってるだけじゃなく、イオに話も聞いたな?


 ほんと、仕事が早くて助かるな。



 いやまって。まだ夜も明けない時間なのに、君たち活動するの早すぎない??


 ボクも人のこと言えないけど、どうなってるのさ。


次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 優秀な人ほど欠食してねえか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ