表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
433/518

13-6.同。~過去が人形を通じて、今に繋がる~

~~~~言っちゃなんだが、時を遡ったこと自体が、君に何かあるのを示している。


 もう一度そっと袖口を咥え、脳の魔素と呪いを起こす。


 密かに腕輪も回し、魔素を拡散。計測を開始。



 ……………………今のところ、反応はないな。


 この子におかしな魔の手は、伸びていない。



「大丈夫だ。今生でそれが話されても、影響はない。


 前の時は、喋ると伝わる呪いでもかけられてたんじゃないか?」


「!そ、そうです。


 えっと、今は、大丈夫、なんでしょうか……?」



 うげぇ、ほんとにそうだったのかよ……。


 相当なことに、巻き込まれたと見える。



「聖国はそのような呪いを用いるとは、聞いていますが。


 本当にオリーブにも?ハイディ様」



 落ち着けいきり立つなリコ座ってろ。



「今は何の呪いもないよ。パンドラ謹製の計測法だ。間違いない。


 魔導、魔道具もない。大丈夫だ、オリーブ」



 念のため探っていくが、さすがリコの部屋。


 変なものは仕掛けられてなさそうだ。


 隣のオリーブの部屋も、同様。



 …………まさか君がチェックしたんじゃあるまいな、リコ。



「その……じゃあ。


 フィラって子を、起こしたんです」



 ボクは、息を、飲んだ。


 こんなところで、つながるなんて。


 その名はかつて読んだ記録に、確かにあった。



「共和国で、技師をしてたお父さ……父の手伝いをしてて。


 動かない、魔道具と思しき人形があるって話を、聞いて。


 父が動かそうとしても、動かなくて」



 ……人形を起こしたのは、魔道具技師となっていたが。


 その方の名は、記されていなかった。


 様々なことが、隠蔽されていたのか。



「偉い人?に、怒られてて。


 でも父は、もう動いてるから動かない、って言ってて」



 すでに起動状態だったが、動かない?


 まさか。



 単純な機構だったという、その人形。


 魔導の使用には人の複雑性が必要だという、理論。


 ……動いたら壊れるから、眠ったふりをしていた、ということか?



「私が、なんとかしなきゃって、話しかけたら。


 その、声が、して」



 その話が。


 自分の開発した技術、彼女がさせられていたことと――繋がる。



「精霊の、囁きか……」



 かつての時間で作られた、自動人形・フィラ。


 彼女には、何らかの精霊が宿っていた。


 そう考えると、辻褄が合う。



 そして、だから「人に精霊を宿させる」なんて実験用に、浚われたんだ。


 おそらく、すでに亡くなっている人形制作者の……代替を期待されて。



「そう、なんですかね……?


 他の人には、聞こえなかったみたいで。


 それで、私がいろいろ、お話して」



 オリーブは過魔力化症。この様子だと、精霊適性も高い。


 過魔力化症の一般的な症例だと、その魔力値は高位の精霊魔法使い並みに達する。


 つまり……精霊と契約している、王国貴族に匹敵する。



 そして、彼女の「話」の内容と、その末路は。想像がつく。


 資料の残す、フィラを起動した「魔道具技師」が、オリーブのことなら。



「…………答えたんだな?彼女を作った主人が、どうなったか」


「っ。はい」



 ……なんてこった。



「経緯がよくわかりませんが……」


「リコ。前の時間では、自分の意思で動いたという、自動人形があったんだ。


 ただ動いたといっても、起動後すぐ、自害したと記録されている」


「!それが、オリーブの起こした、人形?」


「ちなみに作者の名は――――」



 告げようとしたその時。


 何か俄かに、外が騒がしくなった。


 魔素を広げ、表の音を拾う。



『こ、ここに入るのは見たんです!


 おうさ……ハイディさんに会わせてください!


 はやく、早くしないと……』



 …………次々と舞い込んでくるなぁ。



 おそらくはスノーの前でそういうってことは。


 ボクのこと、なんだろうけど……。


 王様って、どういうことだろうなぁ。



「その作者が来たよ。


 ちょっと出迎えるから」


「「え?」」



 もう一人の気配は……ない。


 はやく、というのは。そういうことなのだろう。


 危険を承知で、なんとか撒いてきたのだ。



 彼女の計測結果は、もう出ている。


 いくつか、悪辣な処置が施されていた。


 ほぼ、隷属させられていたといっていい。



 ならせっかくの機会だ。


 今、やってしまおう。


 大仕事になるが、リコもいるし、外には相棒たちもいる。



 オリーブもこの手のに経験があるというから、頼らせてもらうかな。



 まずは身柄の確保と、隠蔽だ。



 ボクは深く息をし、紫の魔素で部屋中を濃厚に満たす。


 俄かに、雷光が走り始める。



 後ろのドアをあけて。



「――――ハイディさん!」



 扉の前に、彼女がいる。


 一瞬、その瞳の紅と視線が交わる。


 何か伝わった気がして……彼女が、頷いた。



 躊躇いなく、間合いを詰め。


 全霊を込め、72の要所を突いた。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 八卦72しょうかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ