13-5.同。~精霊を人に組み込む~
~~~~ボクは18年遡ってるが、リコはそうじゃない。君の方がすごいんじゃが???
「…………その。オリーブは私と前世?前の、時間?で会って。
それで、気にかけてくれているのですか?」
リコが、少々言いにくそうに、気まずそうに、口を開いた。
「ん。まぁ、その。
実は、あなたの裏の仕事とかも、知ってて。
本当の身分も。
だから、その辺を聞こうと思ったんじゃ、ないの」
「なんと……。
前の私、情報ばらまきすぎでは」
ほんとだよ。
そしてつまり。オリーブは別のことを話そうとしていたけど。
リコは自分の身の上を聞かれると思って警戒。
話の弾みでさっきの状況に……ってとこか?
「ほんとはさっき、私の話を聞いてもらおうと思ったの。
ごめんね」
「いえいえいえいえ。
でもその……なぜ前の私は、あなたにいろいろ話したのでしょう?」
少しいいにくそうに、あるいは言葉を探すように、オリーブが頭を振る。
「私いろいろあって、医者もやってたから。
それで、リコちゃんとも……医者と患者として会って。
内魔結症の手術とかも、してたりね。
その間に、少しずつ仲良くなって。
それでいろいろと、話してくれて」
…………ここのリコじゃないから、口には出さんが。
その経緯があって、ボクに惚れたはないんじゃないの?前のリコ。
ぜったい、ガチ惚れして、いろいろ話しちゃったんだろう?
「でも……お別れになっちゃって。
私は、聖国に連れて行かれたから」
んん?
カワークは王国にあった会社だ。
いつ頃かはわからないが……リコに会ったということは、共和国に行って。
そこで医者をしてたが。そして後に、聖国に連れて行かれたと??
ということは、ボクに会ったリコは、オリーブと離れ離れになって以降、かなぁ。
けど。
「言っちゃなんだがオリーブ。
その状況、リコなら君を探して接触したりもできそうだけど?」
リコがこくこく頷いている。
この子は、腕のいい諜報員だ。
聖国にだって、普通に潜り込んでくれた。
「それが……それを見越してなのか、厳重に監禁、されまして。
仕事を、させられてたんですけど、その。
衣食住は保証されて、でも自由は、なくて」
えぇ~……。
「オリーブ、さすがに何してたか、聞かないわけにはいかないんだけど」
「…………いろいろなものを、人に宿す、実験、です。
私は、手を動かす、だけでしたけど」
……人体実験。
しかもこれは、タトル領で行われていた、結晶兵の実験。
あるいはそれを、上回るものだろう。
「結晶を人に移植し、兵を作る実験は、実際に帝国で行われていた。
いろいろ、というと……あとは、魔物と。
精霊か」
「っ。はい、そうです」
まじかよ……。
…………野良の精霊を封じ込めるという、王国激怒の御禁制の魔道具がある。
宿すのとは違うので力は発揮しないが、捕えることは可能だ。
それを人に宿そうとした、というところかな。。
「何のために、そのようなことを……」
リコの意見はボクも気にはなるところだが、ちょと絞り切れんな。
「目的はいろいろだろうさ。
オリーブがやらされてた当時は、おそらくそれどころじゃなかったはずだが……。
いや、だからこそ人の争いを警戒していたのかもしれないな。
飢えた人同士が、末期戦染みた戦いを始めることを」
「そんなだったんですか!?」
「そんなだったんだよ。王国も連邦も滅んでてね。
しかも、大規模な飢饉が起こっていた。
不作が続いて、食料は完全に不足していてね。
魔物退治がたぶん、一番安定して食料を得る手段だったよ」
「末世ですね……」
「私が連れてかれる前から、そんな感じでした」
ん……となると。
オリーブが、王国が滅んだことを知っているのなら。
「君が連れて行かれたのは、97年頃か?」
王国が滅んだのは、その前の年。聖暦1096年。
ボクがリコに会ったのは、1098年だ。
だからその間、と見たが。
「はい。ちょうど年が明けたころでした。
王国が……滅亡した、らしくて。
共和国も大混乱で。
その最中に、私だけ」
そこまでは、カワさんたちご家族も一緒だったのかな?
「ですが、なぜオリーブを?
何か、特別な力が……」
「そ、そんなのないよ!?
手先は器用だったけど、それだけで」
……そんなはずはあるまい。
医者で魔道具技師。別に珍しい技能ではない。
もっと他に、理由があるはずだ。
「…………オリーブ。
では聞き方を変える。
何か、大事に関わったことはないか?
記憶に残るもの、何でもいいが」
「っ、それ、は」
顔色が、変わった。
次の投稿に続きます。




